楽しみをまず書き入れて初暦 さくら
たっぷりと街並濡らせ冬の雨
亡き母へ空に向って初電話 洋子
女正月ひとりトランプ占いす
さあ今朝もワルツの如く掃除かな 光子
手短かに遠慮もありや初電話
初つららワクチン打つか打つまいか 炎火
心拍の音ばかりなり雪の夜
ままならぬ事はさておき福笑い 凛
「たんと雪積もっちょるよ」と初電話
春糸に編み針絡むタンゴの足 薪
道具屋にこけし林立小正月
東雲を赤く染めつつ初日の出 イヨ
龍のひげ光る瑠璃色抱きしめて
春隣診察室の聴診器 豊春
陽の落ちて行方定めぬ寒鴉
雪降れば子供に成って遊びたき 沙会
公園の水辺に鳴けり夕千鳥
荒星も夜空の縁にしがみつき 鯨児
ほんのりととぼとぼの先の冬障子
マスクして挨拶交わすあなた誰 パピ
季の語よりはずされそうなマスクかな
メールして初電話して少し呑む 裕
聞き役なるばかりかな初電話
初電話不在着信赤い文字 歩智
目借時蒟蒻踊る鉄鍋で
飛行雲曲がることなく冬の空 余白
枇杷の花人目を惹かず庭の隅
世界中何はともあれ年明くる 稱子
初日の出誓い決心持たずおく
目が覚める堀文子絵のカレンダー 鞠
初釜や静寂の釜と花びら餅
メールして初電話して少し呑む 裕
聞き役なるばかりかな初電話
初電話孫に元気をもらいけり 貴美
二メートル離れて祝う新成人
湯豆腐やモダンジャズからバラードに 雲水
噴き上がるマグマの余熱初山河
梅一輪一輪ほどの暖かさ 嵐雪