トリップ 四回 「音の旅」 空白の街
『ジャンヌの肖像』=モディリアーニ
ー作者が誰なのか? モデルは誰なのか? いつ描かれたのか? 全ての分析は無意味に。ただ対峙するだけで、女はあなたに近づいてくるー
目を覚ますと、窓の外は明るくなっていた。相変わらず車内は僕一人だった。そろそろ着く頃だろう。僕はショルダーバッグを網棚から下ろした。終点だから、乗り過ごすことはない。列車はスピードを緩め、やがて停まった。窓を開け顔を出すと線路が途切れていた。
駅前に潰れてしまったのか開店前なのか分からない寂れた店が数件かたまっていた。その遙か向こうにイオンの巨大な看板が見えた。
ここには何度も来た筈だが、初めての場所のように町の地図は空白だ。僕は頭が悪いから過去の事はすぐに忘れてしまうのだろう。君はそれは良いことだというかもしれない。いつも新鮮な時間を生きていける。しかし、過去がなければ自分が何者か分からなくなってしまう。過去を忘れても僕は過去を引きずっているのだと思う。
道を真っ直ぐに歩くと、川に突き当たる。多分。こうして、記憶にはないが少し懐かしい匂いのする場所を辿り始める。
以下次回
『ジャンヌの肖像』=モディリアーニ
ー作者が誰なのか? モデルは誰なのか? いつ描かれたのか? 全ての分析は無意味に。ただ対峙するだけで、女はあなたに近づいてくるー
目を覚ますと、窓の外は明るくなっていた。相変わらず車内は僕一人だった。そろそろ着く頃だろう。僕はショルダーバッグを網棚から下ろした。終点だから、乗り過ごすことはない。列車はスピードを緩め、やがて停まった。窓を開け顔を出すと線路が途切れていた。
駅前に潰れてしまったのか開店前なのか分からない寂れた店が数件かたまっていた。その遙か向こうにイオンの巨大な看板が見えた。
ここには何度も来た筈だが、初めての場所のように町の地図は空白だ。僕は頭が悪いから過去の事はすぐに忘れてしまうのだろう。君はそれは良いことだというかもしれない。いつも新鮮な時間を生きていける。しかし、過去がなければ自分が何者か分からなくなってしまう。過去を忘れても僕は過去を引きずっているのだと思う。
道を真っ直ぐに歩くと、川に突き当たる。多分。こうして、記憶にはないが少し懐かしい匂いのする場所を辿り始める。
以下次回