散日拾遺

日々の雑感、読書記録、自由連想その他いろいろ。
コメント歓迎、ただし仕事関連のお問い合わせには対応していません。

ぼちぼちいこか ~ 名訳!

2013-05-06 13:57:19 | 日記

翻訳というと、つい批判がましい話が多くなってしまう。

 

が、

 

もちろん名訳も、世の中にはたくさんある。

自分自身の養われたものを挙げるなら、古くは井伏鱒二の『ドリトル先生シリーズ』、石井桃子の『クマのプーさん』や『楽しい川べ』、ちょっと飛んで新潮文庫版チェーホフ短編群の小笠原豊樹訳(何で絶版にするの!)、ハヤカワSFのカート・ヴォネガットのシリーズも良くこなれて立派な訳だと思う。

 

で、ここに小さな傑作がもうひとつ。

 

『ぼちぼちいこか』

 

という絵本だ。

 

「ぼく、消防士になれるやろか?」

「なれへんかったわ」

に始まるカバ君の自問自答シリーズがまさに秀逸、

 

「ぼちぼちいこか、ということや」

の締めくくりまで、実に文句なく楽しいのである。

 

何が素晴らしいと言って、"What can a hippocampus be?" の原題を持つアメリカの絵本を、関西弁で翻訳しようというアイデアがケッサク至極ではないか。

 

東京弁では、どう逆立ちしてもこの可笑しみは出そうもない。

 

 

ふと思いつき、訳者について検索してみた。

今江祥友(1932-)という人は、どうやらその道の大家であるらしい。

委細は省略、ともかくこの人が大阪市の出身であると確認して腑に落ちた次第。

 

繰り返すが、これを東京弁で訳したとしたら、まったく別の作品ができあがったことだろう。

 

ほんとうに、方言や訛りは豊かさの源なのだ。

 

 

 

 

 


最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
今江 祥智さん♪ (イザヴェル)
2013-05-06 22:37:35
先生お陰様で懐かしい人を思い出すことができました!「海の日曜日:1966」「山のむこうは青い海だった :1969」「子どもの国からの挨拶:1972 」は大好きで今でも納戸の隅にあります。でも翻訳は知りませんでした、びっくりです!またWikipediaを見てみたら、今江さんはなんと私が学生時代所属していた『ロマン・ロラン研究会』を設立した方でもありました!50年近くも経って知るなんて、さらにびっくり!!
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。