いりみだれた散歩・武田泰淳
昔はいりみだれていた。道や家も。人の生活も。匂いも。新聞紙は、便所の紙にも食べ物を包むのにも使った。市場や商店街にも、一軒一軒人がいて、その人達の生活があった。買い物とは、人と会うことだった。今のスーパーは、区切りがあるだけだ。野菜、肉、魚、総菜、缶詰、調味料等々。全てが直線で区切られている。誰とも喋ることなくコンパートメントを巡り買い物を済ます。そこに他人が入り込む余地はない。やがて、「いりみだれた散歩」も消えるのだろうか?
昔はいりみだれていた。道や家も。人の生活も。匂いも。新聞紙は、便所の紙にも食べ物を包むのにも使った。市場や商店街にも、一軒一軒人がいて、その人達の生活があった。買い物とは、人と会うことだった。今のスーパーは、区切りがあるだけだ。野菜、肉、魚、総菜、缶詰、調味料等々。全てが直線で区切られている。誰とも喋ることなくコンパートメントを巡り買い物を済ます。そこに他人が入り込む余地はない。やがて、「いりみだれた散歩」も消えるのだろうか?