夏の波バッキンガムを崩しけり 炎火
平面図だけで建ちけり蜘蛛の家
瘦せ裸十針くっきり手術痕 豊春
坪庭の草の匂いの夏座敷
片蔭やエホバの布教師佇めㇼ 薪
夏雲の湧き立つ彼方父母の墓
平穏の大地失せゆく油照 稱子
日盛りの町一瞬の無音かな
年毎に縮む身丈や盆灯籠 侠心
立ちんぼの果ての至福やトリス・ハイ
身を捩る鮑哀れや献杯す 海人
はたた神夜更けの街を支配せり
峯雲と竿いっぱいの体操着 鼓夢
梅雨明けを待てぬくま蜩あぶら蜩
戴きし茗荷きざみて揖保乃糸 歩智
太陽に向かぬ向日葵そだち過ぎ
みどり葉に守られ紛れて実は育つ 余白
梅雨明けの知らせが届き五時起床
時計草耳を寄せれば母の声 章子
サングラスお世辞の言へるひと日なり
クロワッサンつまみたくなる夏の月 洋子
振り向かずチャレンジのみの夏の旅
絞られてタオルは汗を滴らす 雲水
いつまでも裸の子なり風邪引くぞ
タカサゴユリ(高砂百合)