「僕、如何したらいい?、おっちゃん。」
お祖父ちゃんの今日の話は、僕には荷が重過ぎて…。暗い顔付きで、如何にも責任重大だと沈み込む兄は言い終えました。彼は目を伏せて目の前の叔父に控えめな態度を作ると、ちんまりと静かにその場に佇み、行儀良く微笑みを投げ掛けました。
すると、兄の言動を最初から最後まで具に見ていた弟が、待ってましたとばかりにしゃんと姿勢を正すと1歩前に出ました。彼はキッとした目付きに確固とした自分の意思を表明して発言しました。
「兄ちゃん、僕が継ぐよ。叔父さんが祖父ちゃんの跡を継いで、その後を僕が継げばいいんじゃないかな。」
兄さんが気に病む事無いよ、兄さんの下には僕がいるんだから。いざ、となったら、僕が叔父さんの養子になればいいんだ。前から叔父さんもそう言ってたんだし。弟は男らしく兄を励ますように言うのでした。ところが彼の予想に反して、弟の言葉を聞いた兄は喜ぶどころか返ってすっかりしょげ返ってしまいました。
見る影も無く意気消沈した彼は、「ぼ、僕、やっぱり風邪みたいだ。」そう小さく震えた声で言うと全く青ざめてしまいました。「叔父さんじゃあ僕これで、…」彼はやっとそう言うと、あゝと答えて顎をしゃくった叔父や、大丈夫なの?兄さんと驚き彼の身を案じる弟や、目を伏せ無言の儘の妹をその場に残し、まるで夢遊病者の様にふらふらとした足取りで再び自室へと消えてしまったのでした。
『気落ちしたんだなぁ。』彼等の叔父である彼は、次男の甥っ子の采配には感心しつつ、その兄の甥の受けた傷心を思い遣っていました。長男というのは何処も大事にされて育つから、どうしても軟弱に育ってしまうんだなぁ。しかしあんなに気弱では、兄さんも義姉さんも気苦労が絶えないな。しかも子が多いと他の兄弟との兼ね合いも出来て来るし、思えば親になるという事は大変なものなのだなぁ。彼は感慨に浸っていました。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます