今回の「液晶絵画」展で一番「絵画」を意識した作品はサム・テイラー=ウッドの3作品だった。
■《スティル・ライフ》サム・テイラー=ウッド
彩りも美しく美味しそうな果物が次第に白カビで覆われていく。時間の経過とともに腐敗は進み、果肉はどろどろに溶け崩壊し、腐液は籠皿からしたたり落ち、周囲へとじわじわ広がっていく。蝿が舞う中、いつの間にか腐液も乾き、果物が朽ちた後は地に還元されて行く存在であることさえ伝わってくる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/87/c083be54d4fdef2000f62e32b7634305.jpg)
サム・テイラー=ウッド《スティル・ライフ》(2001)
(テーブルの上に置いてある青ボールペンは対比として「無機質で腐敗しないもの」の象徴だと思う)
籠皿に置かれた果物は将に「静物画」であり、17世紀においては多分に宗教的なヴァニタス画であったことは良く知られている。カラヴァッジョ《果物籠》の果物や葉の虫食いも、所詮は朽ちて失われてしまう存在として描かれている。現代のアーティストはビデオカメラを固定し、早送り再生することにより、このヴァニタスの意味をじっくりと時間をかけて曝し暴いて行った。
■《リトル・デス》サム・テイラー=ウッド
対象が果物であった《スティル・ライフ》から、今度は小動物であるウサギへと変わる。17世紀ごろの静物画には狩の獲物も良く登場する。しかし、動物ゆえにその変容の様はより衝撃的である。
狩の獲物のように壁に足から吊るされたテーブル上のウサギは内臓から腐敗していく。姿も体毛も崩れ落ち、そのうえ惨たらしくも蛆が湧き蠢き始める。腐敗した体液は壁とテーブルに染み出すが、時間とともに腐液は気化し、干からびた皮衣が残る。小動物とは言え厳粛なる死を見取ったような気さえした。同じく人間も動物なのである。
ヴァニタス静物画全盛時代の「メメント・モリ」(死を想え)という教訓は人生の無常を説くものだが、時の移ろいの前では全てが虚しいものである。サム・テイラー=ウッドは当時の静物画が暗喩として示した腐食部分の先、すなわち描ききれなかった「時の移ろい」=朽ち腐敗する過程と最後の姿まで描き切ったということになる。静物画が画面の中に孕んでいた時間をビデオ映像は解き放ち曝し出したのである。と思う(^^;;;
■《ピエタ》サム・テイラー=ウッド
この作品は本人が聖母役を演じ、キリスト役の男性を抱える映像である。階段にどっしりと座る姿はまさにミケランジェロのピエタである。でも、二人ともポーズをキープするのが大変そうだった(^^;
ということで、また次回に続く予定である(^^ゞ
■《スティル・ライフ》サム・テイラー=ウッド
彩りも美しく美味しそうな果物が次第に白カビで覆われていく。時間の経過とともに腐敗は進み、果肉はどろどろに溶け崩壊し、腐液は籠皿からしたたり落ち、周囲へとじわじわ広がっていく。蝿が舞う中、いつの間にか腐液も乾き、果物が朽ちた後は地に還元されて行く存在であることさえ伝わってくる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/87/c083be54d4fdef2000f62e32b7634305.jpg)
サム・テイラー=ウッド《スティル・ライフ》(2001)
(テーブルの上に置いてある青ボールペンは対比として「無機質で腐敗しないもの」の象徴だと思う)
籠皿に置かれた果物は将に「静物画」であり、17世紀においては多分に宗教的なヴァニタス画であったことは良く知られている。カラヴァッジョ《果物籠》の果物や葉の虫食いも、所詮は朽ちて失われてしまう存在として描かれている。現代のアーティストはビデオカメラを固定し、早送り再生することにより、このヴァニタスの意味をじっくりと時間をかけて曝し暴いて行った。
■《リトル・デス》サム・テイラー=ウッド
対象が果物であった《スティル・ライフ》から、今度は小動物であるウサギへと変わる。17世紀ごろの静物画には狩の獲物も良く登場する。しかし、動物ゆえにその変容の様はより衝撃的である。
狩の獲物のように壁に足から吊るされたテーブル上のウサギは内臓から腐敗していく。姿も体毛も崩れ落ち、そのうえ惨たらしくも蛆が湧き蠢き始める。腐敗した体液は壁とテーブルに染み出すが、時間とともに腐液は気化し、干からびた皮衣が残る。小動物とは言え厳粛なる死を見取ったような気さえした。同じく人間も動物なのである。
ヴァニタス静物画全盛時代の「メメント・モリ」(死を想え)という教訓は人生の無常を説くものだが、時の移ろいの前では全てが虚しいものである。サム・テイラー=ウッドは当時の静物画が暗喩として示した腐食部分の先、すなわち描ききれなかった「時の移ろい」=朽ち腐敗する過程と最後の姿まで描き切ったということになる。静物画が画面の中に孕んでいた時間をビデオ映像は解き放ち曝し出したのである。と思う(^^;;;
■《ピエタ》サム・テイラー=ウッド
この作品は本人が聖母役を演じ、キリスト役の男性を抱える映像である。階段にどっしりと座る姿はまさにミケランジェロのピエタである。でも、二人ともポーズをキープするのが大変そうだった(^^;
ということで、また次回に続く予定である(^^ゞ
前回の”事故にあったかのような老若男女”の話も、私的には怖かったのですが、今回のはもっと生々しいですね。
確かに”動く「静物画」”!納得です。
果物は、自分もそういう現象を時々目にしている(?)ので、ドキッともしませんが、ウサギの映像は、想像もしたくないほど、ショックです。
「静物画」で狩猟の後の台所の様子がありますが、私はあれが苦手で、あまり見ずに素通りします。それをずーっと映像で見せられたら、ウワーもうダメ・・・。まあ、目を閉じていればいいのですが。(実は、社会人になるまで、肉、刺身を食べられなかったのです・・・)
映像の力って、すごいですね。とことん見せるのですね。
やはり絵を見て、淡く「ヴァニタス」を感じるだけで、いいかなー。
さて、ピエタですが、あれは、キリストの形が大変だと思います。もう、ご存知のことかもしれませんが、一応書きますと・・・
まず聖母は、両足を左右に広げ、安定した形をとります。そして、その上に抱えられるキリストは、なんと2方向に弓なりになる形で横たわっているのです。
つまり、正面から見て聖母の足の間にキリストのお尻が入る下側が凸の弓なりの形、そしてもう一つは、聖母の頭の上から見ると、聖母の肩のあたりにキリストの頭があり、お尻が聖母の膝の方向、つまり正面から見ると分かりにくいのですが、手前方向が凸になる弓なりをしているのです。
一見、とても安定しているように見えるピエタも、ほんとうは大変な形をしているのですね。
私的には、このピエタが一番見たいです!
長々と、すみません。また続くなんて・・・それは、うれしいです。
で、生々しい作品の紹介ばかりですみませんでした(^^;;;。Cojicoさんが生もの苦手だったとは!確かに想像してしまうと...見たくないお気持ちわかります。実際に私にもショックでしたが、見ながらなんだか科学実験映像を見ているような気がしてきました。早送り再生なので救われたのかもしれません。
さて、Cojicoさんのミケランジェロのピエタのお話、とても勉強になりました。ありがとうございます!今までキリストの身体が二つの弓なりになっていることに注目したことがありませんでした(^^;;;
しみじみとピエタの画像を見ると、確かに聖母に抱えられた肩や腰から足のラインなど、かなり難しい姿勢ですね。
http://www.wga.hu/html/m/michelan/1sculptu/pieta/1pieta1.html
でも、今回のビデオのピエタはミケランジェロのポーズとは若干違って、二つの弓なりポーズでは無かったような気がします。この辺はCojicoさんにご覧いただきレポートをお願いしたいところです。楽しみにしておりますよ~(^_-)-☆
今日は母の特養ホームの敬老の会があって、帰りなのですが、中央線人身事故のためネットカフェへ。
「液晶絵画」Juneさんご関心あられましたか!
実はチケットがあるのですが、まさか関心ないだろうとお送りしなかったのです。
これ、写真美術館の二フロアを使ってやる大規模なものですよね。
果物が朽ちていく姿はわれわれの行く末も暗示しているような感覚ですか。
そう言えば敬老の日なんですよね。親孝行のokiさんにいつも頭が下がります。
で、PCトラブルとは大変ですね!早期復帰をお祈りしておりますよ~☆
さて、「液晶絵画」は身銭を切って観ました(笑)。チケットをお持ちのokiさんにもぜひご覧いただきたい展覧会です。液晶モニターが薄くなることで絵画世界との不思議な交信が生まれているようです。特に動く静物画はヴァニタスの意味をリアルに見せてくれました。okiさんのおっしゃる通りで、私たちも無常の世界を生きていますから...。
ところで、okiさん、チケットを頂戴いたしました!本当にいつもありがとうございます!!
「江戸の小袖」も「ミレイ展」も良かったです。ブログで感想を書きたいな、と思っております。(書けるかな?(^^;;;)
お元気でお過ごしですか?
私のブログのゲストの方から、パルマでのコレッジョ展の話を伺いました。
今年の9月20日から来年の1月25日までだそうです。
http://www.mostracorreggioparma.it/index.php
教会内部に修復の為に高く組み立てれられていた足場に登って、近くから見られるそうです。
ほんとにコレッジョの絵って、かわいくて美しいですね。
この夏、全然見られなかったあの天井画が、このような形で鑑賞できるなんて・・・私はコレッジョには、ほんとに縁がなさそうです。
前述のコメントは、花耀亭さんに、もしローマにでも行けたら、パルマにも行かれたらいいな、とお知らせのつもりで書いたのに、いつの間にか自分の嘆きに変わっていました。
すみません。
お気に召さなければ、消してください。これも、同様に、花耀亭さんがお読みになれば、消してください。
仕事周辺に色々あって、ストレスに押しつぶされておりました(^^;;;
で、Cojicoさん、パルマの情報をありがとうございました!ボローニャ在住の方(Fさんにも感謝です!)からも情報を頂いており、なんとかローマとパルマを廻りたいと思案中です。もし行けたら、Cojicoさんが見れなかった分を挽回し、コレッジョ展レポートを書くようにしますね。
それから、Cojicoさんのブログでのビデオ、しっかり拝見しておりましたよ~(^^)/
もう一ヶ月以上も更新がないですよ、催促するつもりはないですが、心配してます。
芸大美術館の内覧会ぼくも行けずに、今日行きましたが、
封筒を差し出すと名前を聞かれたのには、閉口しました。
東京新聞の招待だ、といっても一応住所氏名書きましたがー。
展示はやはりレンブラントが充実してましたね。
東京新聞からはブンカムラのワイエスももらう予定。
Juneさんが、芸術の秋を楽しんでおられればいいのですがー
チケット及び招待券、いつもながらありがとうござました!!
実は私も今日藝大に行ってきて、okiさんと同じように「名刺か名前を」と言われ、すっかりあわててしまいました。だったら次回も...と期待するのは、やはり蟲のよい話でしょうかね(笑)。なにはともあれ、okiさんのお陰で久々に版画や素描の面白さを味わうことができました。ありがとうございました!
展示は、okiさんのおっしゃる通りレンブラントが圧巻でしたね!版画作品でも光と影の効果が抜群で、そのコントラストも計算して構図に織り込んでいるのには唸ってしまいました。
ということで、ようやく芸術の秋を楽しむ心の余裕が出てきましたです。ブログも書かなくちゃ(^^ゞ