花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

国立西洋美術館「ウルビーノのヴィーナス展」(3)

2008-03-12 01:05:23 | 展覧会
さて、今回の展覧会で私的に「おおっ!」と注目したのはヴェネツィアで刊行されたフランチェスコ・コロンナ《ポリフィオの夢》(1499年)が展示されていたこと!


   《ポリフィオの夢》

ジョルジョーネ《眠るヴィーナス》はヴァティカン美術館の腕を頭の上に回して横たわる《眠るアリアドネ(クレオパトラ)》像やこの《ポリフィオの夢》を踏まえているらしいと、以前ゲストのRUNさんのサイトや「西洋美術研究 No5」で勉強させていただいた。その現物を見ることができたのだから♪

さて、このジョルジョーネ~ティツィアーノ路線ヴェネツィア派の甘美な「横たわるヴィーナス」とは別系統のヴィーナスがフィレンツェにもあった。今回の展覧会でも展示されている ポントルモが描くミケランジェロの下絵にもとづく《ヴィーナスとキューピッド》(1533年頃)。


   《ヴィーナスとキューピッド》


《ウルビーノのヴィーナス》とは反対の向きに横たわりキューピッドを伴う。あまりにも筋肉質でヴィーナスのイメージが狂ってしまうけどね(^^;。新プラトン主義の「天上の愛」と「地上の愛」の化身のようで、ヴィーナスの矢の上向きとキューピッドの矢の下向きはそれを象徴するらしい。仮面も徳と悪魔、薔薇と影とか…。

図録に興味深い解説があった。ティツィアーノの親友であるピエトロ・アレティーノは手紙で「なぜなら女神は自らの性質によっていづれの性の欲望に対しても影響を及ぼしているのだから、賢明な男(ミケランジェロ)は彼女に女性の身体と男性の筋肉を与えたのだ。」と賞賛していたらしい。これってヘルマプロディトスみたいじゃないだろうか?(^^;;;

私的にはこのマッチョな女神がウケてしまうなんてちょっと信じられないが、当時は絵画を観ながら読む時代だったのだろう。今も昔も知識が無ければ絵解きはできない。美術ド素人の私には辛いところだ(^_^;)

描いているポントルモもちょっとブロンツィーノ風でいかにもマニエリスム! オリジナル自作ではもっと色彩の豊かな作品を描いているのに残念だなぁと思った。ウフィッツィやエルミタージュで観た聖母子像なんて漫画チックなデフォルメが結構面白く、私的に興味深い画家なのだが…。

しかし、このミケランジェロ下絵ヴィーナスの構図はティツィアーノにも影響を与えたようだ。ということで、《ウルビーノのヴィーナス》とともに展示されていたのは、工房作品《キューピッド、犬、ウズラをともなうヴィーナス》(1550年頃)。


   《キューピッド、犬、ウズラをともなうヴィーナス》

イマイチぽやっとした印象の作品なのだが、パノフスキーの「ティツィアーノの諸問題」を読むと、この作品が以後のヴィーナスの原点として位置付けされている。


   《オルガン奏者といるヴィーナス》

「横たわるヴィーナス」はヴァリエーションを変えながら王侯貴族の元に送られて行く。もちろん敬虔なカトリック教徒であるスペインのフェリペ2世の元にもね(^_-)-☆


蛇足になるが、素描問題なんかあるけれどティツィアーノはやはりミケランジェロをリスペクトしているとつくづく思う。以前ブレーシャで観た《アヴェロルディ多翼祭壇画》(1522年)はティツィアーノ初期作品であるが、その向かって右下《聖セヴァスティアヌス》など、筋肉質のねじれたポーズにミケランジェロの強い影響を感じたのだ。


   《アヴェロルディ多翼祭壇画》 (下から見上げながら撮影した)

ということで、ようやく次回はペテルツァーノとカラッチだ!!(^^ゞ