創作日記&作品集

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人間の建設12 岡潔・小林秀雄対談

2010-05-24 09:37:21 | 読書
○批評の極意
岡 神風のごとく死ねることだと思います。あれができる民族でなければなりません。世界の滅亡を防ぎとめることができないとまで思うのです。あれは小我を去ればできる。小我を自分だと思っている限り決してできない。
小林 あなた、そんなに日本主義ですか。
岡 純粋の日本人です。

このかけ合いはおもしろいですね。小林先生は少しあきれているように思われます。

小林 特攻隊というと、批評家は大変観念的に批評しますね。悪い政治の犠牲者という公式を使って。特攻隊で飛び立ったときの青年の心持ちになってみるという想像力は省略するのです。その人の身になってみるというのが、実は評論の極意ですがね。
岡 極意というのは簡単なことですな。
岡 私は数え年五つの時から中学4年生の時に祖父が死ぬまで、他を先にして自分を後にせよというただ一つの戒律、祖父から厳重に守らされたのです。
岡 死をみること帰するというのは、なつかしいから帰るという意味です。

評論の極意については「小林秀雄の想像力」という題で、無私の精神の本の帯に大江健三郎が書いています。さて探したがなかなか見つからない。小さな書棚にふっと隠れてしまいます。やっと見つかったら本文のどこにあったか見つからない。なかったのかもしれません。はじめて読んだときは、なるほどと深く感銘したものです。今もそれができている人は希だと思います。知識や理論を先にして、最も大切なことを忘れています。次に青梅雨・永井龍男著の話題になります。小説ですが、評論の極意が登場人物に活写されている小説だと思います。

岡 うかがっただけでも、感心しました。そういう小説があるのですか。
小林 ええ、こういう小説は、たしかに西洋人にはわかりにくい。これを死をみること帰するがごとしというのでしょうか。




青梅雨(あおつゆ)・永井龍男著

2010-05-24 08:17:32 | 読書
昨日はほとんど眠れなかった。眠れなかった理由がもう一つあります。
昨夜は蒸し暑くて寝苦しかった。人間の建設 岡潔・小林秀雄対談で「青梅雨(あおつゆ)・永井龍男著のことが出てきたのですぐにアマゾンで取り寄せました。岡潔・小林秀雄が驚嘆する小説です。迷わずに注文しました。永井龍男の名前は知っていましたが、作品は初めてです。すぐに引き込まれ、朝までに読み切ってしまいました。とにかく無駄な言葉は一つもない。このキリッとした緊迫感は極上のものです。
人間の建設8 岡潔・小林秀雄対談に下のような会話があります。
小林 岡さんの文章は確信だけが書いてあるのですよ。
岡 確信しない間は複雑で書けない。

青梅雨も確信だけが書いてあると思います。小説の裏に明確な作者がいます。