水曜日。夫は出勤日。外出の予定があるし、お天気も良いので、すっくと起きる。一昨日接種したオミクロン株ワクチンの副反応も若干残る腕の痛みのみになった。朝ヨガを済ませ、洗濯機を廻し、夫を送り出す。
BSで朝ドラを視ながら朝食を摂り、洗い上がった洗濯物をベランダ一杯に干し上げる。久しぶりに朝から青空だ。単純なので、天気が良いと俄然やる気になる。
メールチェックと各紙チェックを済ませ、さて、出かける準備である。
ちょうど1週間前、まだ治療後の体調不良で籠城蟄居を決め込んでいる日に、申し込んでいたコンサートのチケットが送られてきた。先着順とはいえ、発送をもって招待に替えるとのことだったので、前もってどなたかを誘うことも出来ず。夫は仕事で休めないと言い、母はCT検査だと言う。暇なのは私ぐらいか。
平日の午後だし、働いている友人知人に声をかけるわけにもいかず。せっかくペア券なので・・・とダメ元でお誘いしたところ、ラッキーにも仕事がお休みの日なので、是非!と返事が返ってきた。
お相手は、毎月マッサージでお世話になっているWさんのプライべートサロンに鞍替えする前、15年近く担当してくれていた、Wさんの1年後輩にあたるTさんだ。
コロナ禍になってからはもちろん、それ以前もなかなかお目にかかれなかった。最後にお会いしたのは5年ほど前だったか。友人の合唱コンサートにお誘いした時だったと思う。
先日彼女から久しぶりにLINEが来て、お嬢さんが成人式を迎えると聞き、歳を取るわけだ・・・と驚いたのだった。暖かくなったらお目にかかりましょうと言いつつ、そんな先のことは・・・、と思い切ってお誘いして良かった。
まずは予約したホテルのラウンジで早めのランチを摂ることに。体調のこと、お互いの家族のことエトセトラエトセトラ、2時間途切れることなくお喋りが弾み、コンサート会場に向かった。
目指すはウクライナの歌姫、ウクライナの民族楽器バンドゥーラの演奏者ナターシャ(ナタリア)・グジーさんのチャリティコンサートである。会場は最近リニューアルされたとのことで、すっかり綺麗になっていてびっくり。平日の午後、客層は大半がシニア世代だったが、1,100人規模のホールがほぼ埋まっていた。
ウクライナの曲の合間に日本の曲も織り交ぜ、流暢な日本語での語りを挟みながら、90分以上休憩なし、ノンストップの弾き語りステージは、とても素晴らしく感動的だった。
この春、ウクライナ支援でソプラノ歌手のコンサートを聴く機会があったが、理不尽な戦争に祖国を揺るがされている遠い国には、なんと美しく才能豊かな方たちが私達の国に数多くおられるのだろう。その透き通るような美しい声とまるで聖母マリア様の肖像画のような姿に魅了されるとともに、初めて聴くバンドゥーラという楽器の哀愁を帯びた可憐な音色が心に響く。
弦が63本、重さは8㎏もあるという彼女の楽器には、美しい刺繍が施された赤を基調とする民族衣装ヴィシィヴァンカに映える美しい絵模様が描かれている。彼女は6歳のとき、チェルノブイリ原発からわずか3.5キロの地で被曝。避難生活で各地を転々とし、キエフ市に移住したという。
バンドゥーラの音色に魅せられ、8歳から音楽学校専門課程に学び、初来日は1996年。2000年から日本語学校で学びながら日本での本格的な音楽活動を開始し、在日22年とのこと。美しく透明な声は、水晶の歌声と言われ、多くの人々を魅了している、というプロフィール通りの演奏だった。
理不尽な戦火のもとにある故郷を想う曲を切々と歌い上げ、アンコール曲は自作の「希望の大地」。そして「ふるさと」。
「ふるさと」はウクライナ語(と思われる)で歌った後、滑らかな日本語で、観客にも心の中で一緒に歌ってください、と呼び掛けて終わった。
密防止のためブロックごとに退場とのことだったので、暫し待つ。ロビーではCD等の販売もあり、サインも頂けるとのことだったが、並んでいたら何時になるかわからないほどの人の多さだったので、早々にホールを離れた。
久しぶりの生演奏にすっかり満ち足りた気分で、良かったですね、と感想を言い合いつつTさんと最寄り駅を目指す。ちょうど良いタイミングで特急電車が滑り込んで来て、乗車。私は最寄り駅で降り、Tさんは終点まで、さらにそこからご自宅最寄り駅まではJRに2回乗り換え。道中は長い。
最寄り駅前のカフェで暫し休憩をし、Tさんに遠路はるばるいらして頂いたお礼をLINEで打ってから、ヨガスタジオへ。既にいつも参加しているF先生のビューティヨガは終了しているので、岩盤浴タイムへ。セルフプラクティスを1時間弱行って、身体を温め、汗をかいてスッキリした。私ともうお一人のほぼ貸し切り状態。シャワーのお湯も今日はしっかり熱く、快適だった。
Tさんはその後、4回目のコロナワクチン接種を終えた大学生のお嬢さんUちゃんと乗換駅でうまく合流出来、お洋服をねだられたそうな。オーケストラでファゴットを吹いているというUちゃんの写真を見せて頂いたが、ぽっちゃりしていた幼い頃の面影はどこへやら、すっかりお年頃の綺麗な娘さんになっていた。
夫より5分でも早く帰宅せねば、と家路を急ぐ。玄関には生協のお届け物が一杯。何とか取り込み、玄関にひとまず置いたまま、今度はベランダで冷たくなっている洗濯物を取り入れていると、夫が帰ってきた。
生協の食品類が玄関に放り込まれたままで、レンジにはご飯のスイッチを入れた状態だったので、驚いている様子だった。
急いで収納し、夫には洗濯物を畳んでもらって大車輪で食事の支度を済ませ、夕食を摂った。
食後は母にMeet通話。今日は造影CT検査が、ちょうどチャリティコンサートの始まる時間の予定予約だったというが、入院患者さん等の横やりが入って、かなり待たされて帰宅出来たのは夕方だったという。
つまりは昼食抜きで夕方になったとのこと。なんだかしょぼくれてげっそりした顔をしていた。明日はまたデイサービスで、お楽しみ会で出場するえんぴつ競争の練習だそうだ。
というわけで、久しぶりの再会が叶い、コンサートも楽しむことが出来て、一足早いクリスマスプレゼントを頂いた気分である。
ほぼずっと引き籠りの身、たまにはちょっとお洒落をして、きちんとメイクをして出かけるのも自由人には必要だな、と改めて思うのである。