2018年4月17日(火)
「もう中に入らんと、蚊が噛むよ」
「大丈夫、蚊は刺すけど噛まないから」
我が家で定番のやりとりだが、僕はこれを伊予弁限定と思い込んでいた。大阪でも「噛む」ということを、文枝師匠の高座の中継で日曜日に知った。
「兵庫県でも噛むの?」
「噛むわよ、いつも言ってるじゃないの」
創作落語であろう『大・大阪辞典』、他にも「サブイボ(寒イボ、鳥肌)」「メバチコ(ものもらい)」など懐かしい語彙が続出、伊予弁が西日本方言群の一翼に属することを再確認する。
「きのう(昨日)」を「きんの」と発音する件では、古い記憶が蠢動した。むしろ「きんな」と聞こえる訛りをどこかで聞いたと思う。松江だろうか、しかし松江の小学校5、6年で担任してくださった井上芳郎先生は、「きんな」ではなく「きにょう」と発音していらした。近所の神田さんのおばちゃんも同じである。「きんな」はどこで聞いたのだったろう。
蚊の吸血行動を表現する言葉として断然印象的なのは、
「かじる」
である。山梨出身の数学少年がこの言葉を発した時、おしゃべりで口の減らない関西勢が一瞬沈黙した。僕らが前歯を剥いてアイスキャンデーやトウモロコシをガジガジかじる、あの勢いで美味しそうな柔肌にかぶりつく巨大生物の姿が、皆の頭上に浮かんでいたに違いない。
侮るべからず、ちびっ蚊ブーン、まもなく彼らの季節がやってくる。
Ω