2018年6月16日(土)
過去の記憶がもたらす不安や恐れから抜け出そうと苦闘している人に、何と伝えたらよいものか。
もともと好きだったものは何もかも、どれもこれも不快な色に塗りつぶされ、何を思い出すのもつらいという。輝かしい人生の蓄えはすべて封印され、意欲も希望も内側からは出てこない。
毎日の生活の中で、いま現に入ってくる香り、眺め、声に心を向けるよう勧めてみた。微かな明るさ、小さな美しさ、ささやかな微笑ましさ、それを細大漏らさず心に書き留め、もち来たって言葉にしてみませんか。
一週間後に語られたこと、
お隣のお花が、そう言えばきれいでした。背が高くて、青くて、線香花火を逆さにしたような姿をしていました。
初めて見た花だから、記憶とも連想とも無縁である。「線香花火を逆さにしたような姿」、生きた言葉にヒントを見つけた。線香花火の思い出は、毒されておらず汚されてもいないということか。
6月の青い花、それだけのヒントで正解が他愛もなく姿を現した。これに違いない。背が高くて、青くて、線香花火を逆さにしたような姿、これ以外にありえない。
根岸森林公園(http://negishi-shinrin.jp/283.html/)より拝借
花の名をアガパンサス agapanthus という。agape(愛)+ anthos(花)、すなわち「愛の花」と解説はしたり顔に記すが、この「愛」の意味を彼の人はよく知っている。写真はたぶん Agapanthus africanus、英名 African Lily あるいは Lily of the Nile、和名は紫君子蘭(ムラサキクンシラン)、ユリ科とされたこともあったが、現在はヒガンバナ科に分類されている。
半歩前進。
Ω