2018年6月14日(木)
上毛かるたというものがある。群馬県人なら誰でも知っているもので、ただ存在を知っているだけでなく、諳んじている人も多いのではないだろうか。一方、群馬県の外ではほとんど知られておらず、その対照が見事に際だっている。
僕自身は小学校三年まで前橋に住んでいながら、その存在を全く知らなかった。桜美林時代に群馬県出身の学生から知らされて、お初に感心した次第である。後述の通り1947年に完成し翌48年には第一回のかるた大会が行われたそうだから、62年から65年にかけて3年も同地で過ごしながらナゼこれを知らずに来たかは、ちょっとした私的な謎に属する。
「毎年1月の予選大会の後、2月に行われる上毛かるた県競技大会に向けて、群馬県内の子供たちは、冬休みを利用するなどして練習に励む。そのため、子供時代を群馬県で過ごした人は、上毛かるたの読み札をほぼ暗記していることが多い。したがって、県特有の郷土かるたが存在し、それが県民に広く親しまれている地域は群馬県のみであると云う事実を、成人になって知る場合もある。」(Wikipedia)
もうひと冬、前橋で過ごしていたら、あるいは知ることになったのかな。今はこれほどローカルに浸透している上毛かるた、誕生の由来が感動的である。長めにコピペする。
「1946年(昭和21年)、旧制・前橋中学出身の浦野匡彦(のちに二松学舎大学学長に就任)は、満州国から故郷・群馬へ引き揚げ、恩賜財団同胞援護会県支部を取り仕切り、戦争犠牲者の支援に取り組んでいた。敗戦後の世情は混乱し、戦争孤児・寡婦などの境遇は悲惨なものだった。また、GHQの指令により、学校教育での地理・歴史の授業は停止されていた。人一倍郷土を愛し、誇りに思っていた浦野は、群馬の子供たちには愛すべき故郷の歴史、文化を伝えたい、という思いを募らせていった[1]。」
「そのような中、1946年(昭和21年)7月15日に前橋市で開かれた引揚者大会で、浦野は安中出身のキリスト教伝道者、須田清基と出会い、かるたを通じて群馬の歴史、文化を伝えることを提案される。1947年(昭和22年)1月11日の上毛新聞紙上で構想を発表し、県内各方面から題材を募った。郷土史家や文化人ら18人からなる編纂委員会によって44の句が選ばれた。絵札を画家の小見辰男に、読み札裏の解説を歴史研究家の丸山清康に依頼し、その年内に初版12,000組が発売された。翌1948年(昭和23年)には第一回上毛かるた競技県大会が開催される[1]。
1 『「上毛かるた」で見つける群馬のすがた』
一方、感動には影の面もあった。
「人物としては、新島襄、内村鑑三、関孝和、新田義貞、田山花袋などが採り上げられている。特に船津伝次平、呑龍上人、塩原太助といった人物は、このかるたで採り上げられることで、現在まで語り継がれたともいえる。一方、勤皇の志士・高山彦九郎、義侠・国定忠治、悲劇の幕臣・小栗忠順などは、GHQにより、その思想や犯罪が問題とされ、不採用となった。」
採用・不採用を通して義の人が多く、これが上州人の面目か。「天下の義人茂左衛門」などは典型で、それなら小栗上野介などなおさら外すわけにいかない。国定忠治はあまりにも有名だから番外の大物ですむかもしれないが。
面白いのは不採用の面々のうち、忠治は幕藩体制下の秩序逸脱者、小栗は幕閣きっての傑物、高山は勤王の志士と立ち位置がバラバラなことで、これを見ても分かる通りGHQの判断に高尚な理由などありはしない、少しでも反骨精神のあるもの ~ 進駐軍への抵抗の精神的な支えとなり得るものを、徹底的に除去する悪辣な魂胆が見え透いている。
小栗上野介忠順(おぐり・こうずけのすけ・ただまさ)は、群馬県人ならずとも是非知っておきたい人物、井伏鱒二の『普門院さん』がこれに絡む逸品である。ところで萩原朔太郎の名が見えないのは、僕の見落としかしらん?ありえない感じだが・・・
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い:伊香保温泉日本の名湯
ろ:老農 船津傳次平
は:花山公園つヽじの名所
に:日本で最初の富岡製糸
ほ:誇る文豪田山花袋
へ:平和の使徒新島襄
と:利根は坂東一の川
ち:力あわせる二百万(※ 群馬県の人口の変化に応じて数字が変わる)
り:理想の電化に電源群馬
ぬ:沼田城下の塩原太助
る:ループで名高い清水トンネル
わ:和算の大家関孝和
か:関東と信越つなぐ高崎市
よ:世のちり洗う四万温泉
た:滝は吹割片品渓谷
れ:歴史に名高い、新田義貞
そ:そろいの仕度で八木節音頭
つ:つる舞う形の群馬県
ね:ねぎとこんにゃく下仁田名産
な:中仙道しのぶ安中杉並木
ら:雷と空風義理人情
む:昔を語る多胡の古碑
う:碓氷峠の関所跡
の:登る榛名のキャンプ村
お:太田金山子育呑龍
く:草津よいとこ薬の温泉
や:耶馬渓しのぐ吾妻峡
ま:繭と生糸は日本一
け:県都前橋生糸の市
ふ:分福茶釜の茂林寺
こ:心の燈台内村鑑三
え:縁起だるまの少林山
て:天下の義人茂左衛門
あ:浅間のいたずら鬼の押出し
さ:三波石と共に名高い冬桜
き:桐生は日本の機どころ
ゆ:ゆかりは古し貫前神社
め:銘仙織出す伊勢崎市
み:水上・谷川スキーと登山
し:しのぶ毛の国二子塚
ひ:白衣観音慈悲の御手
も:紅葉に映える妙義山
せ:仙境尾瀬沼花の原
す:裾野は長し赤城山
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