Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

土筆(110)

2018-06-23 10:04:22 | 日記

 『兄弟というものは何処もよく似るものなんだなぁ。』

ここは身内だから尚更だが、よく似た光景を昔見たものだ。2度目ともなると流石に鈍い俺でも物事がよく分かるものだ。

 彼はそう思うと、はてさて、これからはあの子にも気を配ってやった方が良いなと、もう自室に消えてしまった、見る影も無く憔悴しきっていた甥の身の上の方も案じるのでした。

 ガラガラガラ…。

そこへ玄関の戸が開いて、姿を消していた兄嫁が帰って来ました。彼女に続いて後から近所の主治医の先生も姿を現しました。戸が開く音に彼女の娘が玄関に顔を出すと、お母さん何時の間に出掛けたのだと問い掛けて来ました。「少し前にね。」彼女はそう一言だけ答えると、娘の事より息子の事、さもお前より長男の容体の方が心配だと言わんばかりに娘を押しのけると、バタバタと慌てふためき、彼女の事はそっちのけにしてお医者様を急き立て2人で息子の部屋へと向かいました。お陰で玄関には彼女の娘1人が取り残されてしまいました。

 「もう。」

あっちへ行けばあっち、こっちに来ればこっち、で、何処へ行っても娘の私はそっちのけ、相手にされて無いんだから。と、一瞬ぷっと頬を膨らませた彼女でしたが、直ぐに、いいや、私はその分気楽に何でも自由に出来るんだから。と、明るく元気に微笑むのでした。

 「…ちゃん。」

彼女の後ろから叔父が声を掛けました。彼は傍らにいた甥に、具合の悪い兄に何か飲み物を持って行くよう言いつけると、玄関に向かった姪に話が有り彼女の後を追ってここ迄やって来ていたのでした。


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