湯豆腐に鶯まだか問うており 裕
蒸蛤とぶっきらぼうな目玉焼き
列島をゆさぶりながら春一番 炎火
春一番オットセイ族蠢きぬ
料峭や仄かに草の匂ひあり さくら
早春賦ハモった頃の若かりき
春一番革靴ステッキ濡れ布巾 豊春
春一番大島初島歪みけり
陽の匂ひ残したままの毛布かな 沙会
料峭やブランコ一つ揺れもせず
歩む季も踵を返す余寒かな 鯨児
冬の果て何やら散るや死の都
お互いに生き延びましょう山笑う 稱子
春愁や息でしめらせ眼鏡拭く
料峭也窮屈退屈痩我慢 凛
料峭や他人のやうなパスポート
門前の沈丁花咲きカラス鳴く 空白
老人臭初めて感じた冬の風呂
窓ガラスぴかぴかにして春が来た 洋子
草萌えや和菓子抹茶でもてなさん
料峭や電車まだ来ぬ無人駅 貴美
ポリバケツ転がって行く春一番
どこまでも送ってくれる春の月 歩智
蕨摘むころんでもころんでも
風光る水切り石の飛びきりし 薪
封筒に点字ふつふつ梅咲けり
取れ立てを鍋一杯にひじき煮る パピ
光る風長い長い影作り
鴉の巣小枝落とすあわてんぼう 一煌
春一番ドスンと幹騒がしや
料峭や電車まだ来ぬ無人駅 貴美
ポリバケツ転がって行く春一番
だんご喰うずつなしきめて春炬燵 光子
立春や白髪染めたら出かけよう
人影のまばらなる街春浅し イヨ
蕗の薹鼻歌交じりに一つづつ
春一番合格絵馬を嘶かす 雲水
探梅や縄文系の黒き髪