散歩日記X

札幌を中心に活動しています。食べ歩き・飲み歩き・ギャラリー巡り・読書の記録など

江別の旅

2004年02月28日 21時03分35秒 | 飲み歩き・北海道内
電車で野幌へ。間一髪でバスを逃したため、野幌の商店街をうろうろ。さほど空腹感もないが、行程上ここで、昼食をとろう。随分迷ったが、駅近くの蕎麦屋「Y」へ。もりを注文するが、手打ちだという麺はコシがあり、ツユとのバランスもよい。店員さんの愛想も大変良く、気分良く店を出る。

1時間に1本しかないバスで、セラミックアートセンターへ。良くは知らないが、陶器などの展示をしているらしい。バスに乗ること約15分、随分何も無いところに連れてこられた。望楼をもつセンターの建物は立派だが、人っ子一人いない。雪の重みでバス停が傾いている。

本日の展示は、常設展の「北のやきもの展示室」と「れんが資料展示室」だ。北海道にもいくつかやきものの窯があり、代表作を
展示している(かなり立派なものもある)。また、江別にはいまだにれんが工場が現存しており、町にもれんが造りの建物は非常に多いのである。ちなみに客は数人しか見かけなかったこのセンターの総工費は22億円とのことである。

最近の江別は町の中心部が野幌・大麻方面に移動しているらしい。逆に私は今回の狙いJRの江別駅前辺りに定めていた。バスで江別駅近くの郷土資料館へと向かう。うっかりバスを止め損ねて「あっ」と声を上げると運転手さんは親切に「そこで止めましょう」とバスを止めてくれた(但し、乗客は私一人)。

江別市資料館の入場料は200円なのだが、館員の男性が、「今日は俺一人で説明する人がいないから」と入場料をただにしてくれた。ありがたいが、いいのか!? さて、江別では高速の工事などで土器・土偶等が多く発掘されているそうだ。土器・石器の類はあちこちの資料館で見かけるが、土偶は珍しい。いいものを見せてもらった(但し、遮光器土偶のようなアーティスティックなものとまでは行かない)。

最後に館員が江別の地図を見ながら、開拓の様子や地形の特徴を教えてくれた(さほど江別自体に興味は無いのだが)。昔は石狩川が水路として使われ、石狩湾から江別を経由して滝川辺りまで荷物や人を運んでいたということや、宅地造成が進んだため、れんが用の粘土は、江別ではなく美唄辺りからわざわざ持ってきているという話は興味深く聞くことができた。

いつものように図書室で時間をつぶし、繁華街へ。といっても江別駅付近は恐ろしいほど人がいない。これまでにもいろいろな町に行ってきたが、小さな町では最初から期待していないので、ガッカリもしないのだが、江別市は仮にも人口12万人以上の市なのである。

誰もいない町を迷いに迷いつつ、「YA」という店に入った。何とこの店4時半から開いているのだ。おそらく、常連しかこないのであろう、「いったい誰なの、この人…」という視線を浴びつつ、燗酒とつくね、馬刺し(わーい!)を注文。酒は普通だが、つくねの焼き加減(炭火)は絶妙で、コッテリした甘いタレが効いている。馬刺しは厚みたっぷりで、脂もかなり入っており、値段から想像するよりはるかに良い。

黙って飲んでいると、おばあちゃんが私の目の前で何かを作り出し、やけにいい香りをさせている。思わず鍋を覗き込むと、「食べるかい」と、そのスパゲティナポリタンを出してくれた。「これは私たちの晩のおかずだから、お金いいから」と言われ恐縮しつつ食べたが、これが旨い。日本にまだ「アルデンテ」という言葉が存在しない時代に、おばあちゃんが作ってくれたようなナポリタンである。

私が危険人物でないことが分かったらしく、店主も「ケチャップの匂い、目の前でしたらたまらんよな」等と話しかけてくれるようになった。その間にもおばあちゃんは、目の前で魚のフライを作っており、やけにいい匂いだ。作っているのを覗き込んでは、「また出してくれ」と言う合図になってしまうので、テレビに目をそらしていたが、やはりおばあちゃんが「食べなさい」とチカフライを2本くれた。

注文もせず申し訳ないが、横にいた常連にも出しているから、早い時間に来た客の役得かもしれない。で、このフライが身はホクホク、香り最高、ヒレまでパリッと揚がっており実に旨い。サービス2品で腹が一杯になってきたので、申し訳なく酒を追加した。

「また江別に来たらよって下さい。うちのラーメンも美味しいから」との言葉を背中に、急速に冷え込んで来た中、私は江別駅に向かった。やっぱりいい街じゃないか、オールド江別。
(この数年後にラーメンを食べに再訪したのである)