「想像ラジオ」のパーソナリティアークは高い杉の木に引っかかっている3.11の死者です。アークはあの世とこの世の間に宙ぶらりんな状態でぶら下がりながら、DJ(ディスク・ジョッキー)をしています。リスナーも死者。「想像ラジオ」は想像によって聞こえるラジオ。なんかややこしくなりました、小説を2,3ページ読めばこの構図は分かります。小説家として3.11に正面から取り組んだ作品だと思います。3.11の立場は死者から傍観者まで様々です。奈良県に住む私は地震を感じなかった。だが、一日中テレビは見ていた。何にも出来なかった。いや、しなかったのかもしれない。そして、今も、喉に刺さった小骨みたいに、折に触れて痛みます。3.11は日本人の共通の経験だと思います。この作品が芥川賞を取らなかったのは残念です。でも、作者は芥川賞よりも、この作品を書き上げたことの方が嬉しかったと思いますよ。私は震災を取り扱ったNHK土曜ドラマ「キルトの家」・山田太一について感想を書いています。「3.11はあなたにとって何だったか」。皆さんの意見を聞きたいですね。