(むしはまぐりと ぶっきらぼうな めだまやき)
蛤は、春に身がふっくらと肥え、旬を迎える。二枚の貝は、末長い夫婦の縁(えにし)の象徴とされ、婚礼や雛の節句、貝合せなどに用いられる。平安時代には、薬入れとしても使われた。吸物、蒸し物、蛤鍋、焼蛤として食卓に上る。将棋や碁などで使われる「その手は桑名の焼蛤」や西行の「今ぞ知る二見の浦の蛤を貝合はせとておほふなりけり」が有名
さてこの句、蒸蛤と目玉焼きという取り合わせが、ちぐはぐで可笑しい。一方、この句の目玉は、何と言っても「ぶっきらぼう」だろう。「ぶっきら棒」とは、ぶった切った棒の意から、物の言い方や挙動などに愛想がないことをいう。目玉焼きは、美味しいが愛想のない朝食の定番であり、蒸蛤は、味噌汁や吸い物にも良いが、何と言っても酒の肴に合う。
貝には、牡蠣、赤貝、帆立、浅利、蜆、バカガイ、色々あるけれど、古来から、やはり蛤が一番上等かもしれない。
サクラソウ(桜草)