散日拾遺

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還暦のこと

2017-01-21 18:52:29 | 日記

2017年1月21日(土)

 『なぜなに日本語』というのは読売新聞の人気コラムなのかな。読売はとっていないが、ある人が記事のコピーをくださったので面白く読んだ。以前ブログにも書いたが、還暦と数え年の基礎知識について関根健一記者が要領よく書いておられるので、転記しておく。同記者の似顔絵が秀逸で、もちろん赤いちゃんちゃんこをお召しである。

 赤いちゃんちゃんこは長寿の祝いであると同時に、老境入りを社会的に宣言する社会儀礼でもあった。潜在的には「楢山入り」の意味を含んだことだろう。「還暦」は60の倍数でしかありえないから数え年の61歳から動かすわけにいかないが、赤いちゃんちゃんこに託される意味づけは十二支をもう一巡した数え73歳ぐらいが現状にあっていると思われる。

 そんなことを考えながら迎えた正月5日、日本老年学会・日本老年医学会が高齢者の定義を「65歳以上」から「75歳以上」に改めようとの提言をまとめ、物議を醸した。一気に10歳引き上げは思いきったものだが、実際そんなものかもしれない。

 ただしこれは医学的な観点からの軌道修正であって、年金や福祉のあり方と自動的にリンクするものではない。そうあってはならないということ、大方の論者の言う通りである。以上、念のため。

  なぜなに日本語332 『還暦 数え年では何歳?』

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 新年になると「おめでとうございます」とあいさつします。どうして「めでたい」のでしょう? 昔の暦では春の訪れとともに新年が来ました。太陽が輝きを取り戻し、生き物が活動を始める季節に再び出会えるのはめでたいことでした。

 そして、お正月には、みんな一緒に一つ年をとりました。生まれた時点で1歳、おせち料理を食べるごとに1歲ずつ加えていくこの計算法を数え年と言います。数え年によるならば、お正月はいわば全員の誕生日ということになり、お互いに「おめでとう」と祝いあったのです。

 さて、今年は酉年ですね。動物にちなんだ呼び名の十二支と、十干(甲、乙、丙、丁…の順で並んだ十の言葉)を組み合わせ、60種類の言い方(干支)が作れます。年に当てはめると、60年に1度、61年目に同じ干支が還ってきます。それを還暦と呼びます。年齢を指す言葉です。2017年は、丁酉(ひのととり、ていゆう)で、1957年と同じ干支です。

 57年生まれの人は今年、還暦を迎えました。満年齢では誕生日が来るまではまだ59歳ですが、還暦は数え年で計算するので、みな仲良く61歳です。めでたいのはいいけれど、2歳も年をとってしまうのはなあ、と思う人も!?

(関根健一)

Ω


何をもって「偉大」とするか

2017-01-21 10:01:46 | 日記

2017年1月21日(土)

 歴史に残っちゃったりするんだろうか、第45代アメリカ合衆国大統領就任式。

 "We are going to make America great again, greater than ever." だっけか。それより強く耳に残るのは、彼が政敵(の政策)を非難する時によっく使う ”complete disaster" という表現である。

 わざわざ書くまでもないことかと思うが、多くのアメリカ人にとってアメリカが偉大である理由は、単なる政治的・経済的・軍事的な優越性にあるのではなく、人類にとって普遍的な価値(とアメリカ人が信じているもの)を体現すべく真剣に努力し、人類史に小さからぬ貢献を為してきた(とアメリカ人が信じている)ことにある。少なくとも僕の観察ではそうだ。だから新大統領が自国の利益を最優先することによって再び(あるいはこれまでになく)アメリカを偉大たらしめようとするのは、伝統に忠実な多くのアメリカ人にとっては偉大さの回復どころか、偉大さを捨てて卑小に転じることを意味する。良心的と目される多くの人々が猛烈に反発するのは、たぶんこの点が理由ではないかしら。そして新大統領がアメリカを分裂させるかもしれないというのも、単に利害の相反する二つのグループに分裂させるに止まらず、アメリカが何をもって偉大たらんとするかに関する相容れない二つの方向性の間で、国を真っ二つに割ってしまう危険を指すのだろう。

 南北戦争(1861-1865)の原因に関して、北部の保護貿易論と南部の自由貿易論の対立と、北部の奴隷解放論と南部の奴隷制度維持論との対立は日本の世界史教科書でもよく紹介されるが、アメリカへ行ってみると第三の大きな要因が今でも強調されるのに気づく。それは、アメリカ国内に何らかの深刻な対立があった場合に、それを理由として一部の州が合衆国を脱退することが認められるかどうかということだ。南部諸州はその権利ありと主張してUSAを脱退し、Confederate States of America(CSA)を結成した。リンカーン率いるUSAはそのような権利を否定して戦争に踏み切った。だからUSAのCSAに対する勝利は、アメリカ合衆国が二度と再び分裂しないとの誓いをも帰結することにもなったのである。ゲティスバーグの古戦場の一隅に、そのことに関する碑 ~ 「我々は二度と分裂しない」といったような、T. ルーズベルトか誰かのメッセージ ~ があったように記憶するが、すぐには証拠を見つけ出せない。

 ともかくアメリカは、南北戦争以来の危機に瀕しているように思われる。アイデンティティに関する危機だからさしあたりアメリカ自身の問題に違いないが、もちろんそれではすまない普遍的な意味合いを濃厚に含んでいる。政治経済的な動揺以上に深刻で永続的な、超大国のセルフイメージに関する葛藤がこれから始まる。

  

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