連載小説 トリップ
二回 プロローグ「カード」
ピエト・モンドリアン
僕は仰向けに寝転がった。天井の高さは二m弱。とても低い。屋根裏部屋といった方がよいかもしれない。低い天井を見つめていると、自分が誰かに飼育されているような気がしてくる。
勿論、三種の神器だけで生活は出来ない。金も必要だ。だが、僕は現金を殆ど使わない。カード専門だ。財布には折り畳んだ千円札二枚とカードが一枚入っている。カードで電車に乗れるし、買い物も出来る。コーヒーの自動販売機もOKだ。お釣りの心配もない。
カードには過不足なく、多分、自動的に一定の金額が追加される。これは父と僕をつないでる唯一の電線みたいなものだ。
スーパーマーケットでもカードは使える。歩いて行ける距離にイオンがある。僕は巨大なスーパーマーケットで買い物をするのが好きだ。ゆっくりと選んで、バーコードで読み取り、カードで支払う。
住と食はそれでよいだろう。だがと君は言うかもしれない。人間関係は? 特に女性は? と聞くだろう。男性として性欲は当然ある。それもオートマチックに処理されている。月に一度女性が派遣されて僕の部屋にやって来る。きっちりと性欲は処理される。彼女らは処理が終わるとさっさと帰っていく。間違っても夕食を作るなんていうことはない。僕は結婚とかデートとかに惑わされることはない。僕には社会はない。狭い部屋が全てだ。
仕事?。これを仕事といえばの話だが。ショート・ストーリーを書いている。書き終わると送信ボタンを押す。パソコンにショート・ストーリーの痕跡は残らない。それがどこへ送られるのか、どのように利用されているのか僕は知らない。ゲームになっているのか、本になっているのか、捨てられているのか。
つい最近、送信ボタンがブログ投稿というボタンに変わっていた。気づかなかっただけで前から変わっていたのかもしれない。押すと、「ブログに投稿しました」というメッセージが出て元の画面になった。
本屋でブログについて調べた。
【ブログ】個人が身辺の出来事や自分の主張などを日記形式で書き込むインターネットのサイトやホーム-ページ。
これで、僕は誰かにメッセージを送っている可能性が出てきた。あくまでも可能性だ。届いた先には誰もいないのかもしれないし、千人が見ているのかもしれない。
以下次回
二回 プロローグ「カード」
ピエト・モンドリアン
僕は仰向けに寝転がった。天井の高さは二m弱。とても低い。屋根裏部屋といった方がよいかもしれない。低い天井を見つめていると、自分が誰かに飼育されているような気がしてくる。
勿論、三種の神器だけで生活は出来ない。金も必要だ。だが、僕は現金を殆ど使わない。カード専門だ。財布には折り畳んだ千円札二枚とカードが一枚入っている。カードで電車に乗れるし、買い物も出来る。コーヒーの自動販売機もOKだ。お釣りの心配もない。
カードには過不足なく、多分、自動的に一定の金額が追加される。これは父と僕をつないでる唯一の電線みたいなものだ。
スーパーマーケットでもカードは使える。歩いて行ける距離にイオンがある。僕は巨大なスーパーマーケットで買い物をするのが好きだ。ゆっくりと選んで、バーコードで読み取り、カードで支払う。
住と食はそれでよいだろう。だがと君は言うかもしれない。人間関係は? 特に女性は? と聞くだろう。男性として性欲は当然ある。それもオートマチックに処理されている。月に一度女性が派遣されて僕の部屋にやって来る。きっちりと性欲は処理される。彼女らは処理が終わるとさっさと帰っていく。間違っても夕食を作るなんていうことはない。僕は結婚とかデートとかに惑わされることはない。僕には社会はない。狭い部屋が全てだ。
仕事?。これを仕事といえばの話だが。ショート・ストーリーを書いている。書き終わると送信ボタンを押す。パソコンにショート・ストーリーの痕跡は残らない。それがどこへ送られるのか、どのように利用されているのか僕は知らない。ゲームになっているのか、本になっているのか、捨てられているのか。
つい最近、送信ボタンがブログ投稿というボタンに変わっていた。気づかなかっただけで前から変わっていたのかもしれない。押すと、「ブログに投稿しました」というメッセージが出て元の画面になった。
本屋でブログについて調べた。
【ブログ】個人が身辺の出来事や自分の主張などを日記形式で書き込むインターネットのサイトやホーム-ページ。
これで、僕は誰かにメッセージを送っている可能性が出てきた。あくまでも可能性だ。届いた先には誰もいないのかもしれないし、千人が見ているのかもしれない。
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