Jun日記(さと さとみの世界)

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三文小説(34)

2017-08-30 14:26:08 | 日記

 松山君が小手川君に語った話はこうでした。

 俺も入社当時からあの娘の事を見ているから、彼女とは君よりは3カ月ほど長い付き合いだ。彼女、その間にかなり世慣れしたけど、初めは全然、世の中のよの字も知らないようなお嬢さんだったんだ。下町育ちの騒々しい俺達の事なんかてんで馬鹿にした感じでさ、つんつんして、陰でせせら笑ってる感じだった。上品ぶりやがってと思ったよ。嫌味な奴だったよな。

 ところが、いざ仕事を始めたら、彼女、世間慣れしていないどころか、これが仕事がよくできるんだ。しかも営業だよ、注文を取ってくる仕事だ。加えて俺と同じ課だ、だから彼女の成績が手に取るように分かるんだ。フロアの壁にも表にして張り出されているしな。彼女の名前のグラフを見てびっくりしたよ。

 彼女、如何やってこんなに注文を取って来るのかと思ったら、親が陰で根回ししてるんだな、きっと。それに親が内の課の課長にも何か頼んであるらしい、課長のやつ彼女にやたらと肩入れしてるんだよ。あの子自身も何かと課長に取り入っているしな。彼女、地方から来た奴の面倒を見たりして、課長ににっこり笑って目で合図してるんだぜ。それに俺聞いたんだ、課長が他の課の課長や上役に

「野原君のお陰で楽が出来る。いい子だよ、部下にするならお薦めだ。」

って言うのを。なんかお嬢さんだと思ったら酷くやり手でさ、気に入らない奴だ。

 「だからお前に愛想がいいのは、好きだからじゃなくて、課長へのアピールの出汁にされているだけなんだよ。」

「いや、案外彼女、課長みたいな年増男が好きなのかもな、それでやたら課長に媚びを売っているんだ。」

「お前も大概人のいいやつだな、あいつの好き放題にされてるんだろう。今に仕事でも出し抜かれるぞ。」



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