いよいよ今日は山の日。
山にまつわる話といえば幾つかあります。例えば実際に山に住んでいた時期もあるのでそれを書くこともできるのですが、山の生活といっても自然そのままというより宅地化された場所での住まいでしたから、 普段と何ら変わりのない生活です。
やはり夏、山というとキャンプ、学生時代の課外学習に見るものが多いかなと思います。
キャンプというと、真っ先にテント張りをしてその地での安住の居場所を確保するのですが、これは率先して男子がやってくれました。当初、女子の身であった私は傍観者という立場に立てる気楽さに非常に驚いたものです。本当にとても楽でした。
生徒はロープやビスなど、張り方や打ち方、取り付け方を聞いて、いざ出陣!
女子にこんなことやらせるなんてー
と、騒ぐ同じ班の女子をしり目にコンコン!私ともう一人の女子が言われた通りに杭を打ち込んでいると、男の先生とクラスの男子数人が現れて、私が手にした小槌を見ると
「小槌を渡しなさい、やったことあるのかね?」
「任せなさい」
と先生。私やもう一人の女子の小槌を取り上げて無言の内にテントを組み立ててくれました。
もう私や他の女子は見ているだけでした。
えー!、こんなでいいの?、あまりの安易さに目を疑ったほど。ぼーぜん!と立ちすくんでいました。
返って手持無沙汰でバツが悪いほどでした。
でも、違いますね、この年代になってくると先生も男子も。女子は非力、手作業は男子がするものという感じでした。
何でも自分で!の生活環境から、女子という立場の甘えられる位置の確立!
この変化にある種の感銘を受けるものがありました。
なにしろ、私の場合、男兄弟がいない長子のせいか、雪かき、雪囲い、屋根雪下ろしと始まり、車の免許を取った時には先ずタイヤの交換と、様々に父に教わりました。スコップやジャッキを使って全て手作業です。何でも自分でという重労働でした。
私が成人してからも父はこんな調子でしたから、後にも先にも、この夏のテント張り程女性という立場のありがたみをどっぷりと感じたことはありません。
班の1つ目のテントが張り上がった頃、2つ目の大テント張りを確りとした余裕を持って眺めていると、何時も目立たない男子生徒が先生と2人連れでやって来ました。今までいた先生と男子達は2人と打ち合わせ、合図をして他のテント設営へと移って行きました。
見ていると、どうやら2人だけで今度は大きいテントの設営です。
これは、大丈夫なのかしら?あんな小さい子と先生と2人だけでさっきより大きいテントなんて、と思ってみていると、
「女子も見てばかりいないで手伝いなさい!」
という言葉がけがありました。
やっぱりね、こうなるのよと私ともう一人女子が手伝いに出て行ったのですが、何と、普段背も低く力もそう無いような、どちらかというと同級生の男子からも軽んじられ、よくからかわれていたこの生徒が、楽々とロープを張っていきます。
へーぇー!すごーい!とびっくりでした。
その時、手伝おうとして近くにいた私には聞こえたのですが、
「お前凄いな!一人でも張れるな!」
「かっこいいとこ見せたい女子がいて。」
というやり取りが2人にありました。
にこやかに照れるその男子に、この言葉を聞いて先生もニヤリでした。
ここぞという風に、「頑張れよ」と先生も激励!という感じでした。
こんな生徒と先生のやり取りも、今までの学校生活とは随分違うと感じたものです。
さて、こんな調子で女子の手は必要もない様子です。私はまた暇を出されてテントから離れた位置に戻ってきました。
同じ班の、女子然として絶対手は出さないわという感じで控えていた子に
「△△君。かっこいいとこ見せたい女子がいるんだって」
と悪戯っぽく私が言うと、その子もフーンと目を細ませて微笑み頷いてくれました。
そこで2人で△△君がロープを張るたびに
「すごーい!△△君、かっこいー!」
「ロープを張る天才だね!」
などと黄色い声を上げます。
2人でウフフと頷いて、テントを張ってもらったお礼に△△君をアピールしてあげたわけです。誰だか知らない△△君の好きな子にです。
その年のサマーキャンプ、課外学習での出来事でした。