「すべて閣下の仕業」から2年、ファイナルと銘打ってフジテレビはお正月に3本のスペシャルをならべた。まさしく、最後の三本(のはずだったが……)。
最初の一本「今、甦る死」は、ミステリ好きにはこたえられない回になった。“探偵小説”らしいギミックが盛りだくさんなのである。
舞台は、ここが東京都(=警視庁管轄)かと思えるほどにひなびた村。パン会社の社長が熊に襲われて死亡。まもなく、後を継いだ社長の甥も屋内で“事故死”する。古畑は、現場にこぼれた水が甘いことに不審をいだく……
リメイク版「犬神家の一族」で、オリジナルでは横溝正史が演じた宿屋の主人役をもらって舞いあがった三谷幸喜らしく、横溝へのオマージュにあふれている。わらべ唄を使った見立て殺人とくれば「悪魔の手毬唄」だし、登場人物の名前がオトヤやタマヨなのも横溝っぽい。なにより、今回のキーパーソンは石坂(金田一耕助)浩二なのだ。
退職した校長である彼は、割烹着を身につけて発掘した石器の展示に熱中するなど、いかにもな人物造型に成功している。そしてこのドラマの枠内での彼の行動は、犯罪として指弾されることがありえないのだ。全シリーズを通じて最も巧妙な殺人。
もしも実際にわたしが人を殺すとすれば、今回の方法(未必の故意)を絶対に選択する。もちろん、現代の金田一耕助である古畑任三郎に『今、甦る死』を暴かれてしまうわけだが、犯罪であるか自分でも判然としないあたり、これこそ完全犯罪だろう。
長鼻のバスが走り、98才の老婆(吉田日出子!)がわらべ唄を披露するなど、横溝ムードいっぱいの演出もうれしい。自信たっぷりでありながら、しかしそれが虚勢であることを見抜かれてしまう実行犯……藤原竜也はこんな役ばっかりです(笑)。
第40話「フェアな殺人者」につづく。
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