夏が来ると、父を思い出す。今年の夏は特にそうで、海のイメージも加わって海水浴の風景が甦るような気がします。
何故か、父は海が好きで、海水浴も殊のほか好きな性分でした。
勤務先が海辺にあった時は昼休みに浜まで出掛け、よくそこで時間をすごしていたようです。浜に流れ着いた胡桃や貝殻、特に蛸貝の貝殻を珍重して集めてきた事があります。テレビの上に飾って、嬉しそうに眺めていました。
白い巻貝の薄い大きな貝殻は見栄えがして、海の贈り物の宝石というに相応しい風格がありました。
白だけというのでもなく、時に少し茶色い色が入る貝殻もありましたが、それはそれで綺麗なものでした。
図鑑で調べて蛸の住処と知り、不思議な海の生き物や生態、海の世界に思いを馳せたりしました。
夏の風が吹き始めた頃から、砂浜の香りを感じるようになった頃から、殊のほか父のイメージが思い浮かびます。夏の連想のようです。
母ときたら、先日こんなことを言っていました。
「もう、この世でお父さんに会うことは無いね」
「もうこれで会うことは全然無いね。」と、
それで、私は言いました。
「そんな事無いよ、その内お迎えに来るかもしれないし、きっと、あの世でまたお母さんの面倒を見なければいけないと待っているだろうし。」
母の口癖
婚家に嫁に来たくなかった。をよく聞いていた私は、
「ずーっとお父さんと一緒にいられるから」
というのでした。
(蛸貝は、実際にはアオイガイ、カイダコとか。今も浜辺に流れ着いているのでしょうか。)