『何時もとお日様も違うな。』
この時彼は何時もとは違う夕日の見え方を疑問に思いました。が、今日1日の疲労がそれ以上考えようとした彼の頭の回転を止めました。太陽が空にあるのだから世の中が暗くなる道理は無い。彼はこの様な太陽の見え方の方が、自分が今迄気が付かなかった事なのだろうと思う事にしました。
『自分だってまだまだ人生始まって間もないんだから、ひよこの仲間さ。』
そんな点大して妹達と違わないな。そう彼は思うと、誰に見せるという訳でも無くふふんとニヒルに笑ってみせるのでした。
「脅かすなよ。」彼には実際にこの時何が起こったのか全く分かりませんでした、が、『世の中何も異変は無い、空に太陽があるのだから何でもないのだ。』と、再び笑顔を取り戻すと、にこやかに従妹の方向へと向かい始めました。
すると、彼の目には一瞬光が明滅したように感じ、従妹の姿が見え隠れして、従妹の後ろの空間に朱や赤い光線がぱらぱらと交錯したと思うと、先程見た閻魔様が一瞬映り、そして消えると再び現れ出てて、彼の目の前に確りと浮き上がりました。それは先程より明るい朱色に見え、場面の切れ目よく立ち上がって来たのでした。彼は戦慄しました。
一瞬ぞっとした彼でした。が、今回、彼はこの閻魔様の現れ方が、自分のよく知っていた影絵の投影と、よく似た硬い型の動きをしたのを見逃しませんでした。そこで、彼は勇気を出してよくよく閻魔様を見詰めてみました。するとそれは、夕日が従妹の後ろの塀に作り出した彼女の影だと気付きました。広場にある木造りの長塀に、重複して朱色、橙色、オレンジ色、そういった如何にも炎の様な色合いの影が時の変化と共に交錯します。影は巨大に映り始め、と、その中心に彼女の身長の何倍かの大きな暗い影がすっくとばかりに直立して見えて来ました。
彼は空を仰いで夕日の位置を確かめました。一旦晴れ渡っていた夕空にはまた幾つかの雲が見え、それらは交錯し、可なり速いスピードで流れて行く物も目に映ります。『また雲が出て来たんだ。』彼は思いました。
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