小山書店の新風土記叢書シリーズの第七編。
終戦間際の昭和19年に刊行。
当時、太宰は代表作となる「人間失格」や「斜陽」などを生み出した人気作家だったが、彼は出版社から、新風土記なる企画を受け、故郷に帰り、本書を書き上げた。
本作は太宰の異色作とされるが、それもその筈、風土記なのだ。
しかし風土記といっても、旅行記であり、歴史書であり、エッセイであり、回想日記であり、そして私小説として、色んな要素を含んだ彼の最も愛に満ちた一冊なのである。
蟹田、三厩、金木、五所川原、木造、深浦、鯵ヶ沢、小泊と、津軽半島をぐるりと三週間かけて旅行する。
そのなかで、旧友と会い、酒を飲み、観光地をまわり、酒を飲み、生家に戻り、酒を飲み、最後に幼年期の乳母の「たけ」に会い、クライマックスを迎える。
単純に「たけ」との再会は涙ものである。
我儘な作者の性格から、会うことが出来ないかに思われるも、奇跡的にドラマティックな再会。
そして、平和な無言。彼女のセリフを津軽弁で読むと、殊更に感涙。
多くの太宰作品と違って、全体的に明るい雰囲気で意気揚揚とした作者の心が伝わってくる。
何より本作はユーモラスに溢れている。これほど笑った本も珍しい。
愛する故の故郷や津軽人の悪口。おきまりの国防上ネタ。蟹田のSさんの疾風怒涛の接待。芭蕉や「ある作家」の批判。鯛の五切れの話。たけに会えない苛立ちからの宿命論。そしてラストの文章。これは最高。どれも微笑ましく読めるのである。
この作品から、太宰同様「津軽」を見直すことが出来た。
そして津軽人として生きることに誇りを持つことが出来た。
太宰の美しくも重量感のある文体に酔いしれ、物語としても楽しめる最高の作品。津軽人必読の書である。
元気で行こう。絶望するな。では、失敬。
オススメ度(本評価)・☆☆☆☆☆
終戦間際の昭和19年に刊行。
当時、太宰は代表作となる「人間失格」や「斜陽」などを生み出した人気作家だったが、彼は出版社から、新風土記なる企画を受け、故郷に帰り、本書を書き上げた。
本作は太宰の異色作とされるが、それもその筈、風土記なのだ。
しかし風土記といっても、旅行記であり、歴史書であり、エッセイであり、回想日記であり、そして私小説として、色んな要素を含んだ彼の最も愛に満ちた一冊なのである。
蟹田、三厩、金木、五所川原、木造、深浦、鯵ヶ沢、小泊と、津軽半島をぐるりと三週間かけて旅行する。
そのなかで、旧友と会い、酒を飲み、観光地をまわり、酒を飲み、生家に戻り、酒を飲み、最後に幼年期の乳母の「たけ」に会い、クライマックスを迎える。
単純に「たけ」との再会は涙ものである。
我儘な作者の性格から、会うことが出来ないかに思われるも、奇跡的にドラマティックな再会。
そして、平和な無言。彼女のセリフを津軽弁で読むと、殊更に感涙。
多くの太宰作品と違って、全体的に明るい雰囲気で意気揚揚とした作者の心が伝わってくる。
何より本作はユーモラスに溢れている。これほど笑った本も珍しい。
愛する故の故郷や津軽人の悪口。おきまりの国防上ネタ。蟹田のSさんの疾風怒涛の接待。芭蕉や「ある作家」の批判。鯛の五切れの話。たけに会えない苛立ちからの宿命論。そしてラストの文章。これは最高。どれも微笑ましく読めるのである。
この作品から、太宰同様「津軽」を見直すことが出来た。
そして津軽人として生きることに誇りを持つことが出来た。
太宰の美しくも重量感のある文体に酔いしれ、物語としても楽しめる最高の作品。津軽人必読の書である。
元気で行こう。絶望するな。では、失敬。
オススメ度(本評価)・☆☆☆☆☆