あおしろみどりくろ

楽園ニュージーランドで見た空の青、雪の白、森の緑、闇の黒の話である。

雑草たちへの言葉

2011-09-16 | 


春である。
庭のしだれ桜も七分咲きといったところか、水仙はすでに黄色い花をつけている。
芝生が伸び始め、庭の芝刈りが忙しくなる。
去年植えたりんご、梨、いちじく、桃の木からも新芽が吹き出る。
菜園ではレタスが百近い数で芽を出し始めた。
冬を越えたソラマメはすでに白い花を咲かせている。
白菜や水菜は早いものは黄色い花を咲かせ始めた。こうなるともう葉っぱも美味しくない。ニワトリに食ってもらおう。
牧場では生まれたばかりの子羊が跳ね回っている。
冬を越し、全ての生き物の育ちが活発になる春。
庭の雑草も然りである。





ボクは今、ほぼ毎日庭仕事をしている。
土を耕し、種もしくは苗を植えるわけだが、雑草を抜くという作業は避けて通れない。
毎日毎日、雑草を抜く。
ここ数日で何百、何千という雑草を抜いたことだろう。
こういうことをやると、雑草との戦いなどと言い出す人もいる。
これは人間の思い上がりだ。
戦いという言葉の裏には、自分は正義で相手は悪、という公式が見える。
これは好きではない。
同じ地球に住む生き物で、どちらが善でどちらが悪はない。
なのでボクは雑草にあやまりながら抜いている。
これはそんな雑草たちへのレクイエムである。







雑草たちよ。
許しておくれ。
君達に罪はない。
君達はただこの土地で、生き物として成長して種を残すという当たり前のことをしているだけだ。
ボブデュランの言葉でないが、君の立場で言えば君は正しいわけだ。
今日もボクは君達をひっこぬく。
本来なら人目に触れられたくないような根っこに、グリグリと指を突っ込み引っこ抜く。
そして太陽の陽に当てて君達を焼き殺す。
君達から見れば、ボクは鬼で悪魔で大量虐殺者だ。
許しておくれ。
けれどこうでもしなければ、ボクの庭は雑草だらけで野菜も育たなくなってしまう。
それぐらいに君達は強いのだ。
ボクも君達雑草も元々この国にいたわけではない。
外来種というヤツだ。
この国はエネルギーが高く、生き物が育つのに適している。
それはボクも外来種だから良く分かる。
君達が良く育つのもそのエネルギーを感じ取っているからなのだ。
君達は何も悪くない。
ボクは個人的に君達に何の恨みも憎みもない。
君達よりも隣のクソ猫をうらんでいるぐらいだ。
だが毎日、君達を抜いて殺す。
許しておくれ。
ボクが庭で美味しい野菜を作りそれを食べて生きるのも、君達の死の上に成り立っている。
だが君達の死は無駄ではない。
君達の葉っぱはニワトリが喜んで食べてくれる。それが美味しい卵へ繋がる。
君達の一種は煮出して虫除けに使わせてもらう。
その他大勢は、微生物が分解して土を作ってくれる。
ありがとう。
それに君達はとんでもなく強く、抜いても抜いても生えてくる。
庭の隅など手が回らないところでは雑草コーナーもあるぐらいだ。
君達を根絶やしにすることなど不可能だ。
雑誌の写真などに出てくる、雑草が一つもない庭など逆に不自然だ。
それでも君達は他の野菜と同様、日当たりが良くて土が肥えている場所が空きなんだな。
それも仕方なかろう。
種として当然のことを君達はやっているだけだ。
これからもボクは君達雑草を殺すだろう。
一つ言えることは君達を殺すのに、ボクは化学薬品は使わない。
指で引っこ抜くか、シャベルで掘り起こすか、刃物で切るかのどれかだ。
どの方法であれ、ボクはスマンスマンと言いつつそれをやるだろう。
これからも同じ地球上の生き物として、この庭で共に生きていこう。
君もボクも一緒に。



コメント (4)
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