ゴールデンウィークは交通費も宿泊費も高いし、観光地は軒並み混雑しているであろう。そんなときに大型旅行をくむほど私は暇ではない。しかしながら、ちょっとした遠出はしたいものだ。ということで、恒例の一日散歩きっぷを使って出かけることにした。
それにしても現在の一日散歩きっぷは使い出が無い。昔はもう少し列車の選択の余地と、途中下車の余裕があったような気がするのだが、とにかく目的地に着くのが精いっぱいで、後は帰るしかないといった感じに思える。JR北海道はハッキリ言って北海道全体の路線とダイヤを維持する気力がなくなっているのだと思う。気力のない会社が業績を伸ばすことはあり得ない。必ず現状維持より下がるしかないのである。
さて、JR北海道批判はこのくらいにしておいて、この日の私は5時に起き、5時50分に家を出た。急ぎJR琴似駅に向かい、一日散歩切符を購入。6時19分の列車で札幌駅へ。札幌駅では乗り換えて、6時31分のエアポートで恵庭へと向かう。クロスシートの車両だったが、さすがにこの時間では空席がある。
恵庭から7時2分発の普通列車に乗り換えて東室蘭へ。この列車は2列、1列のクロスシートで、途中人が少なくなったタイミングでこの席に座ることができた。
苫小牧を過ぎたあたりの駅ではかなり連続して高校生の乗降が続く。降りる人がいるということは学校があるのだと思うが、こんなにあるのかね? もしかすると中学生も混じっていたりしたのだろうか。私にはもう高校生と中学生、大学生と高校生の境目が良く分からないのだ。
東室蘭では残念なことに1時間10分の待ちがある。この機会に駅を出て、東室蘭の風景を撮影する(写真は別項でアップしたい)。室蘭市は市の中心部が東室蘭の方にずれ、元の室蘭中心部は寂れていると一般的に言われているが、新しい方の東室蘭ですら寂れている。しかし、この寂れた街にこの時間から(9時すぎ)、結構な観光客がいるのは不思議である。しかも、欧米系の人が多いように思われる。
いったい何しに来ているのだろうと思ったが、イルカ&クジラウォッチングなのか、夜の工場夜景見学なのか、それとも他に何かあるのかな。(どうやらクルーズ船が朝、入港していたらしい)
不思議に思いながら、10時17分発の列車に乗り、10時45分やっと伊達紋別に到着した。さて、ここから新装なっただて歴史文化ミュージアムに行きたいのだが、結構距離があるんだよね。
バスに乗るという選択もあったが、どうも駅付近でバス待ちをしている人がいない。ま、歩いて行きますかということで、大体の方角に向けて出発(一度、歩いて行ったことはある)。東室蘭もそうだったのだが、札幌に比べて気温が数度低いようで、どちらかというと寒いという感じに近い。
しかしながら、歩くこと約30分。気温も上がってきて(帰りに見たら20度だった)、少し汗ばんできた。ミュージアムに入る前に昼食でもと思ったが、近くにある道の駅の食堂は少し寂しく(蕎麦中心の軽食しかなかった)、辺り一帯はロードサイド的な店しかなく(札幌にもあるチェーンのラーメン店に行ってどうするというのか)、後回しにしよう。
さて、だて歴史文化ミュージアムだ。
まずは「フランク・シャーマンコレクション展」を見ていこう。
澤田哲郎「シベリヤの寒村」:黄色くかすんだような太陽とがっしりした家がシベリア感を出している。
猪熊弦一郎「S FUMI Guen」:黒枠の長方形と赤い円をちりばめた抽象画。自分と奥さんを表現したものなのだろうか。
資料として「フランク・シャーマンの写真ファイル」が展示されており、見る人が見れば写っているのはすごいメンバーなのかもしれないが、私にはいちいち書いてくれないと分からない。コレクションの展示は宮尾登美子記念アートホールの方に続いている。
→強風で看板が倒れている。入るときには中の人に教えてあげたのだが、出る時も倒れていたので、もう諦めた。
篠原有司男「TEKAGAMI」:カラフルなデザインで鏡に写った簪と髪を描いた作品。
畦地梅太郎「浅間山」:ほのぼのとした昔話に登場しそうな山の画である。
平塚運一「耶馬渓 羅漢寺」:こちらも素朴さがいい作品だ。
一原有徳「轉」:日本版画協会展に入選した作品が神奈川県立近代美術館の館長に認められ、一原が世に出たという話は聞いたことがあったが、なんとその媒介になったのがフランク・シャーマンなのだそうだ。彼がコレクションとして入手したものを、保管のために画廊に預けていたのを館長が見たらしい。
朝井清「「軍都最後の日」広島の夕焼」:原爆爆発直後の原爆ドーム。周辺に倒れている人たちは、真っ黒で表現されている。これをシャーマンはどういう思いで見たのだろうか。
コレクションした作品を見ると、日本への理解があった人のように思えるが、それはそれ、これはこれ。本当のところは良く分からなかった。北海道立近代美術館で見た作品ももちろんあったが、絵画・版画が80点くらい展示されていたので、これはこれで良かったと思う。
続いて、ミュージアム2階の「伊達成実展-東国随一の猛将の生涯-」へ。
伊達家に伝わる漆塗りの器。右が仙台藩伊達家のもので、左が仙台藩一門亘理伊達家のもの。左の方がシンプルな家紋になっており、伊達家内での序列を表しているのだとか。
「矢じり」:続縄文期(約2,000年前)、有珠モシリ遺跡からでた重要文化財。地域の歴史を表す展示物も展示されていたのだ。
「黒漆五枚胴具足」:鎧の布に「香車」の柄が縫い込まれている。戦場でまっすぐ前進し、引かぬという意味らしい。気持ちは分かるが、どんな時でも本当に引かない軍だったら、それは猛烈に嫌だね。
新しいだて歴史文化ミュージアムは建物も立派であった(人が少ないけど…)。
さて、駅方面に戻って、どこかで昼食を取りますか。