先日三重県紀北町の海岸線(尾鷲のすぐそば)でシーカヤックアカデミー2010が開催され、その講師として出席しました。毎年行われるこのアカデミーでは一般参加者のみならず同業のプロシーカヤッカーが多く講師として出席するので、色々と情報交換もでき、自分にとっても有意義なものとなっています。
今回は2泊3日のキャンプツーリング形式で行われました。やや天候不順な中、当初の予定スケジュールが大幅に狂わされる流れとなりましたが、逆にそれが面白い結果を導きだしました。状況判断、コース取り、ナヴィゲーション・・・、海況があまり芳しくない中で出艇すべきかせざるべきかのジャッジを含めて、講師が決めるのではなく、すべて参加者が知恵を出し合い、話し合うことによって決めていくスタイルに切り替えたのです。その中で講師はヒントを出したり、質問に答えたり、本当にマズイ判断の時にだけ介入するという、あくまで一般参加者のみで自発的にツーリングを進めていくスタイル。
これがなかなかよかったなと思いました。
期間中の海況はよくない部類に入るコンディションでしたが、それが逆によいナヴィゲーションのテキストとなったというわけです。終わった後、参加者たち、とくに若い人の表情に充実感がうかがえました。
シーカヤックはレジャー的な意味で誰にでもわりと容易に楽しめるもので、それはそれでいいものだしぼくもその側面をお客さんに提供しているのだけれど、ある意味そいつは表層的なもので、実際にはもっともっと深い面白さがあります。とくに「自分自身で自然を読み、自分自身ですべてを判断し、自分自身でツーリングを進めていく」という行為の中に、本当の魅力が隠されているのです。ま、考えれば分かることですが、自分で自然を読むことによって自然に対する知識も深まってくるし、誰かに連れていってもらったのでは得られない達成感があるし、また自分に対する信頼感ってやつも増してくる。
また、そいつをグループで行った場合、一人ひとりの親密度がより、増す。
人任せではなく、自分自身の力で物事を成就すること。
そういうのって今の世の中に一番欠けてるもので、
だけどこれからの時代、大切なものなんだよね。
ほんとに優れたカヤッカーとそうでないカヤッカーって一見それほど差が分からないものなんだけどその実、プロ野球選手と草野球選手くらいの差があると言っても過言ではありません。で、そいつはとくに「ナヴィゲーション能力(もちろん漕ぐ力も含めて」に現れます。ま、だからと言ってプロじゃない限りそれがえらいとかえらくないとかそういう話にもなんないところがシーカヤックの自由さたるゆえんなんですが(それが長所でもあり、最大の弱点でもある)、優れたシーカヤッカーの方がよりあちこちと自然の中をディープに旅することができるし、さまざまな発見が待っているし、世界が広がってますます日常が豊かになってくるということだけは確かです。で、そのレベルアップに近道は、ない。あるいは、面白さを自分自身で見出して地道に経験を積み重ねていくことこそが一番の近道なのかもしれません。
というわけで今回のアカデミーは、こちらも大変勉強になりました。
ぼく個人的にもレジャー的ツアーのクオリティをよりアップしつつ、よいシーカヤッカーを育てていきたいと思っていますしね。