保津川下りの船頭さん

うわさの船頭「はっちん」が保津川下りの最新情報や、京都・亀岡の観光案内など、とっておきの情報をお届けします。

‘ダーウィンの悪夢’を観て感じること・・・

2008-08-03 22:47:15 | 船頭の目・・・雑感・雑記
先日あるドキュメンタリー映画を観た。

作品のタイトルは「ダーウィンの悪夢」

2004年に公開され、ベニス国際映画祭でグランプリを
受賞したのを皮きりに、世界中の映画祭で賞を総ナメに
した話題作でありながら、映像表現が偏っており作者の
意図する主観があまりにも反映された作品として
現地関係者や学識者から指摘を受け物議をかもした
話題作だ。

なんとも面白そうなドキュメント作品なので
「是非とも観たいものだ」と思っていたが、
腰痛休暇中に時間が出来たのでやっと念願叶い
観ることができた。

さて映画の舞台はアフリカ最大の湖「ヴィクトリア湖」

タンザニア、ケニア、ウガンダの三カ国に囲まれた
ヴィクトリア湖は、広さが琵琶湖の100倍もあり、
湖としては世界3位、淡水湖では2位という壮大な面積を誇り、
太古より生物進化を遂げながら約1000種類もの魚が
生息したことで「ダーウィンの箱庭」ともいわれていた湖。

が、しかし1954年に僅かバケツ一杯分の魚を実験的に
放流した事で湖の生態系に狂いが生じてきたという。

この放流された魚が「ナイルパーチ」

肉食で食欲旺盛な外来種である「ナイルパーチ」はそれまで
湖に生息してきた在来種を駆逐し、湖の生態系を破壊すると
同時に湖岸地域の人々の生活環境も一変させ破壊したという
惨劇を映像は現地の風景やインタビューで活写していた。

僅か50年余りで在来種を食べ尽くした「ナイルパーチ」は
一方で食用に適した魚で、欧米諸国は最先端技術を駆使する
一大水産業のを立ち上げを目論み大型投資を実施、
湖岸周辺地域は大きく経済発展を遂げ変貌していくのだ。

「ナイルパーチ」は大きいもので全長2メートル、
重さ100キログラムにまで成長し、脂身の多い白身魚として
EU諸国を始め我々日本など先進国に輸出されている。
タンザニアなどはフィレ(三枚卸し)とて食品輸出の
一位を占めているほど。

日本では「白スズキ」という名で広く国内に流通しており、
毎年4000トンのフィレを輸入、その量は人気の高い
ビンチョウマグロの3分2にあたるほど。
主に外食産業やコンビニ弁当、給食などの白身魚フライに
よく使用さており、私達の食生活にも非常に馴染みのある
魚なのだ。

映像からは、先進国に輸出される一大水産業の誕生が
一方で湖岸漁師や住民たちの素朴な生活環境を破壊し、
新たな貧困を生み出し、街は売春やエイズ、麻薬の氾濫
ストリートチルドレンの増加など風紀の乱れと工場廃水等に
より湖の水質汚染され環境破壊に進むという
まさに‘悪夢’を生み出したという事を強く主張している。

また、先進国へ白身魚を運ぶロシアの飛行機には
コンゴ民主共和国の内戦用に使用される武器弾薬も
運ばれて来るというオマケ付きなのだ。

作品は西欧先進国による‘グローバル化’という名のもとに
古くからの生活環境が破壊されたことで、住民コミュニティー
が崩壊したという流れで作り上げられている様に感じた。

この作品は確かに「西欧先進国=悪」という作者の
強い思惑‘狙い’という主観が強く反映され過ぎている
様にも感じられるが、行き過ぎた経済至上主義が今、
地球環境の悪化を招き、負の象徴的貧困に喘ぐ階層を
生み出したことは否定はできないし、その‘姿’から
感じるものは多い。

元来、ドキュメンタリー作というは作り手の主張が
反映され、焦点を絞り込むほど、わかりやすく
よい作品といわれるものだ。

様は観る側がそこから、何を感じ取り、
何を問題として意識するかが大切だ。

ただ私には、オオクチバスやブルーギルなどの外来魚を
放流したことで年々在来種の稚魚が激減し、絶滅が危惧
されている種もいる保津川を見ているので、
バケツ一杯分の外来魚が50年余りで琵琶湖の100倍の
広さをもつ湖の生態系を狂わせた事実は衝撃である。
ただ「儲かればいい」「楽しければいい」という
一部の人間の欲望のために、太古から地球が育み守ってきた
生態系を破壊してもいいとはけして思えないのだ。

その視点から観るとこの「ダーウィンの悪夢」は
多くの示唆を与えてくれる作品だと私は思った。

清流の山里・清滝を襲う深夜の悪夢・・・

2008-08-02 21:28:28 | 船頭の目・・・雑感・雑記
先日、我がルーツの場所として紹介した清流の山里・清滝で
連日、若者による深夜の迷惑花火で、住民は眠れない日々
をおくっているという。

8月1日付けの京都新聞の記事によると、今年は特に酷く
例年より早い6月頃から、若者グループが深夜に車で
乗りつけ、清滝川の河川敷きや橋の上で花火し騒ぐという
迷惑行為を連日続けているというのです。

清滝では10年前頃から迷惑花火に悩まされていた
そうですが、今年は鴨川河川敷で打ち上げ花火やBBQを
規制する「鴨川条例」が施行されたことから、締め出された
若者たちが車で清滝に来る現象が起こっているという。
実際、例年より早く花火やBBQをする人がやって来て、
その数がかなり増えているそうだ。

清滝は峡谷の里という狭い空間に民家が建ち並んで
いるので、こんな所で花火をされると火災につながる
危険な行為です。
中には、わざと民家に向かってロケット花火を打ち込む
若者もいて、住民は恐怖すら感じているという最悪の状態。

事実、6年前の夏に空家になっていた旅館から原因不明
の火が出て、全焼するという事件も起こっている。
この時は風がなく、防火水槽から近かったこともあり
建物一軒を全焼するだけで、他の民家には飛び火しなかった
のだが、条件が悪ければ集落一つが消滅する最悪の事態も
けして考えすぎではない。


(全焼した元旅館の跡地)

もはやマナーが悪い程度の話ではなく、この行為は
無差別殺人未遂であり、テロ行為にも匹敵するものだ!

バカ騒ぎがあまりにもヒートアップする時は、住民が
110番通報するそうだが、距離があるためパトカー
が到着した時には逃げ去った後という始末。
右京署も「ただ花火をしているだけでは取り締まれない」
と規制がないとなんとも消極的で頼りにならない。

BBQ後のごみも河川敷や住民の家の前に捨てていく者
が後を絶たず、住民がごみを持ち帰るように注意すると
反対に逆切れされ、もの凄い剣幕で脅されるということ
もよくあり、怖くて注意もできないと嘆いている方も。

この国の常識やモラルは一体どうなってしまったのでしょう?

ただ物質的豊かさを享受することが「当たり前」と
育った世代が起こすこれらの狂気的なモラルハザード。
一体私達はどこで、何を、間違ったのでしょう?

そしてこのモラルハザードの波は清滝だけでなく、
保津川河川敷にも忍び寄っているのです。

休日明けの河川敷には毎度、打ち上げ花火の残骸が
持ち帰られることなく、散乱しています。

もはや、モラルや良心に訴えることでは解決できない
ところまで人の心の荒廃してしまったのでしょうか?
厳しい厳罰で取り締まる以外に道がないとしたら、
人としてあまりにも悲しすぎる時代を迎えたと
いえるのかもしれません。

お盆シーズンを前に保津川~渓谷のお掃除。

2008-08-01 23:58:02 | 保津川エコ・グリーン委員会
夏も早いものでもう8月です。

保津川下りでは、この夏一番の人出となるお盆のシーズンを
前に、渓谷に漂流するごみの掃除を行いました。

先日の雷をともなう豪雨により、またしても大量のゴミ
が川面を漂流したり、岸に打ち上げられたりしている
ことから今日、舟一艘とゴムボートを出動させ
乗船場から保津峡、嵐山までの清掃活動を実施、
土嚢袋50個分のごみを回収しました。

先日来、腰痛を患い、まだ本調子でない私は
今回はゴムボート班として細かい箇所に漂流して
いるごみ回収を担当しました。

「船士魂」と書き染められているTシャツは、川で生き、
守っていこうとする「男達」の決意を表すかの様です!
ボートには若手船頭の浅田和生君と石田亮太君が乗り込み
ごみスポットへ出発!

途中、小橋の橋脚に引っ掛かっていた大きな砂袋を
回収するべく、ボートから身を乗り出して掬い上げることも。
その下流は急流なので、ボートから滑り落ちると
流れにのまれ大変な事になりかねない危険スポット。
事実、回収作業の途中、何箇所かで川に落ちてしまった
そうです。まさに体を張っての作業なのです。


ボートはごみの詰め込む量が限られているので、
積載の限界になると、その都度岸へ上げ、そのごみを
陸から付いて行く軽トラックで回収するのです。
今回はなんと!トタン屋根が二枚分も!
そしていつもごとく、農業用肥袋とペットのえさ袋
を多数回収しました。
このごみのレギュラーは何とかならないものでしょうか?

暑い最中、仕事疲れも残る中、船頭たちはボランティアで
午後6時すぎまでハードなごみの回収作業に当ってくれました。
本当にお疲れさまでした。

ここ数日、北京オリンピックの影響か?毎時間大勢の
外国人のお客さんが保津川下りにお越しになられています。
昨日はトルコからオリンピック観戦を兼ね日本旅行を
されているお客さんを乗せましたし、また私の友人も
フランス柔道の関係者を保津川下りに招待するなど
本当によく目にすることが多いのです。

オリンピックでは中国の環境問題が世界的な話題と
なっておりますが、我々もけして他人事ではなく
対岸の火事とたかを括ってはいられませんよ。

この保津川のごみを海外の方にお見せすることは
保津川だけのことではなく、京都しいては日本の
環境への意識レベルを図られることにもなりかねません。

その意味からも‘日本で一番の人気川下りである
保津川の清掃の意義は大きいといえるのではないでしょうか?

我々船頭だけでは限界がありますので、何卒多くの方々の
ご協力、ご支援をよろしくお願い申し上げます。