7時起床。身支度を整え、朝食会場へ。バイキング形式の朝食はよくあるが、ここのラインナップは少し違う。地元の食材や郷土料理はもちろん、一般的な品目も既製品ではなく、それぞれに個性のある味がする。また、炙り焼きコーナーもあって、特にシシャモが香ばしくて美味しい。派手な食べ物があるとか、高級食材が並ぶとかではなくても、こういうふうに1品1品に手の込んだ料理というのは、ありがたいものである。
昨晩予約しておいたつぶめし弁当を受け取り、9時にホテルをチェックアウトする。噂どおり、良いホテルだった。またお世話になります。
二十二道路牧場案内所で受付をしてから、そのすぐ向かいにあるレックススタッドを見学する。スペシャルウィークをはじめ、マツリダゴッホやスクリーンヒーロー、タニノギムレット、今年引退した種牡馬入りしたトーセンラーなど、有名な種牡馬、功労馬が数多く繁用されている牧場である。
見学時間が午前中の1時間半に限定されていることもあって、多く(とは言っても10人くらいだが)の見学者が集まっていた。馬たちのリアクションは様々で、甘えてくる子もいれば、一定の距離を保つ子もいるし、全く気にせず草を食むことに集中している子もいる。そして、同じ甘え方でも、そっと寄り添ってくる子もいるし、鼻息荒く駆け寄ってくる子もいる。人間と同じで、馬にもそれぞれ性格や個性があるのだ。
ティンバーカントリー。アドマイヤドンのお父さん。穏やかで人懐っこい。
マツリダゴッホ。先日、産駒のロードクエストが驚異的な強さで新潟2歳ステークスを制した。マイペースな性格のよう。
ホワイトマズル。アサクサキングス、ニホンピロアワーズのお父さん。ゆったりと歩き回っては、こちらの様子を伺ったりもする。
シルポート。ホワイトマズルの産駒で、京都金杯やマイラーズカップなど重賞を制した。強力な逃げ馬としてレースを盛り上げ、ファンも多い。逃げ馬らしく気性は快活で、走って駆け寄って来るなり、私の顔を舐めたり噛んだりしてきた。私も、されるがまま。そんな様子を見て、近くにいた見学者の方が一緒に写真を撮ってくれた。ちなみに、写真の中では彼は私のパーカーを噛んで離れさせないようにしている。
トーセンラー。2013年のマイルチャンピオンシップ(G1)で優勝している。引退レースとなった去年の有馬記念では、馬券を買った。最近種牡馬入りしたばかりだから、やはり人気が高い。
タニノギムレット。自身もダービー馬だし、娘である名牝ウォッカもダービーを制している。父娘ダービー制覇という偉業である。人にはあまり興味を示さない。
ショウナンカンプ。サクラバクシンオーの代表産駒で、芝の短距離馬。高松宮記念(G1)を制している。草を食むことに夢中のご様子。
スクリーンヒーロー。ジャパンカップ(G1)を勝っている。産駒は今年で3年目がデビューしており、既にモーリスが安田記念(G1)を勝利している。好奇心旺盛だが、悪さはせず、おとなしい。
スペシャルウィーク。ダービーとジャパンカップを制し、天皇賞春秋連覇も成し遂げた名馬。そして、武豊の初めてのダービー制覇をプレゼントした馬である。堂々としていて、風格が漂っている。
続いては、昨日に引き続きビックレッドファームへ。事務所へ挨拶してから、自由に歩き回る。今日は超がつくほどの快晴だが、ちょうどお昼前ということもあって、馬たちの多くは厩舎の中にいた。
アドマイヤマックスが散髪してもらっている。しかし、結構抵抗している。
タイムパラドックス。ジャパンカップダートに始まり、帝王賞、川崎記念、JBCクラシックと、ダートG1を総なめにした馬。超が付くほど強い馬だが、見た目はとっても可愛らしい。
ロサード。去年訪れた時からの私のお気に入り。去年はかなりのツンデレっぷりを発揮していたが、今日は厩舎の中にいたからか、おとなしかった。来年はどうだろうか。
スウィフトカレント。天皇賞(秋)の2着など惜しい結果もあり、自身の重賞制覇は小倉記念の1勝に留まった(それでも十分すごい)が、異父兄弟にヴィクトワールピサがいることもあって、種牡馬として大切にされている。漆黒の馬体が日に映えてかっこいい。
アグネスデジタル。もはや説明不要の名馬。種牡馬としても良い成績を収めている。ただ、昨年もそうだったが、私のことはあまり好きではないらしい。来年はもう少し仲良くなれたらいいのだが。
ハイアーゲーム。私の一押し。産駒のコスモナインボールには馬券でお世話になった。気性が荒いというわけではないのだが、なぜか私に興奮するようで、ずっと鼻を押し当ててくるかと思いきや、今度は延々と甘噛みしてきたりする。痛くはないが、噛んでいる時の顔がちょっと怖い。
道営の星、コスモバルク。前回会った時は相当おとなしかったが、今日は元気があって甘えん坊だった。愛される馬というのは、やはり華がある。
放牧地では、まだ名前のついていない幼駒(グローリサンディの2014)が走り回っていた。父は、先ほど会ったばかりのスクリーンヒーロー。調べて見たら、1歳上の全兄(ウインオスカー)は今年の新馬戦を勝ち上がっている。私が柵のところに立っていると、駆け寄ってきてクンクン匂いを嗅いでくる。幼駒の可愛さと、競走馬としての凛々しさを兼ね備えた馬だ。来年のPOGでは、この子を指名しよう。
新冠の優駿記念館(優駿メモリアルパーク)に移動し、まずは車の中で昼食。エクリプスホテル特製の「日高つぶめし弁当」を頂く。ツブ貝だけでなく大きなホタテも入っていて、文字通りの貝尽くし。しかも、その出汁がしっかりご飯に染み込んでいた。このお弁当を予約して正解だった。
優駿記念館の放牧地で、マヤノトップガンと再会。もう結構なおじいちゃんなのだが、天気が良いからだろうか、体調も良さそうで、去年会った時よりも若返っているように感じた。この調子で、長生きしてね。
敷地の端っこでは、ミニチュアホースが放牧されていた。足の短さの割には顔が大きくて、そのバランスが何ともかわいい。しかし、顔だけを見れば、やはり馬の凛々しさがきちんと垣間見られる。
優駿記念館に入る。ここでは、オグリキャップの功績を振り返ることが出来る。昨年も来たし、今回は少し眺める程度の予定だったのだが、休憩も兼ねてソフトクリーム片手に見始めたオグリキャップのDVDにいつの間にか没頭してしまい、結局2時間近くかけて最初から最後まで見てしまった。おかげで予定は大いに狂ったが、オグリキャップという馬がいかにドラマチックな競走馬生活を送り、そして多くの人に愛されたかということを実感することが出来た。
時間の関係で、予定していたアロースタッドの見学は次回の楽しみに取っておくことにして、門別競馬場に向かう。門別競馬場は日高地方の入口に位置するので、ここで牧場地帯とはお別れである。競走馬の牧場を見て回って癒された後、旅の最後に競馬場へ立ち寄って、現実世界への第一歩を踏み出すのである。
門別競馬場は、これまで私が訪れた競馬場とは少し雰囲気が異なるところだった。競馬場というよりも、公園といった感じである。全体的に新しい施設が多くて綺麗だし、周囲に建物が全くないので広々としている。人々の雰囲気も何となくのほほんとしていて、あまりギャンブルをしに来ているという感じではない。熱くなって叫んでいるような人もおらず、時折談笑しながら淡々とレースを眺めている。
この小屋では、ジンギスカンを楽しむことが出来るらしい。さすがは北海道の牧場。
この場所に限らず、所々にストーブが設置されている。確かに、冬はとてつもなく寒いだろうしね。
スタンドもかなり新しい。
第4レースから参戦。驚いたことに、この第4レースが今日のメインレース(旭岳賞、ダート1,600メートル)である。通常は、最終の1つ前がメインレースなのだが、もしかしたら多くの人は遅い時間までいないのかもしれない。
返し馬を目の前で見ることが出来る。
みんなレースに夢中。
このレースを制したのは、石川倭(やまと)騎手騎乗の1番アウヤンテプイ。先行してそのまま押し切るという王道の競馬だった。2013年デビューの3年目の若手である。厳しい勝負の世界で戦っているとは思えないほどあどけなく、かわいい顔をしている。こういう騎手がこれからどんどん力をつけてくると、競馬はもっと面白くなってくるだろう。
良くも悪くも余計な施設がなく、食べ物屋さんも2軒しなかくこれといった物珍しいものも売っていないので、自然とレースに集中することになる。
時間の関係で、今日最後の勝負は第6レース。一昨日のばんえい競馬を含め、これまで全く勝っていない。そこで、最後は大きい当たりを狙う。1番人気が飛び抜けて強そうなので1着に固定して、2、3、4番人気を2着に、紐(3着)には私と彼女の誕生日(9月20日と7月3日)から、2、3、7、9、10番を入れて、紐荒れを狙う。
レース結果は、びっくりするくらいの狙い通り。1着が予定通り、2着も当たり、3着に3番が入った時のしてやったり感が気持ち良い。更に、配当を見てびっくり。期待通りの紐荒れ効果で、1着と2着が比較的堅かったにも関わらず、429倍もついた。最後の最後に、旅の予算の大半が戻ってきた。良い旅の終わり方である。
レンタカーを返却し、新千歳空港の「松尾ジンギスカン」で夕食。最近は北海道に来ると、毎回帰りにここのジンギスカンを食べている。安定した美味しさ。
新千歳21時20分発の最終便、JAL530便に乗り、羽田へ戻る。最後の最後で一儲けしたので、座席をクラスJにランクアップした。おかげで、快適なフライトになった。こんなに快適なら、もっと長く乗っていてもいい。
帰宅は0時過ぎ。今回の旅行は、昨年に引き続き、2回目の競馬旅行だった。昨年は、牧場で馬たちのリラックスした姿を見て、競馬場での様子とのあまりの違いに驚かされた。今年もそれは十分に感じたのだが、それ以外に感じたのは、馬にもそれぞれ個性や性格があるということである。好きな食べ物も違うし、人が好きな馬もいれば、そうでない馬もいる。なでられる場所にもそれぞれ好き嫌いがあるし、噛み方やその強弱にも違いがある。そして、そうした個性や性格は、年齢を重ねるにつれて変化する。つまり、人間と同じなのだ。そして、馬の飼育に関わる方々は、そのような違いをきちんと把握して、それに合った飼育・訓練方法を採用している。当たり前といえば、当たり前のことかもしれない。しかし、話に聞いたり、頭では理解出来ていても、それを実感するには実際に見て、触れ合ってみないとわからない。それを感じることが出来たという点において、今回の旅行もまた、新しい発見があった。