俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々
花辛夷夜半の明かりとなりにけり 稱子
山笑うパン屋に今朝も長き列
夕東風や利島新島近寄りぬ 豊春
仄暗き露地に散り敷く紅椿
節くれの指にマニキュアして花見 洋子
海鳴りにまじりて届く初音かな
もの思ふ宵の花冷え足裏より 章子
春灯生きる証しの句作かな
幼児はまず茹で卵花見かな 歩智
老櫻薄墨色にいとさみし
白鶺鴒チュンチュンと春の小川 一煌
春燈や指きらめかせ杯をあげ
花上野ビニール敷きつめ友と飲む 余白
孫三人桜花よりいと愛し
目刺焼き手を俎板に豆腐切る 雲水
生若布さっとさみどり茹で上がる
初つらら防災小屋の赤いドア 炎火
それぞれにお正月ありテロリスト
笑いヨガの教室に湧く初笑い 薪
山裾の芽吹き促す水の音
旧友で少し恋人雪見酒 洋子
初笑い羽織袴の犬が来て
息災を息災のみを初詣 稱子
除夜の鐘二十三二十四微睡みぬ
久し振りダイヤの指輪新年会 歩智
犬もまた家族となりて納札
烈風を巻き込み昇るどんど焼 豊春
大寒の玻璃戸内なる日射しかな
バス待ちは老人ばかり氷雨ふる 余白
校庭の雨水に咲く色長靴
風邪気味に無上の薬友来たり 章子
初笑い縮緬皺の増えにけり
薪割りを鳥が見ている冬木の芽 雲水
雄犬の食欲不振春隣
身にひびく音多かりし冬日かな 一煌
山茶花の白を散り敷く石畳
流れゆくものはあらずよ冬の川 稱子
ひと葉残らず散りゆけり散り敷けり
除夜の鐘明治が近くなりにけり 炎火
太陽を自転公転して師走
除夜の鐘一人で聴く日来るなんて 洋子
初氷穴窯の口開いたまま
港町まるごと除夜の鐘ひびく 章子
除夜の鐘痛いの痛いの飛んでいけ
除夜の鐘過去と未来の躙口 鼓夢
ピアノ曲片面だけの宛名書き
吹きだまり落葉そのまま定休日 歩智
冬空や重なり遊ぶ犬二匹
冬日向傘寿迎えて旅立ちぬ 豊春
手を繋ぐ厚手コートの老夫婦
神主の祝詞が見える今朝の寒 余白
除夜の鐘撞く人々の思い入れ
オウム貝抱き丹沢山塊眠りたり 薪
身に入むや猫の瞳孔刃となりぬ
幸福は仕舞っておいて山眠る 雲水
年用意なんにもしない年用意
幸せは犬とまどろむ炬燵かな 洋子
古酒の酔いさめやらぬうち帰りゃんせ
尖塔の鴉一声冬来る 豊春
髪青き老婦の笑みや散紅葉
一杯の新酒に明日が絡みつく 一煌
凍星のきらりきらりと峠道
猟銃の一発響く冬の山 炎火
古酒ビールブランデーさえ調味料
さんざめく紅葉と語る人生観 薪
明王は忿怒し山は装えり
手の内に揺れる木洩れ日冬温し 歩智
豊かなる家でなくても柿たわわ
桐一葉シニアホームに友行けり 稱子
客人の今日は来る筈落葉掃く
靄や楷書を彫り陶の文字 鼓夢
時雨やみ車道に流る錦川
置き物の小犬氷雨に打たれけり 余白
たそがれの湯野浜の先山眠る
箱根山紅葉きらめく八十路かな 章子
歳とらぬ夫の遺影に冬りんご
芋食えばおなら出るなり窯の中 雲水
ファミレスのサラダトースト今朝の冬
椋鳥の来てあつき紅茶のほしきころ 一煌
木の実落つきびしき音にハッとする
椋鳥や女同志という疲れ 洋子
人生の今どのあたり烏瓜
虫時雨となりの夕餉ライスカレー 歩智
落蝉や仔犬の餌になりにけり
色さまざまさまざまに揺るる秋桜 稱子
柿食めばパリンと秋の音のして
化粧水ぱっぱとつけて秋日和 薪
秋天や鉄棒男の大団円
烏瓜カラスというに何故赤い 炎火
椋鳥やスクランブルの交差点
鰯雲端よりほぐれ暮の道 鼓夢
朝冷や味噌汁熱き独りの餉
奔放な竹の撓りや秋の風 豊春
騒擾や駅の欅に椋鳥の塒
椋鳥やどこへも行かぬ髪を切る 雲水
遊糸飛ぶいつかどこかで会った人
コロッケの包みの匂う敗戦日 薪
秋黴雨品川駅に醤油の香
午前九時コーヒー新聞赤トンボ 豊春
赤トンボ曇天の畠遊弋す
布袋草咲けば貴女の誕生日 洋子
血圧を二回計るや今朝の秋
ひたひたと雌の気配や蝉時雨 炎火
ギンギラの太平洋や赤とんぼ
空は晴れ子犬じゃれてる猫じゃらし 歩智
送り火を焚かぬ慣わし恋女房
何気なく生死を語る秋の夜 章子
指先でマルマル書くや赤とんぼ
死せる蝉踏まれ轢かれて四分五裂 余白
瓢箪に車庫を取られて借りる車庫
秋蝉や噂話に疲れをり 稱子
長生きに宿る寂しさ秋夕焼
麦わらの帽子大好き赤とんぼ 雲水
戦前が始まっている秋出水
雷鳴やテネシーワルツを切りきざむ 洋子
パラソルの下で器用にタバコ巻く
なめくじの跡キラキラと父母の墓 歩智
朝摘みの花付き胡瓜幸多し
車内みなケイタイ覗く夏の昼 豊春
夏の宵赤き爪にて宅配子
蛞蝓女形の腰の美くしき 薪
ブラックホール蛍火一つ吸い込めり
百合の香の独りの闇に抱かれをり 章子
生きるとは病むことなりやなめくじら
道端のカサブランカとコカコーラ 炎火
白壁のメタボのトカゲ尻尾欠く
なめくじの銀の足跡鉢の底 一煌
うすき影うすばかげろふ羽光る
旅に出で家人想うや合歓の花 稱子
夜濯ぎや灯りの消えぬ大都会
蛞蝓の三億年の歩みかな 雲水
敏捷が生き抜くちから金魚の子
風鈴と洗い晒しの軍手哉 炎火
大袈裟に書けば打ち水沸湯す
折り返すバス耿耿と蛍の夜 薪
路を掃く音枕辺に夏の朝
蛍来いポリープ二つ飛んで行け 洋子
三本のマッチ使いて蚊遣り焚く
残光の謎めく軌跡蛍の灯 豊春
青虫の隠遁術や七変化
ぬくき手や足元悪しき蛍狩り 歩智
蝶か蛾か毛虫にそっと問うてみる
自分史のところどころに百合が咲き 章子
文通のいつしか途絶ゆ恋蛍
万緑や山いっぱいを深呼吸 鼓夢
錨星早苗の水を渡りゆく
夏衣透けし白色整えて 一煌
歳かさね化粧の心半夏生
五十年余嫁し住む町や著莪の花 稱子
夏の雷たちまち烟る妙義山
火を曳いて絡むばかりの蛍かな 雲水
明易やあの世の父におこられて
行き過ぎてあとから気付く河鵜かな 歩智
水馬背中叩けば棒となり
唄うようにメルシーと応え新樹光 薪
ヴェルサイユ宮殿の窓ふらここす
新樹光今日も一日頑張れそう 稱子
旅終えて下りる空港風薫る
この家の行く末思い草を引く 洋子
植木屋がゴザにまどろむ新樹光
明易しまだ使はずの今日がある 章子
目薬に空を映して五月来る
棒鱈や半年前は北の海 炎火
膝笑う急階段を蝶二頭
散歩道蜜柑の花を口ずさみ 鼓夢
夜来雨上がりて今朝の新樹光
新樹光岬かげより海賊旗 豊春
もののけの蠢く如く谷若葉
様々にわが道照らす新樹光 一煌
草若葉利休鼠の雨寂し
我が影をすべて被いし新樹かな 遊石
子等すべて口あけて見る鯉のぼり
ドクダミが草むらに湧く日暮れ時 余白
鯉のぼり泳ぐ場所無き仮住まい
数多なる微塵の金魚孵りけり 雲水
葉桜は山の一樹に戻りけり
陽炎や聴けば聞こゆる風の音 一煌
雨あがり波間の上に春の虹
津波訓練警報宙返りする初燕 薪
フライパン捨てに出ようか朧の夜
囀りを耳もとで聞く目覚かな 遊石
木蓮のつぼみに誰も眼もくれん
春風と三分あるけばスーパーなの 章子
花冷やもの思ふ日の文机
大空に包まれて山笑いおり 炎火
土中より一斉に春福島や
静けさの戻りし町や花は葉に 稱子
白蓮の散りゆく時のスローモーション
柏餅求め行くこの坂が好き 洋子
誰か来て筍菩薩掘りてほし
ガレージのシャッター潜る初燕 歩智
寄りそうで寄らぬ流れの花筏
初燕会議の窓へ白き腹 豊春
花五ミリ白青確とあさしらげ
蜘蛛の子も隠れる春雷軒を借り 余白
桜とは咲いて散っても無窮かな
あやふやなきのめとこのめ木の芽和 雲水
朧夜に探すおもろい朧の句
緊急の連絡先は春の空 洋子
すみれ咲くきらりはらりと雨乗せて
春夕日まだ歩けますありがとう 遊石
山笑う春夏秋冬生ビール
隠れ宿全室灯り山笑う 豊春
水温む綿飴の雲象となる
陽炎や子ら笑いあい縺れあい 薪
フランスパン夫が焦がしむ西行忌
引く汐にきらきら光るさくら貝 一煌
ひとひらの花に酔ひたる酒一合
春嵐フランケンシュタインの影 炎火
献立のいの一番にふきのとう
月は満ち花いまだなし西行忌 歩智
乾杯は友ありてこそ花だより
揺れうごく今日の心に春の風 章子
入日いま山近づけて桜かな
白蝶が潮見坂道上り行く 余白
白梅と白木蓮の競い合い
触れもして芳しきかな御所の梅 稱子
春荒れの烟るがごとし箱根山
桃の木を植えて偲べり犬供養 雲水
帰したくなき友帰り西行忌
春めくや水面に挑む二羽の鳶 豊春
初島の灯影煌めく実朝忌
夜回りの鐘引き返す峠道 薪
雛の夜の鏡に知らぬ女居り
色の無く音無く寒の明けにけり 稱子
誕生の記念の梅のほころびぬ
極楽の入口で覚む春炬燵 章子
墨田川渡りて求む桜餅
ゆるゆると体ゆるめる春の旅 洋子
雛飾るLED(エルイーデイ)に替えようか
梅林や地球と同じ星は在る 炎火
立春や建設株に目を通す
春めくやウエイトレスの作り声 鼓夢
近づけば松枝に吹ぶく別れ雪
前向きに生きて冷たき春の風 遊石
ベルト穴一つゆるめて春隣
早起きに夢か現か雪の中 歩智
朗らかに子等の声あり雪の朝
梅白しうつろう風情今昔 一煌
立春の重き雪かな陽の光
残雪が陽なかで光流れ出す 余白
沈丁花雪の薄絹美しや
一秒も狂わぬ時計梅の花 雲水
一片の降らす雪もうありませぬ
寒林をけものの如く突き進む 豊春
寒林を透けて現る大甍
湯の町の路地は寂れて蜜柑売る 薪
初買は遠近両用眼鏡かな
ねんごろにみがきし墓のしめかざり 歩智
きのうより長いぞ今朝の霜柱
お正月雑魚寝の中に猫二匹 炎火
正月やグローバル化のスポンサー
炭はぜる音に親しむ夕べかな 稱子
小春日や時計の音とまどろみと
掻かされし家内の背中大寒し 遊石
羽子板の音はすべてをぬぐいさり
元朝や仮なる命夢幻なり 章子
大寒や連れ戻したし魂を
冬椿活けるつめたさ寒の入 一煌
大寒やかげの花さく雪道に
北風吹くや表日本は真澄み空 洋子
大寒や凛と寄り添う盲導犬
特養の入居叶いて今朝の寒 余白
春を待つおいらは末期高齢者 雲水
大寒や胸を開けし観世音
そちら鍋こちらビビンバお達者で 遊石
内孫も外孫も皆コート着て
冬の窯積み重なりし方眼紙 炎火
故郷は日帰りの距離師走かな
冬服の電車に混じる半ズボン 豊春
光る海小舟漂う年の暮
年の瀬や独り岩風呂指鉄砲 鼓夢
指ほどの間引きし大根の辛みかな
研ぐ磨く掃く拭く洗うも年用意 稱子
冬バラの棘に怒りのあるごとし
皺くちゃの顔が機敏に松手入れ 洋子
まゆみの実窯焚き煙にまかれおり
笑ふ時独りと思ふ冬の夜 章子
平和主義貫く父のインバネス
時間という魔物を食べて毛糸編む 薪
朽野に灰釉厚き窯の肌
忘年会終りて月の青さかな 歩智
時雨るるや高速道の二分間
電飾に犇めく街や年の暮 雲水
年の瀬の犬と歩いているところ
老犬の目穏やか柿をむく 洋子
夜長し羊が先に寝てしまう
秋麗喪服きりりと若き嫁 豊春
山育ち鰯の頭喰えと言う
早生蜜柑香りの飛沫顔に浴ぶ 薪
人形にビロードの服秋深む
ワイン抜く月おぼろなり指おぼろ 章子
鰯焼く住所不定の猫の来て
大樟の落ち着き払う秋祭 歩智
源氏名は櫻と申し柿落葉
約束が枯葉のごとく散りゆけり 遊石
鰯干す網代の女の白き指
落葉掃く明日は今日の倍返し 炎火
鰯雲午後から曇後小雨
息切れの螺旋階段柿日和 正太
義歯なれど蜜のしたたる熟柿かな
ひこ鰯指で捌いて酢醤油に 空白
秋となり栗も御芋も本もよし
風生るる風に任せて秋の蝶 稱子
葬式のはなし諤諤温め酒
団栗を拾う少年時代を拾う 雲水
死んだなら忘れておくれ女郎花