朝9時。実家の愛犬・サンが亡くなった。享年11歳。1カ月程前から体調が悪く、病院でクッシング症候群と診断されていた。私が最後に会ったのは2週間ほど前、体調が悪くなっていると母から聞いて、仕事帰りに実家に立ち寄った時だった。その時はまだそれなりに元気があって、ヨタヨタと歩きながらも尻尾を振りながら駆け寄って来てくれた。ここ3日間ほどは水しか飲めなくなっていて、今日の午後から会社を休んで会いに行こうとしていた矢先、母から電話が掛かってきた。
サンが我が家へやってきたのは、私が大学3年生の時。失恋で死ぬほど落ち込んでいた時に、母と弟とペットショップを見に行ったのが最初の出会いだった。彼が我が家にやってきてからというもの、彼は常に家族団欒の中心にいた。特に父が溺愛していて、「子育ても全然やらなかったのに、なんでサンはこんなに可愛がってるんだろう」と母が不思議がるほどだった。
サンは私の心の中が完全にわかっていて、つらい時や悲しい時には、それを表に出しているつもりがなくても、必ずくっついてきて離れなかった。特に、私が前職を辞めようと思い始めた時に、それまで寝ていた彼がそっと近くに寄ってきて目の前に座ってくれたのには、感謝と同時にとても驚いたのをよく覚えている。私が妻を初めて実家に連れてきた時も、普段は他人が家に来ると隠れてしまう彼が尻尾を振りながら彼女に駆け寄っていった。彼にだけは、隠し事は出来なかった。
昼過ぎに実家へ戻る。そして翌日、大阪から弟も帰ってきて、父、母、弟と私の4人でサンを火葬した。祖母も、老人ホームから一旦帰宅して、最後に会うことが出来た。最後に家族全員で彼を送り出すことが出来て良かった。彼の骨は埋葬せずに実家に置いておき、父が亡くなった時に一緒にお墓に入れることになった。それが、彼にとっても、父にとっても一番だろう。
サンと過ごした10年間は、本当に幸せな時間だった。彼と過ごした時間を私たちは決して忘れない。サン、今まで本当にありがとう。俺はまだ40年ぐらいかかるかもしれないけど、家族みんな順番にそっちに行くから、そしたらまた一緒に遊ぼうね。