岩波文庫青1-1『風姿花伝』、と昨日紹介しましたが、どういう本か何も触
れませんでした。それで結論だけ、『風姿花伝』が岩波文庫目録の一番はじ
めに出てくることと同文庫の信頼性とが関係しているということを述べても、
なんのことやら分からないでしょう。 「kaeruのつぶやき」の信頼性が薄らぐ
ことになります。
『風姿花伝』、文庫のカバーより。
表紙に能の女面があります。 (上の女面はWikiから転写)。
世阿弥著 野上豊一郎・西尾実 校訂。
「一般に「花伝書」として知られている 『風姿花伝』 は、亡父観阿弥の遺訓に
もとづく世阿弥(1364?~1443)最初の能芸論書で、能楽の聖典として連綿と
読みつがれてきたもの。室町時代以後日本文学の根本精神を成していた「幽玄」
「物真似」の本義を徹底的に論じている点で、堂々たる芸術表現論として今日も
なお価値を失わぬものである」
「すでに五百五十余年前の書かれた、この世界的な芸術論」 とは昭和33(19
58)年に西尾実氏が「校訂者のことば」として書かれたものです。そして、「(これ
は)一子相伝の書として遺されたために、明治42年……まで深く観世家・金春家な
どに秘蔵されていて、同じ国に生れ、同じ方面に関与する専門家でも、この古今東
西にわたる、すぐれた芸術論に接することができなかった。」
「(明治42年に学界に紹介されたあとも)読者は一部の研究家に限られていたが、
昭和二年十一月、岩波文庫に収められ、「万人の書」として刊行されて以来、国民
必読の古典のひとつとなり、」。 私はここに、岩波文庫の精神をみる思いがします。