ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2014.8.26 より良い治療を受けるために

2014-08-26 19:39:10 | 日記
 先日、私の取材を掲載して頂いた毎日新聞のシリーズ記事。今日、5回目は腫瘍内科医のインタビューだった。
 記者さんからは「勝俣先生に話を聴いてきました、課題山積です」と伺っていたので、記事を楽しみにしていた。長文ではあるが、以下、転載させて頂く。

※  ※  ※(転載開始)

がん・ステージ4を生きる:笑顔で過ごしたい/5 「最善最良」の治療、見極めて 勝俣範之医師に聞く(毎日新聞 2014年08月26日 東京朝刊)

 ◇日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授・勝俣範之医師
 治癒が難しいステージ4のがんに、今の医療は何ができるのか。患者は、どうすればより良い治療が受けられるのか。ステージ4の治療は抗がん剤の投与が中心となる。抗がん剤を専門に扱うのは「腫瘍内科」だ。日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授の勝俣範之医師に聞いた。

 −−「ステージ4=末期がん」というイメージがあります
 ◆それは正しくありません。ステージ4でも長生きする人はいるし、中には治る人もいます。近年、ステージ4で特に治療成績が上がったのが、乳がん、腎臓がん、皮膚がんの一種の悪性黒色腫(メラノーマ)など。分子標的治療薬の開発が進み、生存期間を延ばしました。従来のタイプの抗がん剤も良い薬が増えていて、特にステージ4の大腸がんも、ここ10年でかなり治療成績が上がっています。
 ●副作用対策に差
 −−「抗がん剤は副作用も多く、使うべきではない」と主張する人もいます
 ◆確かに副作用はつきものです。しかし個人差が大きいですし、近年は、かなり抑えられるようになりました。抗がん剤は、本来は副作用対策に精通した腫瘍内科医が扱うべきですが、欧米に比べて日本は圧倒的に人数が少ない。したがって外科医が処方する場合が多いのですが、医師によって知識や技量に差があります。
 例えば、乳がんなどに使われる「タキソテール」という抗がん剤では、爪が剥がれるなどの副作用があります。投与中に、専用のグローブをはめて手を低温に保つとかなり防げるのですが、がん拠点病院でも備えていないところがあります。
 ●「最先端」への誤解
 −−治したい一心で「標準治療」以外の治療を受ける患者も多いと聞きます。効果のほどは
 ◆まず、標準治療は「並」の治療と誤解されがちですが、そうではなく現段階での「最善最良」の治療ということを分かってほしい。「最先端の治療=良い治療」ではありません。
 例えば、放射線治療の一種である「陽子線治療」や「重粒子線治療」は「先進医療」です。先進医療とは、厚生労働省が安全性や有効性などを確認したうえで承認した治療ですが、まだ研究段階で、保険が利かずに高額です。日本は「皆保険」の国ですから、きちんとしたエビデンス(科学的根拠)が出れば、保険適用になります。
 高額で、かつ先進医療に指定されていない治療は要注意です。近年、話題の「免疫療法」も、多くは指定されていない。クリニックのホームページなどに治療効果を示すデータが掲載されていることがありますが医学的見地から見ると有効なデータではありません。
 −−医師の告げる「余命」は正しいのでしょうか
 ◆余命についても誤解が多く、安易に口にすべきではないと私は思います。余命は同じような症例の「平均値」だと思われがちですが、医師が告げる場合はほとんどが「中央値」です。100人のデータがあれば、50番目に亡くなった人の数値。それよりもっと早く亡くなる人もいれば、何年も長く生きる人もいる。かなりばらつきがあります。「余命を超えても生きている」というのは、何ら不思議なことではありません。
 ●緩和ケアで延命も
 −−積極的治療のやめどきというのはあるのでしょうか
 ◆抗がん剤の限界をよく分かっている医師なら、これ以上使っても効果がないと思われる場合は、投与しないことを勧めます。しかし、それをうまく言えない医師が多いので、亡くなる寸前までつらい抗がん剤治療を続けてしまう。
 一方、やめることを提案すると、「何もせずに死を待つのですか」と言う患者さんもいる。それは違います。「緩和ケア」をしっかりとやることで、抗がん剤ひとつ分の延命効果があるというデータがあります。緩和ケアは治療のひとつなのです。
 −−医師と意思疎通ができずに悩む患者も多いようです
 ◆そのことが、医療不信にもつながっていると思います。特に勤務医は激務なので、余裕をもって患者さんの話を聞くことができません。とはいえ、医師はコミュニケーション能力を磨くべきで、今の医学部は患者との面談法を教えています。
 「インフォームドコンセント」という言葉があります。本来は、患者が十分に理解し、納得したうえで医療を受けるためのものですが、現状では、医師が一方的に説明して、後の選択は患者にまかせるということが横行しています。そうではなく、患者とよく話し合い、患者の「生活の質」を考慮しながら、両者で最善の治療方法を決めるべきです。
 −−地域や病院によって医療格差も大きいようです
 ◆格差をなくすために国もいろいろと対策を講じていますが、現場が追いついていないのが実情です。主治医を代えるのは勇気が必要かもしれませんが、疑念を持つならセカンドオピニオンをとり、病院を替えるのもひとつの選択肢でしょう。【聞き手・三輪晴美】=つづく

(転載終了)※  ※  ※

 いずれも興味ある内容で、結局、全て転載させて頂くことになってしまった。
 冒頭から“ステージ4は末期ではない”という希望に溢れた言葉である。そう、確かにがんには0期から4期までの病期しかなく、5期が存在しないのは事実だ。けれど、一言で4期といってもかなり幅があるということを、日々実感している。遠隔転移していても命に即関わらない、薬(それも抗がん剤でない)で穏やかに長期間コントロールしていける転移事例も沢山ある。4期は進行がんであるには変わりないけれど、今の私を見て、ああ、末期がんの患者さんだな(可哀想に・・・)とは誰も思わないだろう。こと予後の長い乳がん患者にはそういう方は多い。皆、病気と上手く共存しながら、治療も仕事もプライベートも、長期間にわたってこなしている。

 そして、抗がん剤=悪、と声高らかに言う一部の医師の罪はやはり重いのではないかと思う。医療は日進月歩、私が病を得た10年前に比べ、続々と新薬が登場していると同時に副作用対策も格段に進歩している。ここで取り上げられているタキソテール副作用対策のアイス・グローブも、私が6年前に治療を受けた時にはまだ登場していなかった。そのため、手足の爪は全て脱落したけれど、今ならそれは避けられそうだ。そして、大昔に見たドラマのイメージ-嘔吐が酷くてバケツを抱えたままベッドの上で過ごす-のようなことは、そうそうないと思う。
 もちろん個人差はあるのだろうけれど、実際、私はこれまで吐き気が酷いという抗がん剤を使った時も、強力な吐き気止めを数種類処方して頂き、実際に嘔吐に苦しんだことはない。抗がん剤はもちろん、様々な治療を経験したから言えることだけれど、ホルモン剤や分子標的治療薬に比べれば、抗がん剤の副作用はキツいことには変わりない。けれど、実際に奏効するというエビデンスがあるからこそ標準治療なのである(インタビューにもあるが、標準治療という言葉の“標準”はどうも響きが悪い。松竹梅でいえば並、“梅”のイメージがある。実は現段階では最善の特上“松”であるのに・・・。)。
 抗がん剤治療=悪魔の薬、と何も知らない人々を必要以上に恐れさせ、騒ぎ過ぎているのではないか。副作用でボロボロの廃人のようになって・・・ではない。作用があるから副作用がある。両者を天秤にかけながら、患者は自分自身の身体の声に耳を傾ける。そして、出来る限り延命効果のある処方をするのは何より主治医の腕の見せ所だ。もちろん一人一人の患者により、さじ加減は異なる。それこそ患者との間のコミュニケーション作業によるものだと思う。

 やはり餅は餅屋。化学療法がメインとなる再発治療開始のタイミングで、外科医から腫瘍内科医を主治医に変え、転院することが出来た私は本当に恵まれている。日本ではまだ数少ない腫瘍内科医に全ての患者がかかれる環境ではない、ということも承知している。多忙で激務な医師に全てを求めるのは酷であるとも思う。
 それに、私は東京に住んでいるからこそこうして転院が叶ったのであり、地方在住であれば、セカンドオピニオンを取りに行くことは出来ても、結局、地元に戻って治療を続けざるを得ない患者さんは数えきれないのだろう。命の重みを“地域格差”と一言で片づけてしまうには、やりきれない思いである。

 さて、昨日は疲労と頭痛が酷く、家で寝たり起きたり。一歩も外に出ずじまいの一日になってしまったが、今日は無事復活した。やはり出勤しないとシャッキリしない。ダラダラ・ウトウトしてしまってダメだなあ・・・と思う。

 明日は通院日だ。先週撮影したCTの結果も聞いてこなければならない。気付けば8月も残り5日である。
コメント
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