4日目。
今日は展覧会巡りになるのだが、もの凄くヘコむ夢を見て起床。気持ちを奮い立たせる。まずは上野へ。東京国立博物館「プライスコレクション 若冲と江戸絵画展」から。前回の北斎展ほどは混んでいないようで、事前に上野駅で入場券を購入していた私は、1桁の順番で展覧会場に入った。
面白かった作品は以下。
「簗図屏風」
「懸崖飛泉図屏風」円山応挙
「柳下幽霊図」呉春、松村景文
最終展示室でガラスケースなしで照明を刻々と変化させる展示方法を取っている作品。金箔が朝日に輝くようにも、夕日に輝くようにも見えるし、光が強くなると色彩も明確になり、弱くなると無彩色にも見えてくる。なかなか面白い展示であった。
「牡丹孔雀図屏風」長沢芦雪:極色彩の緻密な表現。若冲より上?
「雪中鴛鴦図」伊藤若冲:もちろん鶏の画も良かったのだが、鴛鴦に襲い掛かろうかとしているような奇怪な草と雪が面白い。「鳥獣花木図屏風」は例のタイル画のような作品。楽しさに溢れている。
「達磨図」伝河鍋暁斎:強い線でガチッとした迫力の達磨像。
「十二か月花鳥図」酒井抱一:あまり花鳥画を評価しない私なのだが、柔らかい雰囲気で揃った12枚はさすがの感あり。
「貝図」鈴木其一:リアリティのある貝の画が楽しい。
「群舞図」鈴木其一:右に左に舞い踊る5人の姿。つられて踊りだしそうなリズム感。
もの凄く急いで、本館も駆け抜ける。解説ボランティアの方によると今は「八橋蒔絵螺鈿硯箱」がイチオシらしい。私はあまり見たことのない「菩薩立像」の飾りの華麗さと、 国宝「和歌体十種」のかな文字の流麗さに目を引かれた。
三越前に移動。コーヒーショップで昼食を済ませ、三井記念美術館「美術の中の「写」展」へ。
美術品の本品と写しを(なるべく)並べて展示する展覧会である。「そのまま写す」というカテゴリーで紹介されているものであっても、何らかのアレンジを加えているものが多い。国宝「雪松図屏風」円山応挙はどのへんが国宝なのか私には分かりにくい作品だが、国井応陽の写しはそっくり。
そのほかには和紙と漆で鉄製の銚子そっくりに作り上げたものや、貝・野菜を象牙で作った作品が面白い。安藤緑山という人の作品なのだが、もの凄くリアリティのある象牙の着色法を秘密にしていたため、一代限りで無くなった手法らしい。後は本品を縮小化した「ミニチュア印籠」「百人一首かるた(雛道具)」、円山応挙の「昆虫・魚写生図」なども面白かった。
続いて大手町から三の丸尚蔵館「花鳥-愛でる心、彩る技 <若冲を中心に>」へ。
国立博物館の若冲作品を見た感想は「正直、北斎に敵わず」であった。しかし、絶対に見逃してはいけないこちらの展示で大逆転である。サイズが全体に大きいせいもあるが、迫力満点、とにかく色彩の華やかさと図像の細かさに瞬きができず、目が離せない。
写実のようでありながら、無重力っぽさや手前にあるはずの木の枝が向こう側に行ってしまう遠近感のウソもあり、実に不思議な画だ。これは周りの人に迷惑でなければ、何時間も見ていられるな。画を見だして初めてと言っていいほどの大感動。あまりにも画が素晴らしくて図録も買えない。チラッと見たけど、全然本物の素晴らしさが表現できていないもの…
外に出た私には、木の枝や草の細かい所が急に気になりだしてしょうがない。物の見方も変わる程の衝撃を受け、ちょっと酔っ払いのような状態である。
ふらふらしながら、山種美術館「旅と画家」。
「台湾風景」西郷孤月:淡い色で台湾の南国風景を描く。
「クラマール」佐伯祐三:ヴラマンクに叱られた直後ではないかと思わせる、フォーヴな画。
「懸泉」岩橋英遠:幅広い滝に虹のかかる大作。
「鳴門海峡」石田武:気持ちよいほどの渦潮スペクタクル。
割とあっさりした画で一息。
近くの千秋文庫で「模写絵と茶道」。旧秋田藩主の佐竹家が集めた模写絵である。表には雪舟筆「天橋立図」とあり、もしやと思ったもののもちろん模写であった。狩野派などのしっかりした作品も多数あり。
最後に出光美術館「やきものに親しむV 青磁の美―秘色の探求―」。
全然詳しくないのだが、青磁といっても茶や赤、紫と言ったほうが適切な色のものもあり、比較しながら見ると好みがはっきりする。私はやや緑がかった釉薬が好きだな。「盆栽図屏風」「平家物語」等の大作屏風の展示も拝見。精神的にも肉体的にもこの辺で限界である。
さて、まだ4時だがここから夜の部へ。東十条へ移動。あれっ? 駅前の雰囲気が全然違う。ある居酒屋を目指していたのだが、駅前にあるはずのロータリーがない。よくよく住所を見直してみると、「東十条」ではなく「十条」という駅に行かなければならないのであった。しかしどうやら、歩いて行けそうな距離だ。その2駅をつないでいるらしい庶民的な十条中央商店街をしばしぶらぶら。
無事「S酒場」を発見した。開店直後だが、既に7割の客入りである。早速入り、黒ビール、煮込み、ポテトサラダを注文。昔ながらの大衆酒場に、実にきびきびと動きまくる店のおばちゃん軍団が実に素晴らしい。レモンサワーと串カツを追加。ちなみにここまでのおつまみ3品は全て200円。毎日来れる店と言う感じだ。
きびきび働きながらもおばちゃん達の気遣いはステキで、一人客の私に「もうすぐ串カツ、でるからね」と声をかけ、さりげなく団体客より早く出してくれたようであった。この意気に応えて(?)、ウィスキーハイボールとマグロブツを追加。
開店30分を過ぎて満席になったようで、今度は常連達が早めに切り上げて帰りだす。私もあまり時間があるわけではないので、お勘定。「いつもこんなに混むんですか」と大おかみに聞くと、土曜日は平日に仕事で来れない人たちが集結するので、混むらしい。「うちはお客さんが良いの。また来てね、何か追い出すみたいでゴメンね」というステキな名店であった。
新橋へ急行。バー「G」へ。開店5周年特別メニューより、カルヴァドス+ダークラム+ブルーキュラソー+オレンジジュースのカクテルを注文。これはちょっと無難な感じだったな。次にレミーマルタンXOスペシャルを注文。約15年前のボトルは長期熟成させたブランデーが多目に入っているそうで、甘く濃厚な味わいだ。
さらにブランデーのカクテルをとお願いすると、チェリーリキュールとレモンを加えたショートカクテル。チェリーブランデーの風味が加わり、そこをさっぱりと仕上げたカクテルが、湿度の高くなった今日の天気にぴったりだった。
以上で札幌に帰宅。札幌は涼しい。
(22639歩)