言葉のない村
夕食のあと、卓袱台に二人は向かい合う。太郎は夢の話をする。私は太郎の夢の話が好きだ。
夢の中で目が覚めた。奇妙な事だけど、そうとしか言いようがない。いつもの寝床だ。起きてドアを開けると、まだ、夜が明けていない。風景がまるで違う。僕は森の中にいた。そこは言葉のない村だった。だから、とても静かだ。村で人が一人死ぬと、種を一つ植える。その種から一人生まれる。だから、人数は変わらない。何人か知らないけれどね。村人には性がない。男女の区別がない。とても静かな人たちだ。彼等は森の精を呼吸して生きている。一人一人が小さな穴で生活している。言葉に代わるのは瞳だ。互いに瞳を覗き込んで相手を知る。分かると、瞳が青に変わる。いつもは白だ。瞳には青と白しかない。
森には清流がある。彼等は裸で向かい合って、青と白の瞳で交流する。村には見えない動物がいる。動物も声を失っている。村人の手が動物を撫でている。時々、僕の側を風のように通りぬけていく。
私と太郎は裸で向かい合っている。やがて眠る時間が来る。
2008/08/10(日)
夕食のあと、卓袱台に二人は向かい合う。太郎は夢の話をする。私は太郎の夢の話が好きだ。
夢の中で目が覚めた。奇妙な事だけど、そうとしか言いようがない。いつもの寝床だ。起きてドアを開けると、まだ、夜が明けていない。風景がまるで違う。僕は森の中にいた。そこは言葉のない村だった。だから、とても静かだ。村で人が一人死ぬと、種を一つ植える。その種から一人生まれる。だから、人数は変わらない。何人か知らないけれどね。村人には性がない。男女の区別がない。とても静かな人たちだ。彼等は森の精を呼吸して生きている。一人一人が小さな穴で生活している。言葉に代わるのは瞳だ。互いに瞳を覗き込んで相手を知る。分かると、瞳が青に変わる。いつもは白だ。瞳には青と白しかない。
森には清流がある。彼等は裸で向かい合って、青と白の瞳で交流する。村には見えない動物がいる。動物も声を失っている。村人の手が動物を撫でている。時々、僕の側を風のように通りぬけていく。
私と太郎は裸で向かい合っている。やがて眠る時間が来る。
2008/08/10(日)