社会を見て、聞いて、感じる。

人生そのものがフィールドワーク。

5月6日(土)

2017年05月14日 13時22分35秒 | 2017年

  6時起床。身支度を整え、6時半過ぎに家を出る。今日は、SLみなかみ号に乗りに行く。

  品川駅7時10分発の高崎線高崎行きに乗車。所要時間はちょうど2時間。車内で、朝食に品川駅で購入した天むすとおにぎりを食べる。恥ずかしながら天むすというものをこれまえ食べたことがなく、「どう考えてもまずいに決まってる」と思い込んでいたのだが、食べてみると案外美味しかった。天丼がおにぎりになった感じなんですね。ただ、朝から食べるものかと言われると、難しいところだ。

  9時10分に高崎駅に到着。2番線の奥にある留置線に、既にSLが止まっていた。今回のSLは「D51」という、おそらく日本で一番有名な型の蒸気機関車で、実際に日本国内の蒸気機関車の中で最も多く生産されている。「デゴイチ」という愛称は、鉄道マニアでない人にとっても馴染みのあるものだろう。元々は貨物牽引用として活用したようにパワー(牽引力)に優れているため、勾配の多い上越線を走るにはもってこいである。機体はそれほど大きくないのに、内に秘めているパワーはすごいのだ。

  しばらくすると、今度は客車がDE10型ディーゼル機関車による推進運転(後退運転)で入線してきた。多くの人はSLのほうに集まっているので、ディーゼル機関車はゆっくりと見ることが出来る。DE10型は、運転席が横向き(線路と平行)に設置されている。車両の入れ替え(接続や切り離し)が頻繁にあることから、このような構造になっているのだろう。しかし、通常の運転は少しやりづらそうだ。

先頭の客車に乗っている運転士さんはもしもの場合に備えてブレーキを握っているだけ。

実際の運転は最後方の機関車の運転士さんが行っている。これが推進運転。

  ドアが開くと同時に車両に乗り込む。12系の客車だ。量産されている車両なのでそれほど人気はないが、今となってはこの車両に乗ることも貴重な体験だと思う。最近の車両では、こんなにふかふかなシートには座れないし。

  9時56分に、快速SLみなかみ号は高崎駅を発車。たくさんの道行く人たちがこちらに手を振っている。SLならではの光景だ。しばらく走るとすぐに田園地帯に入り、風向きの影響か前方から黒煙がどんどん流れてきた。これもSLに乗っていないと見られない。

車内検札のハンコもSL模様。

駅のホームでミニ団扇が配られていた。

  渋川駅で、機関車のメンテナンスのために30分ほど停車する。この間にSLの前での撮影会が開催され、行列が出来ていた。やはり、SLの人気は高い。ほとんどの乗客がホームへ降りて、SLの周囲に集まっていた。

運転席をこれだけ間近で見られるのは嬉しい。SLの運転は難しそうだ。

  渋川駅を出ると、徐々に山あいを走るようになり、勾配も急になってくる。D51の力の見せ所だ。この頃から、車窓もどんどん魅力的になってくる。また、車内ではスクラッチを使った抽選会が開催された。当たりの確立は10%。残念ながら、私ははずれ。ちなみに、当たると缶バッジがもらえるそうだ。

  定刻通りに水上駅へ到着。着いてすぐに駅を出て、少し離れたところにある転車台へ向かう。大半の乗客が同じように歩いてくる。ここで、帰りの運転に向けてSLの方向転換が行われるからだ。転車台の大きさはSLとほぼ同じで、きちんと載せて回転させるためには細かな運転が必要そうである。その様子をこれだけ近くで眺められるのはありがたい。SLの息遣いを間近に感じることが出来た。

 

SLが後退しながら転車台に入ってくる。

最後、しっかりと載せるために細かな調整が行われる。

無事に載りました。

いざ、回転開始。

無事に回転終了。

再び後退しながら転車台を後にする。

今度は、メンテナンス設備のある留置線へ入ってくる。

ここで水の補給や設備のメンテナンスが行われ、帰りの運転に備える。

  帰りの電車まで約1時間。何かを食べるか周辺を散策するか迷い、結局後者を選ぶ。駅前通りを突っ切って奥へ入ると、すぐに利根に出る。川沿いでは、山桜がとても綺麗に咲いていた。

  水上駅13時14分発の上越線新前橋行きに乗り、渋川へ。

  渋川駅から歩いて5分ほど行ったところにある「小竹焼饅頭総本舗」へ伺う。もちろん、焼まんじゅうが目的である。昼食を食べていなかったので、一緒に肉入り焼きそばも注文した。焼まんじゅうは期待通りの美味しさ。出来立て熱々で、もっちりとした食感と甘辛く香ばしい味だ。焼きそばも麺がもちもちで美味しかった。また、最後に我慢できずにあん入り焼まんじゅうも追加注文した。あん入りも美味しいが、甘辛さや香ばしさが若干あんに負けてしまっているような気もする。どちらか片方を選ぶとするなら、普通の焼まんじゅうだろう。

  渋川駅へ戻り、14時53分発の特急草津84号に乗り、上野へ。かつて常磐線特急のスーパーひたち号として活躍していた651系という、私が個人的に好きな車両で運行されている。今回は、奮発してグリーン車を購入した。この車両のグリーン車は1+2席の座席配置なので、同じグリーン車でもお得感がある。

  夜からは、秋葉原で妻と友人夫婦と4人で食事会。開始時間が遅かったことに加えて、向かう途中でスマホの電池が切れて会場がわからなくなり、私だけ合流が遅れてしまったため、あまりゆっくりと話をすることは出来なかった。

  日付が変わる頃に帰宅。このゴールデンウィークは、鉄道オタクとしての活動が活発だった。原因としては、久しぶりに時刻表を買ったことがある。久しぶりに見ると新しい発見がたくさんあって、学生時代は思いを馳せるだけだったのが、少しはお金が自由になるようになった今、気軽に「じゃあ行ってみるか」と思えるようになってしまった。妻からすると、「時刻表を買うことを許したのが間違いだった」そうである。


5月3日(水)

2017年05月05日 18時15分06秒 | 2017年

  6時起床。今日は、日帰りで乗り鉄旅に出掛ける。こそこそと寝室を出て、妻を起こさないように身支度を整える。

  7時前に家を出て、京浜東北線で東京、上野東京ライン(高崎線)で大宮へ向かう。今日は、大宮駅始発の臨時快速リゾートやまどり藤祭り号に乗る。リゾートやまどり号は、JR東日本が群馬県を観光するためのリゾート列車として開発(正確には旧型観光用車両をリニューアル)したもので、そのため名前に群馬県の鳥である「やまどり」が付されている。通常は、週末や今回のような連休に吾妻線(草津方面)や上越線(水上方面)で運転されている。そんなリゾート列車が、このGWには栃木県足利市の「あしかがフラワーパーク」で藤祭りが開催されているということで、両毛線を走るのだ。但し、この列車はあくまで本来は群馬県観光用、というわけで、最短ルートの東北本線経由ではなく高崎線経由で両毛線に入るダイヤが組まれている。ちなみに、この列車の終着駅は佐野だが、あしかがフラワーパークの最寄駅はひとつ手前の富田駅である。富田駅は構造上長く列車を留置できる余裕がないことから、終着駅には出来ない(のだろう)。

  この列車の特徴は、リゾート列車として必須ともいえる窓の大きさはもちろん、展望室や子どもが遊べるキッズルーム、畳のあるミーティングルームなど自席以外にも楽しめる空間が用意されていることや、各座席の居心地の良さである。特に座席に関しては、全車両が1+2席の構造になっていて、座席幅は60cm、前後のシートピッチも120cm以上と、いずれも新幹線のグリーン車よりも広く設定されている。実際に座ってみると、身長178cmの私でも、前の座席に当たることなく完全に足を伸ばすことが出来た。これは素晴らしい。

  列車は定刻通り、大宮駅を8時14分に出発。私の席は、最後尾車両の更に最後尾にある1人座席。すぐ後ろが展望室だ。大宮を出ると、上尾、桶川、鴻巣、熊谷、深谷、本庄、高崎、新前橋、前橋と、快速らしく比較的多くの停車駅を経て両毛線に入る。高崎線はもちろん(という言い方は失礼か)、両毛線に入ってからも、正直なところこれといって特別な景色が見られるわけではない。地方都市と田園風景の繰り返しだ。しかし、それもまた落ち着きがあって良いものである。

  終点の佐野駅には、10時33分に到着。一旦駅を出て、再度入り直す。せっかくなので終点まで乗っただけで、目的地はひとつ戻った富田駅なのだ。

  佐野駅から乗った10時46分発の上り普通列車が、乗り込むのを躊躇するほど大混雑していた。今振り返ってみても、よくあの車両に身体をねじ込めたものだと思う。乗車は1駅分(6分)なのでそれほど大変ではなかったのだが、今度は富田駅に着いたところで降りるのに難儀した。ホームのスペース以上に、降りる人がいるのだ。更に、改札の外へ出るのにも大行列。Suicaのタッチ機が1台(臨時改札を含めても合計2台)しかないのだ。私は特に急ぐわけでもなかったので、10分ほどホームで時間を潰してから外へ出た。それでも、駅の外には人が溢れていた。藤祭り、おそるべし。

  多くの方々と一緒にぞろぞろと10分ほど歩いて、「あしかがフラワーパーク」に到着。ここまでの大混雑に加えて、入場料1,700円というぼったくり価格(この時点ではそう思った)に一瞬引き返そうかと思ったが、せっかくここまで来たのだからと気を取り直してチケットを購入する。園内も人は多かったが、敷地が広いのでそこまで混雑した感じはせず、ゆっくり散策することが出来る。紫藤はちょうど今が満開らしく、陽の光を浴びて綺麗に輝いている。これは、思っていたよりはるかに素晴らしい。また、藤以外にも綺麗な花がたくさん咲いていて、特にネモフィラの愛らしさが印象的だった。1周回りきる頃には、入場料の値段はむしろ安く感じられた。

  最後に、藤ソフトクリームを食べる。どうせ色だけでせいぜい少し香りがするくらいのバニラソフトクリームなんでしょ?と思うことなかれ。おそらく多少好き嫌いが分かれる味だとは思うが、藤の香りがしっかりしていて私は結構好きな味だった。

  富田駅へ戻り、12時34分発の上り普通列車に乗り、桐生へ。桐生に何か用があるわけではなく、帰りに乗る臨時快速列車の始発駅が桐生駅だという理由だけでの移動だったのだが、結果的にこれは大正解だった。こんなことでもなければ、桐生駅の周辺を散策することはおそらく一生なかったと思う。

  桐生駅の南口を出て、何となく歩いている内に見つけた「鳥亀食堂」が気になり、入ってみる。大将と女将さんの2人で切り盛りしている、2人掛けテーブルが3つあるだけの小さな食堂である。しかし、一般的な食堂ではなく、鶏料理の専門店だ。注文は、メニューの一番上に書かれていたささみフライ定食と、やきとり。出されたささみフライを一口食べて、驚かされる。とにかく、みずみずしいのだ。ジューシーという表現では少し違う、”みずみずしい”と言うのがぴったりくる味。ささみって、こんなに美味しいものだったのか。「こんなにみずみずしい鶏肉を食べたのは初めてです」と言うと、女将さんはにっこりと笑った。この笑顔から私は、嬉しいという感情だけでなく、それがうちの売りなんだという誇りのようなものを感じ取った。平焼きのやきとりは、炭火と香ばしさとさっぱりめのタレの味が、お肉の食感、旨みを引き立たせていて、これもまた美味しい。ご飯、お味噌汁、付け合わせも、丁寧に作られているのが伝わってくる。なんだこのお店、すごいじゃん。「ありがとうございました」と深々と頭を下げてくださった女将さんに、改めて「本当に美味しかったです」と声を掛ける。ここには絶対にまた来ることになるという確信を持って、扉を閉めた。

  本町通りに出て、本町六丁目商店街を歩く。多くの地方都市がそうであるように桐生市の中心市街地も桐生駅周辺ではなく、この商店街も駅から歩いて10分ほどの所にある。ゴールデンウィークだからだろうか(そうであると思いたい)、多くのお店はシャッターが下ろされていて、歩いている人もほとんど見かけない。

ちなみに、この時点で実際に歩いていた場所は下記「現在地」の線路を挟んだちょうど反対側、本町六丁目の付近である。

大通りから1本奥へ入ると、またなかなか乙な雰囲気。

  商店街の中で見つけた喫茶店「モリムラ珈琲店」で休憩。優しいマスターと奥様がやっているこじんまりとした喫茶店である。生絞りのオレンジジュースとクリームあんみつを注文。オレンジジュースには自分で甘さを足せるようにシロップがつくのだが、そのままでもオレンジの甘さが十分にあって美味しい。クリームあんみつはフルーツたっぷりで、あんこもずっしり濃厚。おそらく、あんこは手作りだろう。居心地も良く、ゆっくりと本を読むことが出来たこともあり、予定の時間をオーバーして滞在した。

  桐生駅を経由して、今度は駅の反対側の末広町通りから本町通りを歩く。本町通りのこちら側には歴史的建造物が点在していて、散策にはもってこいの場所になっている。特に、「有鄰館」という、かつては酒や醤油、味噌などを醸造していた矢野商店の蔵群が印象的だった。現在はほとんどの蔵が展示場やイベントスペースになっているようで、今日もいくつかのイベントが開催されていたようだ。

この時点で実際に歩いていたのは、駅から末広町通りを歩いて下記「現在地」を通り、線路を背にして本町通りを進んでいく(右)方向。

末広町商店街。

桐生中央商店街(本町通り)。

桐生信用金庫。

1829年創業の老舗鰻屋「泉新」。

有鄰館の正面にある現在の「矢野商店」。

  散策中にどうしても気になるお店があり、お腹は空いていないのだが、思わず入ってみる。お店の名は、「ほりえのやきそば」。桐生や足利地域のご当地グルメ「ポテト焼きそば」の有名店らしい。焼きそばのメニューには普通と肉入りがあって、いずれにもポテトがついているようだ。私が注文したのは、普通の焼きそばとラムネ。味は素朴であっさりとしたソース焼きそばで、ポテトとの相性も良い。お店そのものの懐かしい雰囲気も含め、西新井大師にある「かどや」に似ている。地元にこういうご当地グルメがあるというのは羨ましい。

  桐生駅に戻り、17時12分発の快速足利藤まつり4号に乗る。185系特急車両で運転される臨時列車で、これに乗るのが私の今日一番の目的である。全車指定で指定券は全て売り切れとなっているが、大半の乗客は先ほど行ったあしかがフラワーパークの最寄駅である富田駅から乗車してくるので、桐生を出るタイミングでは車内はガラガラだ。

  予想通り、富田駅から車内は満席になる。私が下車する品川までの所要時間は、約2時間20分。当初は終点の大船まで行って引き返そうと思っていたのだが、持ってきた本を全て読み終えてしまったので、真っ直ぐ帰ることにした。

  20時過ぎに蒲田へ戻り、妻と待ち合わせて家の近所の焼肉屋「海山」で夕食。妻は今日、友人たちと代々木公園でピクニックをしたそうで、少し日に焼けていた。そんな妻の姿を見て初めて、そういえば自分もそこそこ日焼けをしていることに気付く。そういえば、今日は日差しの中をかなり歩いた。万歩計を見たら、20,000歩を超えていた。さすがに足もパンパンになっている。


4月29日(土)

2017年05月04日 08時14分05秒 | 2017年

  6時起床。大浴場で汗を流し、身支度を整える。露天風呂に出たら思ったよりも寒くて、やっぱり東京とは違うなと実感させられる。

  朝食は、やはりお米が美味しかった。新潟ではどうしてもお米への期待値が高くなってしまうが、迎える側としてはなかなかのプレッシャーだろう。新潟産こしひかりを使わないわけにはいかないだろうし。

  宿の方に名立駅まで送迎して頂き、8時24分発の普通列車に乗って糸魚川へ。普段、東京の10両とか15両の電車に慣れているせいか、1両編成の列車を見ると何だか可愛らしく感じる。

  糸魚川駅からタクシーに乗り、「フォッサマグナミュージアム」へ。ここは、『糸魚川を代表する美しい鉱物「ヒスイ」や日本列島が誕生した際の大地の裂け目「フォッサマグナ」などをポイントに、地質の時代経過に沿って地球が育んできた自然環境や資源の恵み、また、その一方で人々の暮らしに脅威となる地震や火山、地すべりなどの自然災害について学ぶことのできる』博物館である(HPより抜粋)。私自身、石や地質学への興味はほとんどないのだが、仕事でお付き合いのある企業さんがこの施設と関係があり、何度か話に聞いたことがあったので、寄ってみることにした。そして、これが予想外に面白かった。翡翠だけでなく、天然の金や銅、硫黄といった様々な鉱物が見られたり、日本列島の成り立ちの経過を迫力ある映像で説明してくれたり、初心者でも十分楽しむことが出来る。

翡翠がたくさん展示されている。

3つの翡翠が連結している珍しい状態。

3億年前のサンゴ礁の様子が再現されている。

日本列島の成り立ちがわかりやすく解説されている。知らなかったことばかり。

  バスで糸魚川駅まで戻り、市役所の隣にある「糸魚川歴史民俗資料館」(相馬御風記念館)へ。ここを訪れるのは当初の予定にはなかった。というよりも、存在自体を知らなかった。しかし、帰りのバスの車内放送で「相馬御風記念館」の存在と、相馬御風が早稲田の校歌「都の西北」の作詞者であることを知り、興味を持った。館内は思ったよりも広く、相馬御風の経歴や業績を詳しく知ることが出来る。随分と多才な方だったようだ。また、彼の作詞した楽曲のレコード音源を(カセットテープで、だが)聴くことも出来る。もちろん、「都の西北」を聴いてみた。私自身、それほど愛校心のあるほうではないと思うのだが、それでもこの曲を聴くと心躍る感じがする。また、正式な音源で聴いたのは初めてだったので、「こんな前奏だったんだ」とか、「案外ペースがゆっくりで重厚感あるな」というような気付きもあった。ただ、音楽を流すと館内に響き渡ってしまうので、受付の方々はおそらく私が早稲田の卒業生だとすぐにわかっただろう。だから、帰り際は少し恥ずかしかった。


  駅の反対側(日本海側)に渡り、昨年末に大規模火災が発生した地域を訪れる。報道などで火災の様子は目にしていたが、実際に現場を歩いてみると、非常に広範囲に火が及んだことがわかる。1軒の出火元から、こんなに広がるものなのか。現在はがれきの撤去も終わり、一帯はほとんど更地になっている。小さなお店や住宅がひしめきあっていた地域だと聞いていたので、火災前の様子を想像してみようとしても、出来ない。一方で、真っ黒になった木が立っていたり、建物の残骸が一部そのままになっていたり、火災の爪痕ははっきりと残っていた。

  海沿いの展望台に上る。この展望台からの景色を眺めると、糸魚川が海と山に囲まれた街であるということがよくわかる。

  駅前から15分ほど歩いて、「すし活」で昼食を頂く。快活で優しい大将が握ってくれるお寿司屋さんである。注文は、地魚のおまかせ握り。ここでは、魚の種類を書いたメモを頂けるので、自分が何の魚を食べているのかきちんと把握することが出来る。写真リストも見せてもらえるので、よりイメージしやすい。お寿司はどれも美味しくて、やっぱり魚は白身だなーと思わされる。大将とのお話も楽しくて、魚に関する質問をするとわざわざ実物を見せて下さったり、サービスでホタルイカやタコの頭(身)を出して下さったり、本当にホスピタリティに溢れるお店だった。

ドロエビ。甘くてトロトロな味だが、見た目は案外普通だ。

ホタルイカ。味噌の味が美味しくて印象的。

タコ。足と違って、しゃりっとした食感が少しあって、美味しい。

  糸魚川駅に併設されている鉄道模型コーナーに立ち寄る。ここでは、30分500円で模型の運転が出来る。しかも、各車両の先頭にカメラが設置されているので、運転席からの様子を映像で見ながら運転することが出来るのだ。使われている車両にもこだわりがあるようで、地域に関連のあるものが多く配置されていた。これは、楽しい。

  糸魚川駅13時10分発の大糸線普通列車南小谷行きに乗る。昨日に引き続き、車内はガラガラだ。ボックスシートで足を伸ばしていたらそのまま寝てしまい、気付いたら外では雨が降っていた。

  雨の降る南小谷駅で、14時22分発の特急あずさ26号に乗り換える。先ほどの普通列車同様、車内はガラガラ。私の乗った自由席の車両には、私以外に誰も乗っていない。さすがに途中駅からポツポツと人が乗ってきてくれたのでほっとしたが、さすがに車内に自分しかいないというのは落ち着かない。

  定刻より少し遅れて、16時前に松本駅に、到着。ここからは、カフェ巡り(30分×3本勝負)に挑む。

  1軒目は、松本駅近くにある「プチカフェ・アリス」。店頭の看板に書かれている「ビスケットケーキ」が気になった。チョコレートのビスケットケーキと珈琲を注文。ビスケットケーキは食べて納得、スポンジ部分にビスケットが使われているのだ。それが良い食感を出していて、アーモンド入りのケーキに似ているようにも思えるが、それともまた一味違う美味しさがある。

  2軒目は、中町通りの路地奥にある「cafe chiiann」。お洒落で落ち着いた雰囲気のカフェである。注文は、オリジナルティーとスコーン。一口食べて、スコーンの美味しさに驚かされる。ふんわりサクサク、というとありきたりな表現だが、食感の良さとほのかな甘さ、香ばしさが絶妙なのだ。更に、苺ジャムも絶品。これまで食べたスコーンの中で、ぶっちぎりに美味しい。紅茶も雑味のない純粋な味と香り高さがあって美味しかったし、このお店には参った。

  3軒目は、田川を渡って少し行ったところにある「珈琲茶房かめのや」。今までで一番入りにくい雰囲気のカフェだが、入ってみると店内は思っていたより明るい雰囲気だし、マスターも予想外に若い方だった。注文は、近くにある「翁堂」が作っているという「たぬきケーキ」とブレンドコーヒー。たぬきケーキは昔ながらのバターケーキで、この独特の甘さが懐かしい。珈琲もすっきりとして飲みやすく、ケーキとの相性がとても良かった。また、店内には懐メロが流れており、しかもその選曲が私の好みのものばかりで、時折マスターも口ずさんでいたりと、大らかで居心地の良い雰囲気も好きになった。

  カフェ巡りを終え、18時の開店時間に合わせて「Le Kotori」へ。カウンター席に座り、シェフのおまかせコースをお願いする。前回妻と一緒に松本を訪れた際、ランチで食べた野菜の美味しさが印象に残っていて、今回夕食はここと決めていた。そして今回も期待通り、えんどう豆のポタージュをはじめとした野菜たち、魚やお肉と、本当に素晴らしい料理を堪能することが出来た。

前菜。信州サーモンを中心に、こごみや南瓜、白菜など、個性のある料理が並んでいる。

えんどう豆のポタージュ。えんどう豆をそのまま液体にしたかのような濃厚かつ優しい味。前回は白菜のスープだったが、やっぱりここのスープはすごい。

魚料理はサゴシのオーブン焼き。皮はパリパリ、身はしっとりほくほく、ほのかな塩味。

信州牛のロースト。赤ワイン味噌ソース。ソースが濃厚で、柔らかいお肉とよく合う。

デザートは、クレームブリュレを選んだ。ご馳走様でした。

  中央線上り特急の最終、松本20時00分発のスーパーあずさ36号に乗り、帰途につく。またもや車内はガラガラ。

  23時半前に帰宅。今回の旅行はリゾート列車に乗ることを目的に行程を組んだため、当初はこれといった観光の目玉はないと思っていた。しかし実際に行ってみると、見るところも、食べるところも、魅力的な出会いがたくさんあった。こういう旅も悪くない。