2023年8月14日(月)
名前で損をする花について、「ママコノシリヌグイとオオイヌノフグリが双璧」と以前書いた。この両横綱に続く大関を挙げておく。
ヘクソカズラ(屁糞葛 Paederia scandens)、アカネ科ヘクソカズラ属の蔓性多年草。ほったらかしのツツジの上に白い花が星屑のように散っている。「やぶや道端など、至るところに生える雑草」と Wiki にあるが、姿を愛でてわざわざ育てる人もあるぐらいで、ツツジの樹冠とともに剪定してしまうのが惜しい気がした。
ただ、ありがたくない命名には実は理由があり、葉などをつぶすと強い悪臭を放つのだという。ヘクソカズラ(屁糞葛)はヘクサカズラ(屁臭葛)の転訛とあるが、「どちらにしても」だ。万葉集ではクソカズラ(屎葛)だという。
花の可愛らしさや田植え女の笠に似た形に注目してサオトメバナ(早乙女花)、サオトメカズラ(早乙女蔓)、灸に似た形や灸をすえた跡の連想からヤイトバナ(やいと花・灸花)などの別名もある由。
しかし英語ではスカンク・ヴァイン(Skunk vine)、スティンク・ヴァイン(Stink vine)、中国語では鶏屎藤(けいしとう)など、どこまでも悪臭の風評が付きまとう。ウマクワズ(馬食わず)も同様か。
悪臭の成分ははメチルメルカプタン(別名:メタンチオール)で、食害を受ける害虫などから身を守るためのもの(アレロパシー)らしい。ヘクソカズラヒゲナガアブラムシという昆虫は、ヘクソカズラの悪臭成分を体内に取り込んで、外敵から身を守っているという。生き物の工夫は実にさまざまである。
花言葉は「人嫌い」「意外性のある」だそうだ。意外性…なるほど。
以下、Wikipedia から「文化」関連事項をコピペ:
【短歌】
- そうきょうに 延(は)ひおほとれる屎葛(くそかずら)絶ゆることなく 宮仕えせむ
高宮王『万葉集』(巻十六、3855)
そうきょう(皂莢、ジャケツイバラ)に絡みながら延びてゆくクソカズラ、その蔓のように絶えることなくいつまでも宮仕えしたいものだ…といった意味で、高宮王が奈良時代の公務員の宮仕えに関する決意表明を歌に表したものとされる。
【俳句】夏の季語
- 名をへくそ かづらとぞいふ 花盛り
高浜虚子、1940年作。詞書には「九月二十九日 日本探勝会。上野、寛永寺。」とある。『五百五十句』(櫻井書店、1943年)所収。
【諺】
- 屁糞葛も花盛り
いやなにおいがあってあまり好かれない屁糞葛でも、愛らしい花をつける時期があるように、不器量な娘でも年頃になればそれなりに魅力があるということ。類語に「鬼も十八 番茶も出花」がある。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%82%AF%E3%82%BD%E3%82%AB%E3%82%BA%E3%83%A9
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