新潮12月号 平野啓一郎作 「日蝕」は途中放棄。今年新潮7月号の「「異邦人#6ー4」「母と子」「やがて光源のない澄んだ乱反射の表で……/『TSUNAMI』のための32点の絵のない挿絵」を読んで、ずいぶん読みやすくなったなあと思いました。今回の「顔のない裸体たち」は内容も分かりやすい。性の隠語が頻発するのは、「蛇にピアス」「シシリエンヌ」と同様、あまり驚かなくなった。ただ二作品が一つの愛の形を描いたのとは全く違う方向性を示しているように思われる。鏡の比喩がある。「彼女の顔は、単に鏡に映し出されているというのではなく、恐らくは、彼女の所有を離れて、この時既に、鏡の中にこそ存在していた。彼女の顔こそは、それを単に映し出している鏡にすぎなかった」。実像と虚像というテーマが鮮やかに浮かび上がってくる見事な文章である。実像と虚像の境目があやふやになり、逆さまの実体として虚像が実像に取って代わる。インターネットに跋扈する匿名という名の虚像。出口のない孤独。僕らは、今、そんな時代にいる。
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