5時起床。今日は、日帰りでチェンライへ行く。バンコクからチェンライまでの距離は約700キロ。日本でいえば、東京・青森間の距離を日帰りすることになる。しかも、地図を見ればわかることだが、チェンライはルアンパバーンと近い。旅慣れている人からすれば、何という非効率な旅をしているんだと思われるだろう。その通りである。言い訳をさせてもらうとすれば、チェンライに行こうと決めたのは後からだったので、その時にはもうその他の行程のチケットを購入済みで、変更や払い戻しが出来なかったのだ。
5時半にホテルを出て、タクシーでドンムアン空港へ。ぼったくられるのが嫌だったので、ホテルのボーイさんにチップを渡し、タクシーの運転手さんにメーターを使うように指示してもらった。が、しかし。いざ空港に着いたところで、運転手さんが「高速に乗ったから、高速代を入れると500バーツだ」と言ってくる。メーターは230バーツだったが、運転手さんがすぐに消してしまった。高速代がそんなに高いわけがない。そうか、高速代はその都度自分で払わなければならなかった。揉めるのもありだが、今回は飛行機に遅れるわけにはいかなかったので、これも勉強代だと思うことにした。これだから、バンコクのタクシーは嫌いだ。そう考えると、日本のタクシーは外国人旅行者でも安心して乗れるのだろうな、と思う。ぼったくりや犯罪などの心配をせず、安心してタクシーに乗れるというのは、インバウンド観光に力を入れる国にとっては結構重要なことだと思う。
気を取り直して空港に入り、搭乗口近くの売店で珈琲と肉まん的なものを購入。中の具が赤く、何かよくわからない香草の香りが充満している。美味しいともまずいとも言えない、不思議な味である。
ドンムアン空港7時20分発のエアアジアFD3203便に乗り、チェンライへ。所要時間は約1時間20分。機内はほぼ満席に近かった。
空港からタクシーに乗る。今度はきちんとカウンターで定額制のタクシーに申し込んだので安心だった。
まずは、「ワット・ロン・スア・テン」へ。現地では、「Blue temple」でも通じる。私がチェンライに行こうと思ったきっかけになった、一番の目的地である。呼ばれている名の通りここは青を基調としたお寺で、お寺というよりも芸術作品に近い。中に入った瞬間の衝撃はなかなかのものである。これほど鮮やかな青色に囲まれると、普通のお寺とはまた違う意味で神秘的なものを感じる。また、柱や扉、絵など、細部にもかなりのこだわりが見られ、素直に「これはすごい!」と思えた。このお寺に仏教的な価値がどれほどあるのかはわからないが、ここに来ただけでも、わざわざチェンライまで来た甲斐があったと思う。
このお寺にはタクシーやトゥクトゥクが待機していなかったので、大通りまで出て探し、たまたま見つけた小さなトゥクトゥクに乗る。このおじさんのトゥクトゥクが来なかったらと思うと、ちょっと怖い。次の訪問地でも帰りの交通手段を見つけるのに困ったから、おそらく多くの観光客はタクシーやトゥクトゥクをチャーターして移動しているのだと思う。私のような初心者は、本当はそうしたほうがいい。
続いての目的地、「ワット・ローン・クン」に到着。別名、「White temple」。恐らく、チェンライで今一番熱いスポットなのではないだろうか。他のお寺と比べて圧倒的に人が多く、しかもタイ国内からの来訪者が多かった。
着いたはいいものの、結構雨が降っているのと、たまたま近くの食堂でカオマンガイを見つけたので、先に昼食を頂くことにする。「カオマンガイありますか?」「あるよ」「よっしゃーーー!」という会話を経て席につく。出て来たカオマンガイは、鶏肉の量こそ控えめだが柔らかくて美味しいし、ご飯にもちきんと鶏出汁の味が染み込んでいて、私が期待していたそのものだった。スープも、鶏ベースの美味しいものだ。また、ちょっぴり甘辛いタレをつけて食べるのも、パンチがあって美味しい。ちゃんとカオマンガイが食べられて、本当に良かった。
雨も弱まったので、「ワット・ローン・クン」に入る。何より、最初に見た時のインパクトがすごい。単に真っ白なお寺、というレベルではなく、その白色がとても煌びやかで、金色以上に輝いて見える。しかも、装飾もかなり緻密で、細部に目を凝らせば凝らすほど驚きがある。また、お寺に通じる橋の手前には地獄を模したような光景が広がっていて、それにも目を奪われた。なんだこの世界観は。私の想像の遥かに先を行っている。ちなみに、所々にこのお寺を制作しているチャルーンチャイ・コーシピパットさんの写真パネルが置かれているのだが、失礼ながらこんなお寺をデザインしたとは思えないような普通のおじさんだった。人は見かけによらないものだ。そういえば、先ほどの「ワット・ロン・スア・テン」(青いお寺)は、この方のお弟子さんが制作されているそうだ。確かに、色は全く異なるが、根本的な発想には近いものがあるように感じる。
この方が制作者。失礼ながら、本当か?と疑いたくなる。ごめんなさい。
再びぶち当たった交通手段問題を、休憩中のソンテオ(乗り合いバス)をチャーターさせてもらうという方法で何とか乗り切り、チェンライの街の中心部へ移動する。あまりスピードが出ないので、後ろから来た車にガンガン抜かれる。運転手さんはわからないだろうが、こちらは後ろが丸々空いているところに座っているので、結構怖い。でもまあ、乗せてくれただけでありがたかったのだが。
チェンライで最も名高いお寺、「ワット・プラケオ」へ。エメラルドの仏様が納められていることでも有名なお寺である。境内に入ると多くのお坊さんがいて、独特の空気感を醸し出している。参拝者の雰囲気も、どことなく神妙だ。このお寺がタイの人々にとって特別なものであるということが、何となく伝わってくる。ただ、個人的には、エメラルドの仏像には少し違和感があった。慣れの問題かもしれないが、やっぱり木の仏像のほうが温かみというか、何かが宿っているような気がする。
お供え物やお花も、日本では見られない珍しい形をしている。
歩いて、「ワット・プラ・シン」へ。ここはチェンライにある同名のお寺と兄弟寺だそうで、確かに向こうとお堂の形が同じような気がする。お寺の敷地が結構広く、見所も多い。私の想像を超えるような豪華な装飾がなされているところがあったりして、驚きの連続だ。また、私とほぼ同じルートで回っていたタイ人のお姉さんがとても熱心にお祈りをしていて、私もつられるようにいつも以上に丁寧にお祈りをした。タイの人のお祈りの仕方は、自然体だがとても丁寧で、仏様への敬意がにじみ出ている。
野良犬。それにしては、お行儀の良いワンちゃんだ。なぜか、私の後ろをちょこちょこと付いてきた。
チェンライでの目的地は全て周り終えたので、ここからは気軽にお散歩。街の中心に市場があって、その周囲には商店が立ち並んでいる。日本でいえば、商店街に該当するのだろうか。また、確かチェンマイがそうだったように記憶しているが、そこに近いこのチェンライも金が有名なようで、貴金属のお店が目立った。お寺の装飾を見れば、タイの人たちにとって金色という色に特別な意味があるというのは想像に難くない。
中心部にある市場に入る。入った瞬間に目の前で生きた蛙が売られていたことに始まり、虫だったり、何かわからない魚介類だったり、なかなかディープな光景が広がっていた。一応、本当に気持ちの悪いものの写真はここには載せないが、日本に帰ってから見ると「うわっ」と目を背けたくなるようなものも、現地で見ると思わず顔を近づけて見てしまうんだから、不思議なものだ。
そのまま歩いて、時計塔を見に行く。大きな交差点のど真ん中に金色の時計塔が建っている。何だこの世界観は。ちなみに、この時計塔は先ほどの白いお寺を建てたあのおじさんの設計だそうだ。ああ、それならわかるような気もする。
時計塔の近くにあるお洒落なカフェに入り、休憩。スイカのスムージーを飲む。見た目も色鮮やかで綺麗だし、何より味がスイカそのものの甘さで溢れていて、めちゃくちゃ美味しかった。私はスイカのスムージーが好きで、東南アジアを旅した際にはメニューに見つける度に飲んでいるのだが、これまで飲んだ中で今回のものが一番だと思う。
スムージーがあまりに美味しかったので、昼食もここで頂くことにする。注文は、カオソーイ。チェンマイに行った時に食べて美味しかったカレーラーメン風の食べ物で、チェンライでも食べられると聞いていたので、前々からこれを食べようと決めていた。このお店のカオソーイは、香草の利いたカレースープに柔らかめとパリパリ系の2種類の麺が入っていた。そのままでも美味しいし、付け合わせの生の玉ねぎを入れると更に刺激的な味になる。その後、ダメ押しで今度は林檎のスムージーを頂いた。これも林檎の味がそのままスムージーになっていた。これだけ美味しいなら、他のスムージーも飲んでみたかった。メロンとか。
トゥクトゥクに乗り、空港へ戻る。
チェンライ16時25分発のエアアジアFD3208便に乗り、バンコクへ戻る。定刻は先の時間だったのだが、実際に搭乗を開始したのは定刻を30分ほど過ぎた頃だった。しかし、その旨のアナウンスがあったのは定刻を10分以上過ぎた後。日本だったらありえないが、なぜか東南アジアだと何とも思わない。むしろ、30分で済んで良かったじゃんと思ったほどだ。
18時過ぎにバンコクに到着。朝のことがあるのでタクシーには乗りたくなかったので、バスで戻ることにする。このバスがまた面白かった。列を作って順番に乗るという概念がないようで、バスが到着して扉が開くと、みんな我先にとバスに乗り込んでいく。私も、一瞬面食らったものの、すぐに参戦し、何とか無事に座席を確保することが出来た。たまたま私がいた場所の近くでバスが扉を開けたのが幸運だった。車内は満席で、その人混みを掻き分けておばちゃんが切符を売りに来る。これだけ混んだ車内で、片方の手の指の間に大量のお札を挟み、反対の手で切符を作って手渡している。テキパキと簡単にこなしているが、職人技だと思う。
終点のバス停で降り、BTSに乗り換えてサヤーム駅へ。駅前のショッピングモールに入っているレストラン街で見つけた何かはよくわからない麺物屋さんで、夕食を食べる。これまた写真で見ても何かはよくわからない麺物と、アイスティーを注文。麺物は、トムヤムクン風味のとんこつラーメンといった感じの代物で、結構美味しかった。麺はいかにもレトルトな感じがするのだが、それがまたスープの味と合っている。また、ここで飲んだアイスティーが抜群に美味しかった。濃いめの紅茶に、大量の甘いミルク。かつてチョンノンシー駅で何度も買ったタイのアイスティーの味だ。最後の最後で、この味に出会えたことに感謝。
チョンノンシー駅までBTSに乗り、コンビニで飲み物を買ってからホテルに戻る。明日はもう日本に帰るだけだ。