事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「ともぐい」河崎秋子著 新潮社

2024-01-23 | 本と雑誌

明治後期の北海道。狩猟によって生きている熊爪という男が、すでに人を屠っている熊と激突する。そしてタイトルが「ともぐい」

……となれば、獣のように生きる男と、神性すらおびる熊の、共食いの話だと誰だって思う。いや実際に熊と男の駆け引き、殺し合いは息詰まる圧倒的な描写の連続で、そこだけでもみごとな小説だと思う。でも、後半は思いもよらない展開を見せる。

「釧路の近くに、白糠ってとこはある?」

妻は釧路から酒田に来たのだ。

「あるわよ。お姉ちゃんの初任地がその近く」

高校教師だった義姉がそこにいたのか。

「不便なところでねえ」

熊爪が住むのは、その白糠からも離れた山中。

日露戦争直前のその地域は、次第に産業構造が変化しているのだが、それに気づかずにいる人物も登場し、味わい深い。そして、盲目の女性が現れ……

誰もが驚くラストだと思う。共食いの果てに、最後に生き残る存在がすばらしい。直木賞は当然だったでしょう。


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