闘病の記録を二つ読んだ。「あと三ヵ月 死への準備日記」・戸塚洋二(文藝春秋九月号)とこの第七信である。現役の時私は病院薬剤師として注射薬の混合をしていた。化学療法の薬品は最も慎重を要した。プロトコール(薬品の用法用量・投与時間等)は登録制として登録以外のプロトコールは禁じられていた。薬品の混合はクリーンベンチで薬剤師が二人で行い、一人が混合、もう一人が確認をする。ミスは許されない仕事だった。副作用は頭で知っていても、患者の側にいることはなかった。「あと三ヵ月 死への準備日記」で化学療法は死闘であると実感した。第七信も凄まじい闘病の記録である。自分なら狂ってしまうだろう。多田先生には、生きる目的、残しておきたいものがある。極限の自分を見つめるもう一人の自分に気づいたと書いている。