散日拾遺

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生きてきたように/その瞬間の重さと軽さ

2018-06-12 11:07:27 | 日記

2018年6月12日(火)

 忘れないうちに。

 コンゴ出身の神父が葬儀を司り、説教の冒頭で紹介したフレーズ:

  Il est mort comme il a vécu.

 「人は生きてきたように死んでゆく」とでも訳しておこう。フランス語ではよく知られた言い回しだそうで、死生学の要諦を一文に凝縮している。

 僕がこの言葉に初めて触れたのは、淀川キリスト教病院にホスピス病棟が開設される直前、柏木哲夫氏の南支区の講演の中でだった。ちょうど話の結びあたりで引用されたものと記憶する。

***

 もう一つ、みとりの中で「その瞬間」は実はさほど大きな意味をもたない。少なくとも、早くから心がけて準備を進めてきた人々にとってはそうである。親の死に目に会えるかどうかが深刻な問題になるのは、日頃の対面・交流が叶わないような時代/境遇/心がけの然らしむるところで、そこに痛ましさの看取される場合が少なくない。そうならずに済む備えを、できるものならしておくべきなのである。

 岳父他界のあくる朝、子らの一人が「寂しいけれど爽やか」と気もちを表現した。葬儀の晩、別の一人が別の場面でまったく同じ言葉を使った。そのように言える事情と背景を、年余にわたって見せてもらっている。

 備えある人々に敬意を表す。

Ω