日本経済新聞に、「動画配信市場」に関する記事が掲載されました。
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ネットフリックス上陸(下)
自由な視聴習慣 じわり
有料配信市場の伸びしろ大きく
自由な視聴習慣 じわり
有料配信市場の伸びしろ大きく
米ネットフリックスが9月2日から日本で動画配信を始めるが、国内にも以前から同様のサービスは存在する。現在のU―NEXTが配信を始めたのは、ネットフリックスが米国で開始したのと同じ2007年。ブロードバンドやスマートフォン(スマホ)の普及を背景に、NTTドコモなど新規参入が相次いだ。
「市民権」まだ
しかし、日本の動画配信市場は米国などとは異なり“市民権”を得たといえるまでには成長していない。そもそも米国では有料のCATV経由でテレビを見る習慣があり、動画配信はその代替として受け入れられやすかった。
日本の事情は異なる。メディア事情に詳しい上智大学の碓井広義教授は「広告に支えられた民間放送が充実しており、お金を払ってテレビを見るという文化が定着していなかった」と指摘する。
変化の兆しはある。「動画配信は私の日常生活には欠かせない」。神奈川県鎌倉市に住む会社員、高橋恵さん(29)は就寝前など時間があれば、スマホで国内外のドラマや映画を楽しむ。視聴時間は1日平均2時間程度。地上波テレビはほとんど見ていない。「自分の好きな時間に好きな場所で見られる」という動画配信が手放せない。
NHK放送文化研究所が一般視聴者を対象に実施した15年の調査では、1日にテレビを見る時間が1985年の調査開始以来初めて短くなった。逆に動画を含めたインターネットや録画番組を見る人は増加。スマホなど番組を見る手段の多様化もあって、「決まった時間にテレビを見る」という習慣は薄れつつある。
地上波と融合
日本テレビ放送網は14年4月、ネットフリックスのライバルである米動画配信大手、Hulu(フールー)の日本事業を買収した。フールーは11年から日本でサービスを始め、約60万人の会員を持っていた。日テレは買収後に日本人になじみのあるドラマなどを充実させ、会員数を100万人以上に増やしている。
6月には俳優の唐沢寿明さんを起用した独自ドラマ「ラストコップ」の第1話だけを日テレの地上波で放送。第2話以降はフールーで配信するなどテレビと動画配信の融合にも力を入れる。
日本映像ソフト協会などの調べによると、14年の有料の動画配信サービスの市場規模は614億円。DVDなどの販売やレンタルを含めた映像ソフト全体の約1割にとどまる。動画配信の伸びしろは大きいとも言える。
フールーの日本事業の運営会社、HJホールディングス(東京・港)の船越雅史社長は「日本では動画配信サービスの認知度はまだ低い。市場拡大の余地は大きく、ネットフリックスの参入がきっかけになれば」とライバル登場を歓迎する姿勢を示す。
日本は世界有数のブロードバンド大国でもあり、動画配信のインフラは整っている。碓井教授は「若者を中心にコンテンツにお金を払うことに抵抗感が薄れている」としたうえで、「動画配信サービスは着実に広がる」と予想する。
今後の本格的な普及に向けて最も重要なのは番組コンテンツの充実だ。ネットフリックスが有力な独自番組を前面に出して米市場を席巻したように、日本勢を含めた各社の競争が本格化する。(村松洋兵、細川倫太郎、シリコンバレー=小川義也)
(日本経済新聞 2015.08.08)