緊張したときに息苦しくなり、深呼吸をしたら落ち着いた――。そんな経験を持つ人は多いだろう。私たちは、1日におよそ2万回の呼吸をするといわれる。そんな「無意識」に繰り返している呼吸を「意識」して行うと、姿勢の改善や代謝の向上といった効果が期待できる。日常生活の中で簡単にできる呼吸法を紹介しよう。
無意識に行う普段の「呼吸」に対して、呼吸の長さやリズムを変え、動作をつけるなど、意識的に行うのが「呼吸法」だ。呼吸法も重視する中国の気功やインドのヨガなどは、国内外の医療の現場にも取り入れられている。
■簡単な腹式呼吸と胸式呼吸
最も身近で簡単な呼吸法は、「腹式呼吸」と「胸式呼吸」の2つだろう。
腹式呼吸は、息を吐くときにお腹をへこませ、吸うときにお腹を膨らませる方法。この呼吸法では、肺と胃や腸の境目にある横隔膜という筋肉を大きく動かせる。
胸式呼吸は、胸を大きく膨らませたり縮めたりするのを繰り返す方法。この呼吸法では、胸郭(胸部の外郭を作る骨格全体)を大きく膨らませるため、肋骨と胸の筋肉に働きかけ、背骨の動きの柔軟性も高める効果が期待される。
呼吸法によってもたらされる健康効果は、主に5つある。順に「心が落ち着く」「姿勢が整う」「肩や首の凝りの改善」「代謝アップ」、そして「自律神経を整える」だ。
なかでも、呼吸法で最も実感しやすいのが、「心が落ち着く」ことだろう。東邦大学の名誉教授、有田秀穂さんは、「腹式呼吸を5分以上繰り返すと、心をすっきりさせる役割がある脳内の神経伝達物質、セロトニンが増える」と、呼吸とリラックスとの関係を説明する。
体の動きに呼吸を上手に合わせると、代謝の向上や姿勢の改善といった効果も高められる。ここでは、呼吸法と合わせた3つの簡単なストレッチを紹介しよう。
1つ目は、おなかの引き締め効果が期待できるストレッチ(図上)。腕と上体を一緒に動かしながら、鼻から5秒かけて吸い、口から5秒かけて吐き切るというもの。
メソッドを考案したボディメンテナンス学院の学院長、饗庭秀直さんは、「背筋と腹筋をストレッチしながら呼吸することで、動かしている筋肉群に酸素を送って燃焼効果を高め、代謝も上げられる」と話す。1セット(10秒)を3~5回程度行うのが目安だ。
2つ目の「猫背を防ぐストレッチ」(図中)、3つ目の「呼吸が楽になるストレッチ」(図下)は、ともに医師が考案した「呼吸筋ストレッチ」だ。どちらも目安は1セット3回。もともとはぜん息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)といった呼吸器疾患の症状を軽減するために、医師で東京有明医療大学副学長の本間生夫さんが考案し、臨床現場でも取り入れているものだ。
■筋肉に弾力性
本間さんは「呼吸筋ストレッチのコツは2つ。息を吸うときに大切な筋肉は吸いながら伸ばし、息を吐くときに大切な筋肉は吐きながら伸ばすこと。筋肉の弾力性が格段に高まり、呼吸も自然に深く楽になる」と解説する。
呼吸に関連する筋肉は「呼吸筋」と呼ばれ、例えば、姿勢を美しく保つ背骨を支える脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)という筋肉も、実は大切な呼吸筋の一つ。背骨に沿ったこの筋肉を呼吸で意識的に鍛えておくと、猫背の予防にもつながる。
「ストレスや長時間のデスクワークなどによって、現代人は呼吸が浅くなりがち。呼吸筋を意識的に伸ばし、日常から深い呼吸を心がけておくことが大切」と本間さんは話している。
呼吸の病気に注意
階段を上るときの息切れがひどくなった。カゼでもないのに、せきやたんが続く。夜のいびきがひどくて、睡眠時間は足りているはずなのに、昼の眠気がつらい。こんな症状が思い当たる人は、一度、病院の呼吸器内科などで診察してもらうとよい。
息切れや、せき・たんがひどくなるときに疑われるのがCOPD(慢性閉塞性肺疾患)。これはタバコや大気汚染などから、有害物質を肺の中に長期間吸い続けることで肺の機能が落ちる病気。放置すると、日常生活が困難になることもある。
ひどいいびきと眠気から疑われるのが睡眠時無呼吸症候群。眠っているとき10秒を超える無呼吸が繰り返され、眠りが浅くなる。また、心臓や脳の病気を誘発することもある。
COPDは、息を吐く強さから肺や気管支の状態を調べる「スパイロメーター」という検査で状態がわかる。睡眠時無呼吸の場合は、「終夜睡眠ポリグラフィ」という検査で睡眠状態をチェックして治療を始める。「息切れや息苦しさを体力や年齢のせいにせず、一度検査を受けてほしい」と東海大学医学部付属東京病院呼吸器内科の教授、桑平一郎さんは話す。
(日経ヘルス編集部)
無意識に行う普段の「呼吸」に対して、呼吸の長さやリズムを変え、動作をつけるなど、意識的に行うのが「呼吸法」だ。呼吸法も重視する中国の気功やインドのヨガなどは、国内外の医療の現場にも取り入れられている。
■簡単な腹式呼吸と胸式呼吸
最も身近で簡単な呼吸法は、「腹式呼吸」と「胸式呼吸」の2つだろう。
腹式呼吸は、息を吐くときにお腹をへこませ、吸うときにお腹を膨らませる方法。この呼吸法では、肺と胃や腸の境目にある横隔膜という筋肉を大きく動かせる。
胸式呼吸は、胸を大きく膨らませたり縮めたりするのを繰り返す方法。この呼吸法では、胸郭(胸部の外郭を作る骨格全体)を大きく膨らませるため、肋骨と胸の筋肉に働きかけ、背骨の動きの柔軟性も高める効果が期待される。
呼吸法によってもたらされる健康効果は、主に5つある。順に「心が落ち着く」「姿勢が整う」「肩や首の凝りの改善」「代謝アップ」、そして「自律神経を整える」だ。
なかでも、呼吸法で最も実感しやすいのが、「心が落ち着く」ことだろう。東邦大学の名誉教授、有田秀穂さんは、「腹式呼吸を5分以上繰り返すと、心をすっきりさせる役割がある脳内の神経伝達物質、セロトニンが増える」と、呼吸とリラックスとの関係を説明する。
体の動きに呼吸を上手に合わせると、代謝の向上や姿勢の改善といった効果も高められる。ここでは、呼吸法と合わせた3つの簡単なストレッチを紹介しよう。
1つ目は、おなかの引き締め効果が期待できるストレッチ(図上)。腕と上体を一緒に動かしながら、鼻から5秒かけて吸い、口から5秒かけて吐き切るというもの。
メソッドを考案したボディメンテナンス学院の学院長、饗庭秀直さんは、「背筋と腹筋をストレッチしながら呼吸することで、動かしている筋肉群に酸素を送って燃焼効果を高め、代謝も上げられる」と話す。1セット(10秒)を3~5回程度行うのが目安だ。
2つ目の「猫背を防ぐストレッチ」(図中)、3つ目の「呼吸が楽になるストレッチ」(図下)は、ともに医師が考案した「呼吸筋ストレッチ」だ。どちらも目安は1セット3回。もともとはぜん息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)といった呼吸器疾患の症状を軽減するために、医師で東京有明医療大学副学長の本間生夫さんが考案し、臨床現場でも取り入れているものだ。
■筋肉に弾力性
本間さんは「呼吸筋ストレッチのコツは2つ。息を吸うときに大切な筋肉は吸いながら伸ばし、息を吐くときに大切な筋肉は吐きながら伸ばすこと。筋肉の弾力性が格段に高まり、呼吸も自然に深く楽になる」と解説する。
呼吸に関連する筋肉は「呼吸筋」と呼ばれ、例えば、姿勢を美しく保つ背骨を支える脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)という筋肉も、実は大切な呼吸筋の一つ。背骨に沿ったこの筋肉を呼吸で意識的に鍛えておくと、猫背の予防にもつながる。
「ストレスや長時間のデスクワークなどによって、現代人は呼吸が浅くなりがち。呼吸筋を意識的に伸ばし、日常から深い呼吸を心がけておくことが大切」と本間さんは話している。
呼吸の病気に注意
階段を上るときの息切れがひどくなった。カゼでもないのに、せきやたんが続く。夜のいびきがひどくて、睡眠時間は足りているはずなのに、昼の眠気がつらい。こんな症状が思い当たる人は、一度、病院の呼吸器内科などで診察してもらうとよい。
息切れや、せき・たんがひどくなるときに疑われるのがCOPD(慢性閉塞性肺疾患)。これはタバコや大気汚染などから、有害物質を肺の中に長期間吸い続けることで肺の機能が落ちる病気。放置すると、日常生活が困難になることもある。
ひどいいびきと眠気から疑われるのが睡眠時無呼吸症候群。眠っているとき10秒を超える無呼吸が繰り返され、眠りが浅くなる。また、心臓や脳の病気を誘発することもある。
COPDは、息を吐く強さから肺や気管支の状態を調べる「スパイロメーター」という検査で状態がわかる。睡眠時無呼吸の場合は、「終夜睡眠ポリグラフィ」という検査で睡眠状態をチェックして治療を始める。「息切れや息苦しさを体力や年齢のせいにせず、一度検査を受けてほしい」と東海大学医学部付属東京病院呼吸器内科の教授、桑平一郎さんは話す。
(日経ヘルス編集部)
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