7時半起床。8時前に居間へ出ると、ちょうど妻も起きてきた。え?と思う。妻は今日娘を連れて仙台の友人たちのところへ遊びに行くことになっているのだが、確か8時20分の電車に乗らなければならないはずだ。寝坊したのである。焦る妻から娘を引き受けてオムツを交換して着替えさせ、ベビーカーに乗せる。急いで身支度を整えた妻は、何とかギリギリ間に合いそうな時間に家を出て行った。
やれやれと思って寝室に戻ると、妻のスマホの充電器が置きっぱなしになっていた。すぐに外へ出て追いかけ、駅の近くまで行って追いつき、何とか渡すことができた。その後、妻からは無事に新幹線に間に合ったとラインが入った。良かった良かった。
休む間も無く今度は自分の身支度を整えて家を出る。新横浜駅前から出る羽田空港行きのバスに乗る。
保安検査を済ませ、「ISETAN HANEDA STORE CAFE」で朝食。フレンチトーストのモーニングセットを注文する。どうせ空港価格で値段の割に合わないものが出てくるのだろうと思っていたのだが、案外しっかりと美味しいフレンチトーストで驚いた。さすがは伊勢丹である。
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羽田空港10時55分発のJAL163便に乗り、秋田空港へ。この時期の東北旅行には雪の心配が付いて回るが、今日は天気も良さそうである。
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定刻どおり12時過ぎに秋田空港に到着。すぐにリムジンバスに乗り、秋田駅へ移動する。
秋田駅には13時前に到着。少し時間に余裕があったので、駅周辺をぶらぶらする。かなり昔、高校1年生の頃に初めての東北旅行で泊まったホテルが今もあって、懐かしい気持ちになる。確かあれは1月で、豪雪の中を田沢湖まで行き、その後秋田まで移動してこのホテルに泊まったんだったと記憶している。ホテルの中の料理屋さんで食べたきりたんぽ鍋の美味しさと、1人旅の高校生を気遣って色々と面倒を見てくれた仲居のお姉さんの優しさと美しさを今でもよく覚えている。
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駅で切符を買う。今日これから乗るのは五能線のリゾート列車「リゾートしらかみ号」である。それこそ高校生の頃からずっと乗りたいと思っていた列車だ。指定券はもう持っているのだが、乗車券を買っていなかったので窓口に並ぶ。当初は普通の乗車券を買って途中下車を駆使しようと思っていたのだが、私の行程を聞いた駅員のお姉さんが「それなら五能線フリーパスのほうがお得ですよ」と教えてくださり、そちらを購入。やはり、秋田の女性は優しい。それに、肌がとんでもなく綺麗だ。秋田美人は伊達じゃない。
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どちらにしようか迷った挙句に駅弁を2つとも購入し、駅構内へ入る。まずは、停車中の普通列車を見て回る。首都圏では見られない車両が並んでいるので、鉄道オタクにとってはとても貴重な時間である。
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いよいよこの旅のメインイベント、秋田駅13時53分発のリゾートしらかみ5号に乗る。あまりの嬉しさに身震いがする。
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思い切り足を伸ばしても前の座席に届かない。
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五能線に入る東能代までの間に、ひとつめの駅弁を食べる。関根屋さんの「白神そだち あわび五能線弁当」である。あわびの食感が楽しめるお弁当だ。もうちょっとあわびに厚みがあったら嬉しいところだが、贅沢は言うまい。
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八郎潟を眺めながらお弁当を頬張る。
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完全に凍っているところもある。
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東能代駅から五能線に入るために列車は方向転換をする。その停車時間を利用して車両の写真を撮る。改めて「ついにリゾートしらかみに乗っているんだな」と実感する。
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岩館駅を出たあたりで、列車が徐行を始める。景色の良いポイントでは事前に解説が行われ、徐行してくれるのだ。車窓に広がる日本海は想像以上に雄大だった。すごい景色だ。ずっと乗りたかった列車、ずっと見たかった景色ということも相まって、気持ちがどんどん高揚していく。
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徐行区間に限らず、五能線は基本的にずっと日本海沿いを走る。流れゆく海の景色を眺めながら、2つめの駅弁、花善さんの「鶏めし」を食べる。これは五能線ではなく、内陸部を走る奥羽本線の大館駅で売られている駅弁である。かつて寝台特急あけぼの号に乗車した時(2012年7月20日~21日)に、事前予約をしておいて大館駅の停車中に車両のドアのところまで持ってきてもらって食べたことがある。あけぼの号が廃止になり、もう食べる機会はなかなかないだろうと思っていたので、今日秋田駅で見つけた時には胸が踊った。
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徐々に日が暮れ始め、海の表情も変わってくる。この時間帯の列車だと、日本海に沈む夕陽を見ることができる。深浦駅で列車のすれ違いのために20分ほど停車する間に、駅周辺を少し散策する。駅の目の前に広がる海を眺めながら歩いていると、戻るのが嫌になってくる。それほど景色が素晴らしい。
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この停車時間を利用して、再度列車の写真を、今度は車内の様子も含めて撮影する。
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2号車は4人掛け個室。
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先頭車両には展望デッキもある。
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せっかくなので乗車記念スタンプを押印。
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発車時間の間際になって、反対側のホームにすれ違いのリゾートしらかみ4号が入ってくる。こちらは最新の「橅」編成だ。リゾートしらかみの2編成が並ぶというのはなかなか珍しい光景である。
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深浦駅を出ると、また徐行運転が始まる。この区間の景色も素晴らしい。夕陽に照らされた海がキラキラと光っている。その光の幻想的な美しさと日本海独特の重みのある暗さが相まって、何とも表現できない感情が掻き立てられる。これが本当の「感動」というやつなのではないだろうか。
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千畳敷駅で15分の停車時間があったので、千畳敷を散策する。岩畳の先端まで行くと、日本海の荒々しさをこれでもかと感じることができる。そうだ、日本海は重い、暗いだけでなく、荒いのだ。なんて魅力的なんだろう。
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五能線の海沿い区間の終わる地点であり、私の下車駅でもある鰺ケ沢に着いたのは17時43分。約4時間に及ぶリゾートしらかみ号の旅は、感動の連続で時の流れがあっという間に感じられた。本当に最高の時間だった。娘が大きくなったら、今度は家族みんなでこの感動を味わいたい。
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駅から歩いて5分ほどのところにある「鯵ヶ沢温泉 水軍の宿」が今日の宿泊先。チェックインをして、お茶とお汁粉を頂く。こういうタイミングでお汁粉を頂けるのは嬉しい。
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部屋で少し休憩してから、温泉に入る。鯵ヶ沢温泉は30万年前の海水が吹き出している温泉ということで、かなり塩分が多い。顔をつけるとしょっぱいし、髭を剃ったところがチクチクする。しかし、身体はとても温まり、肌もツルツルになった。良い温泉だ。
19時から夕食。幻の魚と言われるイトウが食べられるプランを選び、追加で帆立のお刺身と白子の天ぷらを注文してある。イトウは本州では絶滅に近い状態にある淡水魚で、日本では北海道のごく一部の川や沼にしか生息していないらしい。そんな魚がなぜここで食べられるかというと、鯵ヶ沢町でこのイトウの養殖に成功したからである。詳しいことはよくわからないが、イトウの養殖はかなり難易度が高いそうだ。ただ、実際に食べてみた感想を正直に言えば、珍しいことと味の良し悪しは関係ないわな、という感じである。全体的にも、料理はそれほどでもなかった。唯一、追加注文の帆立のお刺身は驚くほど甘みがあって美味しかった。また、初めて肝も食べたのだが、これも濃厚で強く印象に残った。こっちをメインで売り出したほうがいいと思うのだが。
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タラと白子のお鍋。
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焼魚は種類を選べる。今回私はメバル(左側の真ん中)を選んだ。
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右上のサーモンっぽいのがイトウ。
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帆立のお刺身。身も甘いし、肝も濃厚で美味しい。
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白子の天ぷら。その他、帆立の揚げ物や豚の角煮、イトウのお寿司などが出てきたが、写真は割愛。
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もう一度温泉に入ってから、明日の観光プランを練る。思っていた以上に選択肢があり、なかなか決められない。最終的にはいくつか候補を用意しておいて、明日起きてからの気分に任せることにした。
23時過ぎに就寝。