創作日記&作品集

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人間の建設 岡潔・小林秀雄対談 5

2010-05-03 15:06:48 | 読書
○美的感動について

岡 情緒を形に現すという働きが大自然にはあるらしい。文化はそれの現れである。数学もその一つにつながっているのです。その同じやり方で文章を書いておるのです。そうすると情緒が自然に形に現れる。つまり形に現れるものを情緒と呼んでいるわけです。そういうことを経験で知ったのですが、いったん形にかきますと、もうそのことへの情緒はなくなっている。形だけが残ります。
小林 詩にしても、昔はずいぶん受け身でしたよ。向こうに詩がある。絵でも何でもそうですが、こちらは敏感だから、向こうから一生懸命に貰うのです。吸収する。そして感動したものです。それがこの頃では逆になりました。私のほうからいろいろ想像を働かすのだな。

情緒という言葉は結構使いますが、それはなにと聞かれれば答えに困ります。辞書的には「折にふれて起こるさまざまの感情。情思。また、そのような感情を誘い起こす気分」ということでしょう。岡先生のいう情緒はもう少し深い。全人間的なものだと思います。だから形にするとなくなってしまいます。小林先生の芸術に向かい合う姿勢は勉強になります。感心ばかりしていないで、私も想像を働かせなくちゃ。

小林先生が知人の骨董屋の俳句の話をした後、
小林 しかし名句というものは、そこのところに、芭蕉に付き合った人だけにわかる何か微妙ものがあるのじゃないかと私は思うのです。

私はの母も下手の横好きで俳句を作っていましたが、下手だなあと思いながらも、微妙な心の動きはわかった気がします。

岡 そうですね。原画であろうとなかろうと、動機なしに感動するということはできない。ともかくなにもないのに感動せよと言ってもできませんから、むつかしいものですね。必ずはっきりとした物があって感動する。

この頃感動することがめっきり減った。反省。