前にすごいミステリだ、と書いた『その女アレックス』と同じヴェルーヴェン警部シリーズ。
これはシリーズ第1作なのだが、邦訳は『その女アレックス』の方が先に出ている。
アレックスが凄すぎたので、あれほどまでに意表を突かれることはないだろうと
思って読み始めた。たしかに事件はてんこ盛りなのだけど、シリアルキラーものなら
映画でもドラマでもたくさんお目にかかっているので、まあ、こんなものだろうと。
殺害方法は残虐ながら、映像と違って文字なので、そこまで生々しくないし。
しかし、やはりルメートルなのである。一筋縄ではいかなかった。
小説は二部構成なのだが、第一部が391ページもあるのに対して、
第二部はわずか47ページ。とはいえ、その第二部を読むと、第一部が根底から
ひっくり返されてしまう。ここまで読んできた、あれはいったい何だったの!
と叫びだしたくなる。たとえそれが小説世界とはいえ、ひとつの世界がガラガラと
音を立てて崩壊してしまうような、そんな印象なのだ。
似ているようでどこか違うパラレルワールド。
ほんとうの世界は、読者が想像するしかない。
余談だが、殺人のモチーフとなったミステリのうち、わたしはジェイムズ・
エルロイの『ブラック・ダリア』しか読んでいない。
もっとミステリに詳しかったら、さらに興味が増したかもしれないのが残念ではある。
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