Jun日記(さと さとみの世界)

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至極単純な話の訳も無いのに

2024-12-11 10:26:35 | 日記
 それは過去のある日の出来事でした。本当にうんざりする程の回数です。私が祖母から、「お前は重たいものを背負っている」云々と、家を継いで欲しいという話をあれこれと聞かされ、その対策を私は考えて、手を打った後の事でした。対策が功を奏したのか祖母からは暫くその話が無かったので、私はホッとして落ち着いていた頃です。祖母はその日私と二人になると又家の話を始めました。

 『又か。』と私は思いましたが、前回から期間が空いていた事と、やや成長し落ち着いた気分の時期でしたから、たまにはあれこれ言わず、黙してお祖母ちゃんの話を聞いてあげよう、そんな事を考える程に私は心にも余裕が有りました。それにその頃にはもう、いざとなったら聞き流すという術を私は心得ていました。実はこれが私が祖母に対して取った対策でした。

 私は祖母に配慮すると静かに微笑みました。そうして彼女の話が私の嫌な方向へ向かうようなら、忽ち私は耳から入る彼女の言葉をシャットアウトしてしまうのです。私は準備を体制を整えました。が、祖母の話は今回直ぐに本題に入り、私が了承して直ぐに終わりました。

 今回の祖母の話はというと、現実に有る住まいとしての建物の家では無く、我が家の家の代を継いで欲しいのだ、という話でした。住まいでは無くお墓の面倒等をみる事なのだと祖母が口にするので、当時の私は真っ先にお盆の墓参りを思い浮かべました。年一回、しかも数時間の仕事だと私は思いました。そうしてその時、私は何だそんな簡単な事をしろという事だったのかと、祖母のそれまでの重たい話に対して、気持ちも明るく軽くなり、ほっと安堵を覚えました。
 
 それ迄は、「この家を継いで欲しい。」というのみの話でしたから、私はてっきり、固定資産としての建築物、建物を引き受けてくれと言う事だと思っていました。寒い年末の大掃除、冬の凍える屋根雪下ろし、その他この家の年間の諸事一般、今迄は子供の手で少し手伝っただけの物でしたが、その大変さに、私は仕事の膨大な暗雲を、自分の背に山と背負わされるイメージを抱いて来ました。その為私はこの家の世話を相当負担に思うと同時に、それら全てを背負い込んで切り盛りする事等、私には到底出来無い、引き受けられ無いと、想像を絶する重圧に感じ、家を継ぐ事は唯漠然と暗く重苦しい闇のイメージに飲み込まれる事だとのみ感じて来ました。正に祖母の最初の言葉、私が背負う重い荷物、それも山のように膨大な黒雲の如く広大に膨れ上がる不安な荷物に思えていました。

 幼少の砌です。否、私は世間一般の欲という感情に対して幼かったと言うべきでしょう。経験と目に映る物が世の全てでした。家の祭司を任される事、そしてそれが家督を相続する事、結局は住まいとしての家も相続するのだと言う事に考えが及ぶ筈も無なかったのです。私は責任が軽くなった、と身軽に思い、祖母の申し出を快く承諾しました。この時の安堵した私は芯から笑顔で祖母に微笑んだ物です。お祖母ちゃん孝行が出来る、そんな事も考えて善行を行った気持ちでした。

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